虐げられて右腕を失った仮面の王子 天才幼女に機械の右腕をもらってたくさんの異世界(宇宙、現代、ファンタジー世界など)で不幸な者たちを救う

渡 歩駆

文字の大きさ
114 / 119
第4の異世界ーはるか遠くの銀河で戦う少年

第114話 皇帝の正体

しおりを挟む
 この先での戦いが最後になる。

 勝てるだろうか? いや、ツクナが一緒だ。
 敗北は無い。全員が無事に帰れるはずだと信じていた。

 通路を抜け、やがて広間へと出る。

「ここは……」
「空中要塞グニールの中心部です。そしてあそこにいるのが……」

 ルカの視線が部屋の奥を睨む。
 そこにある豪奢な玉座に鎮座していたのは、全身を白いアーマーで纏った白仮面の不気味な者だった。

 あれが皇帝……の偽物か。

 皇帝の偽物は玉座のひじ掛けに頬杖をついたままこちらを見つめて動かない。
 攻め込まれて焦っている様子など微塵も無かった。

「っ! 兄上の仇だっ!」
「ルカ君っ!?」

 止める間も無くルカは偽物へ向かって駆け出す。
 しかし偽物のほうは立ち上がる気配は無い。

 ただすっと右手を前へ向け……

「うあっ!?」

 突如として吹き飛んだルカ君がこちらへと戻り、転がって来る。

 あれは以前にゼナイエがやっていたズァーグの衝撃波のようなものか。
 しかし威力は段違いだ。同じだったならば、今のルカがこうも簡単に吹き飛ばされたりしないだろう。

「……ふん。兄を殺そうとするとは、愚かな弟だ」
「だ、誰が兄だっ! お前は私の兄メイラッドではないっ! お前は兄を殺したっ! 兄の私室で、兄を斬り殺したんだっ!」
「世迷い事を……」
「しらを切るなっ! 私はこの目で見たっ! きっと行方不明の姉上もお前が殺したんだろうっ!」
「……」

 偽物は答えずに沈黙する。……やがて、

「ふははははははっ!」

 仮面を揺らして笑い出す。

「はあ……ルオナルア。お前があそこにいたともっと早くに気付いていれば、あのときに殺してやっていたものを……」
「偽物めっ! 正体を現せっ!」
「くくくっ……まだ気付かないか? 鈍な弟だ」
「な、なに? この期に及んでまだ兄の振りなど……」

 おもむろに偽物の手が白仮面に触れる。そして、

「あ……」

 仮面を脱ぎ去る。
 現れたのは男ではなく、女の顔であった。

「お、女……だったのか? だって声が……」

 低い声だったので男だと思っていたが。

「あの仮面に声を変える効果があるんじゃろう。驚くことでもない」
「そ、そうなのか」

 しかしそれよりもまさか偽物が女だったとは……。

「あ……あね、うえ?」
「えっ?」

 姉上?

 ルカは確かにそう言った。

「ひさしぶりですねルオナルア」
「あ、姉上……どうして……だって行方不明に……殺されたんじゃ……?」

 ルカの姉テオナは、ルカの問いに対し微笑み、

「わかりませんか? わたくしが殺したんですよメイラッド兄様を。そして兄様に成りすまして皇帝になった」
「そ、そんなっ! どうしてっ! どうして姉上が兄上をっ! あれほど兄上を慕っていたというのにどうしてっ!」
「慕っていましたよ。愛していました。メイラッド兄様……」
「ならどうしてっ!」
「愛していたゆえに、兄様からの愛をいただけないのが辛かったのです」
「兄上は私や姉上、家族や家臣、国民のすべてを愛しておりましたっ! 姉上を愛していなかったなどとと、どうしてそのような……」
「そうではありません」

 微笑みを崩さぬままテオナはルカの言葉を否定する。

「わたくしはメイラッド兄様を愛しておりました。兄としてではなく、ひとりの男性として」
「な、なにを言って……」
「しかし兄様はわたくしを女性として愛してはくれませんでした」
「と、当然ですっ! 実の兄妹なのですからっ!」
「そう。実の兄妹だから。それだけが理由ならば納得して諦めることができたかもしれません。けれど……」

 微笑みの表情が少しずつ歪んでいく。

「あの人は……兄様は……漫画の登場人物を愛していた。わたくしには欠片もくださらない愛を……存在もしない者にそそいでいたのです」
「ま、まさかそんな理由で兄上を……?」
「そんな理由? ふふ……あなたにはわからないでしょうね。この憎悪が。あなたもあの人と同じだから」
「ふ……ふ、ふざけるなっ!」

 広い部屋へ響き渡るほどの大声でルカが叫ぶ。

「そんな身勝手な感情で兄上をっ!」
「殺しました。漫画を愛したあの人を、あの人が愛した漫画を」
「そのためにホーンの絶滅を考えるなどっ! あなたは狂っているっ!」
「そうですね。きっとそうです。わたくしは狂っているのでしょう。その狂っているわたくしをあなたはどうしますか?」
「降伏してください。あなたは罪を償うべきだ」
「そのつもりはありません」

 玉座から立ち上がったテオナがレヴァンソードを手にする。

「わたくしはホーンをひとり残らず殲滅します。そしてあの人が愛したすべてを焼き払い、そののちにわたくしはあの人のもとへ召されましょう」
「そんなことはさせないっ!」

 ふたたび飛び掛かろうとするルカ。
 俺はその肩を掴む。

「待つんだ。感情に任せて戦ってはいけない。落ち着くんだ」
「ハ、ハバンさん。すいません。取り乱してしまって……」
「うん」

 しかしルカが取り乱すのもしかたのないこと。
 テオナの所業は完全に狂っている。あまりに自己中心的で、理解できる部分は微塵も無い。

「テオナ、お前のやったことは到底、許されることじゃない。降伏をしないならばこの場で殺すしかない。
「黒仮面の男……。そう。お前がハバン・ニー・ローマンド……」

 仮面を顔へと戻したテオナが低い声で俺の名を呼んだ。

「お前さえいなければ我が輩の目的はもっと早くに達成されていた。殺すだと? やってみるがいい。死ぬのはお前だ」
「う……」

 赤く色濃い、今までに見たことがないほどの強力なズァーグがテオナの身体から放出されている。

「な、なんて濃いズァーグだ。デズターやレプニールとはくらべものにならない」
「おかしい」

 テオナを見据えてルカが呟く。

「おかしいって?」
「姉上がズァーグを使っていることです。ナイトの鍛錬など受けていないはずの姉上がなぜあれほどにズァーグを使いこなしているのか……」
「鍛錬を受けていない?」

 ツクナからズァーグの使い方を学んだからわかることだが、鍛錬無しでズァーグを使いこなすのは困難だ。
 鍛錬無しであれほどにズァーグを使いこなせるなどありえない。

「ツクナ、どういうことかわかるか?」
「わかる。この世界のやり方から逸脱する者が奴に力を与えているんじゃ」
「そ、それって……?」
「あれじゃ」

 ツクナの指が差したのは玉座の背後にある巨大な彫像。
 女性の形をした何者かの像だった。

「あれって……」
「おしゃべりは終わりだ」

 テオナがこちらへと歩いて来る。

 まるで散歩でもするかのようにゆったりと……。

「やるぞ。ひとりで行ってはダメじゃ。全員で一斉にかかるのじゃ」
「あ、ああっ!」
「はいっ!」

 俺とツクナ、ルカがレヴァンソードを構える。

「い、いや待つんだ君たちっ! あれは……あれは格が違い過ぎる……っ! 殺されてしまうぞっ!」
「……」

 ペイナーの言うことはもっともだ。
 あれは本当に格が違う。苦心の上になんとか倒すことができたレプニールすらかわいく見えてくるほどだ。

「なにもしなくたって、逃がしちゃくれないさ」
「け、けれど……」
「やるしかないんだっ!」

 怯えるペイナーをそこへ残し、俺たちはテオナへと一斉に攻めかかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

​『追放された底辺付与術師、実は【全自動化】のチートスキル持ちでした〜ブラックギルドを追い出されたので、辺境で商会を立ち上げたら勝手に世界規

NagiKurou
ファンタジー
​「お前のような、一日中デスクに座って何もしない無能はクビだ!」 国内最大のギルド『栄光の剣』で、底辺の付与術師として働いていたアルスは、ある日突然、強欲なギルドマスターから追放を言い渡される。 しかし、彼らは知らなかった。ギルドの武器の自動修復、物流の最適化、資金管理に至るまで、すべてアルスの固有スキル【全自動化(ワークフロー構築)】によって完璧にシステム化され、回っていたことを。 「俺がいなくなったら、あの自動化システム、全部止まるけど……まあいいか」 管理権限を解除し、辺境へと旅立ったアルス。彼は自身のスキルを使って、圧倒的な耐久力を誇る銀色の四輪型重装ゴーレムを作り出し、気ままな行商を始める。 一度構築すれば無限に富を生み出す「全自動」のチートスキルで、アルスの商会は瞬く間に世界規模へとスケールしていく! 一方、すべてを失ったギルドは、生産ラインが崩壊し、絶望のどん底へと突き落とされていくのだった……。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...