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21.5 クロノス・アルトリアスは嫌われたくない【前編】
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「……」
「……」
「…………」
「…………」
何故なのだろう、あの方の機嫌がとてつもなく悪い。イライラしながら遠い目をしている上司であり、『魔王』と呼ばれている男、クロノス・アルトリアスはあの店から帰ってきて数日――そろそろ次の満月の日が来ようとしている時なのに、魔王の不機嫌は直らない。
一体、あの店の店主と何かあったのだろうかと考えているのは、唯一店に何回か言った事のある直属の部下、ルギウスだった。
ルギウスは聞こうと思ったのだが、聞けなかった。それぐらい、クロノスの機嫌が全く直らず、他の部下たちが機嫌を直そうとしたのだが、相手は睨みつけるだけで簡単殺せるぐらいの魔力の持ち主だ。
そして、その役がまわってきてしまったルギウスはため息を吐くようにしながら、問いかける。
「……王、何かありました?」
「何が、とは?」
「あの日以来、機嫌が悪いではないですか……もしかして店主……アキノリさんと何かありましたか?」
「…………」
「……やっぱり、彼がらみ、ですね」
魔王であるクロノスはただいま片思い中――最近良い中になるのではないだろうかと機嫌がとてもよかったはずなのに、現在彼は機嫌がとても悪い。
喧嘩をしたんのか、何かあったのか――もしかして、アキノリに好きな人物でもできたのだろうかと思いながら、視線を向けてみると、クロノスは深いため息を吐きながら、ルギウスだからこそ話はじめる。
「……アキノリに、告白した男が居たらしい」
「え……魔王が求婚してるのに、何て物好きな……」
「……狙われないよう、『印』も内緒でつけたのに」
「意外に最低な事してますね、王。バレたら嫌われますよ」
「嫌われたくない……でも、おれのものーって言うのがあったら嬉しいじゃねーか」
「どんだけ独占力強いんですか、王」
「魔王だから良いんだ」
「よくないです」
この男、何を言ってるだろうと思いながら、自分の王だと思っている男の姿に思わずため息を吐きたくなるルギウスだったが、そんな事は言ってられない。
『死の森』と言う所で何故か飲食店を経営している謎の人間、ヒイラギ・アキノリと名乗った男は、クロノスが恋焦がれている人物である。
小柄で可愛らしい青年であり、ある時年齢を聞いたときは流石にびっくりした事がある。そして黒髪で黒い瞳の、まるで美しい、と言っていい程の人物でもあった。そんな彼に、おとずれるたびに口説き続けて振り向きもされていないクロノスは本当にすごいと、流石我らの魔王なんて思ってしまう。本当に独占力が強い生き物なのだ。
狙った獲物は逃がさない――と、言うべきなのだろうか?
そんなアキノリに告白してきた人物は一体どんな相手なのだろうか、ルギウスはふと、疑問に思った。
あの『死の森』で飲食店を経営している男だ。そもそも『死の森』で飲食店を行う事自体、ありえないのだ。
あそこは魔物が多く、普通の冒険者などは絶対に入る事ない、未知の森。『死の森』と言われているのだから、入ったら最後――と、言われる程あの森の中には魔物がたくさんいる。
しかし、アキノリはあの森で店を経営しているのに対し、生き続けている。しかも、何故か満月の夜に、その店は現れる。何かに隠されているかのように。
ルギウスは一度、アキノリに何故ここで経営しているのか、聞いた事があったのだが、その際彼は言った。
『ここじゃないと、僕の『力』が出ないんですよ』
と、少し困った顔をしながら言われた事があった。その意味は分かっていないのだが、ルギウスはあのアキノリに何か深い事情があるのではないだろうかと考える。結局はそれ以上は聞けなかったのだが、
その時、クロノスがルギウスを睨みつけていたので、聞く事が出来なかった、と言う理由もあるなんて、目の前の上司に言えるわけがない。
一方のクロノスは相変わらず不機嫌な治らない。
イライラしている上司に目を向けて、胃が痛くなりながらも、ルギウスは問いかける。
「で、魔王様……あなたはどうしたいのですか?」
「とりあえずひねり潰したい。破片も残さず」
「それ、会ったら即殺すって言う事じゃないですか……あの店主、望みますかね?」
「………………望まない、だろうな」
「じゃあ他の方法で」
「……」
クロノスは他の方法を思いつこうとするのだが、どうやら思いつかないらしい。顔が引きつった表情をしている。ある意味、不器用な男なのだな、と思いながら、ルギウスは笑ってしまった。
昔から、ずっと傍に居る、『魔王』と呼ばれている男なのだが、アキノリの事になると間違いなく魔王ではなく、クロノス・アルトリアス個人になるのだろうと思いながら、視線を向けていたのだが――。
「……なぁ、ルギウス」
「はい」
「……俺は、本当に店主の事が大事、らしいな」
「そう、みたいですね」
「なら、もし俺の本当の正体を知ってしまったら、店主……アキノリはどう思うだろうな?」
ふと、何かを思い出したかのように、クロノスは答える。
ルギウスはその言葉に対し、返事を返す事が出来ず口が動かないまま、静かに何処かを見つめているクロノスに目を向けることしか出来なかった。
「……」
「…………」
「…………」
何故なのだろう、あの方の機嫌がとてつもなく悪い。イライラしながら遠い目をしている上司であり、『魔王』と呼ばれている男、クロノス・アルトリアスはあの店から帰ってきて数日――そろそろ次の満月の日が来ようとしている時なのに、魔王の不機嫌は直らない。
一体、あの店の店主と何かあったのだろうかと考えているのは、唯一店に何回か言った事のある直属の部下、ルギウスだった。
ルギウスは聞こうと思ったのだが、聞けなかった。それぐらい、クロノスの機嫌が全く直らず、他の部下たちが機嫌を直そうとしたのだが、相手は睨みつけるだけで簡単殺せるぐらいの魔力の持ち主だ。
そして、その役がまわってきてしまったルギウスはため息を吐くようにしながら、問いかける。
「……王、何かありました?」
「何が、とは?」
「あの日以来、機嫌が悪いではないですか……もしかして店主……アキノリさんと何かありましたか?」
「…………」
「……やっぱり、彼がらみ、ですね」
魔王であるクロノスはただいま片思い中――最近良い中になるのではないだろうかと機嫌がとてもよかったはずなのに、現在彼は機嫌がとても悪い。
喧嘩をしたんのか、何かあったのか――もしかして、アキノリに好きな人物でもできたのだろうかと思いながら、視線を向けてみると、クロノスは深いため息を吐きながら、ルギウスだからこそ話はじめる。
「……アキノリに、告白した男が居たらしい」
「え……魔王が求婚してるのに、何て物好きな……」
「……狙われないよう、『印』も内緒でつけたのに」
「意外に最低な事してますね、王。バレたら嫌われますよ」
「嫌われたくない……でも、おれのものーって言うのがあったら嬉しいじゃねーか」
「どんだけ独占力強いんですか、王」
「魔王だから良いんだ」
「よくないです」
この男、何を言ってるだろうと思いながら、自分の王だと思っている男の姿に思わずため息を吐きたくなるルギウスだったが、そんな事は言ってられない。
『死の森』と言う所で何故か飲食店を経営している謎の人間、ヒイラギ・アキノリと名乗った男は、クロノスが恋焦がれている人物である。
小柄で可愛らしい青年であり、ある時年齢を聞いたときは流石にびっくりした事がある。そして黒髪で黒い瞳の、まるで美しい、と言っていい程の人物でもあった。そんな彼に、おとずれるたびに口説き続けて振り向きもされていないクロノスは本当にすごいと、流石我らの魔王なんて思ってしまう。本当に独占力が強い生き物なのだ。
狙った獲物は逃がさない――と、言うべきなのだろうか?
そんなアキノリに告白してきた人物は一体どんな相手なのだろうか、ルギウスはふと、疑問に思った。
あの『死の森』で飲食店を経営している男だ。そもそも『死の森』で飲食店を行う事自体、ありえないのだ。
あそこは魔物が多く、普通の冒険者などは絶対に入る事ない、未知の森。『死の森』と言われているのだから、入ったら最後――と、言われる程あの森の中には魔物がたくさんいる。
しかし、アキノリはあの森で店を経営しているのに対し、生き続けている。しかも、何故か満月の夜に、その店は現れる。何かに隠されているかのように。
ルギウスは一度、アキノリに何故ここで経営しているのか、聞いた事があったのだが、その際彼は言った。
『ここじゃないと、僕の『力』が出ないんですよ』
と、少し困った顔をしながら言われた事があった。その意味は分かっていないのだが、ルギウスはあのアキノリに何か深い事情があるのではないだろうかと考える。結局はそれ以上は聞けなかったのだが、
その時、クロノスがルギウスを睨みつけていたので、聞く事が出来なかった、と言う理由もあるなんて、目の前の上司に言えるわけがない。
一方のクロノスは相変わらず不機嫌な治らない。
イライラしている上司に目を向けて、胃が痛くなりながらも、ルギウスは問いかける。
「で、魔王様……あなたはどうしたいのですか?」
「とりあえずひねり潰したい。破片も残さず」
「それ、会ったら即殺すって言う事じゃないですか……あの店主、望みますかね?」
「………………望まない、だろうな」
「じゃあ他の方法で」
「……」
クロノスは他の方法を思いつこうとするのだが、どうやら思いつかないらしい。顔が引きつった表情をしている。ある意味、不器用な男なのだな、と思いながら、ルギウスは笑ってしまった。
昔から、ずっと傍に居る、『魔王』と呼ばれている男なのだが、アキノリの事になると間違いなく魔王ではなく、クロノス・アルトリアス個人になるのだろうと思いながら、視線を向けていたのだが――。
「……なぁ、ルギウス」
「はい」
「……俺は、本当に店主の事が大事、らしいな」
「そう、みたいですね」
「なら、もし俺の本当の正体を知ってしまったら、店主……アキノリはどう思うだろうな?」
ふと、何かを思い出したかのように、クロノスは答える。
ルギウスはその言葉に対し、返事を返す事が出来ず口が動かないまま、静かに何処かを見つめているクロノスに目を向けることしか出来なかった。
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