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第03話、血濡れの狂騎士様
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クラウス・エーデルハット――別名、『血濡れの狂騎士』。
ルーナの村から離れた場所にある王国の血縁者であり、敵なら容赦なく命を奪うとされ、その光景はまるで狂ったような戦士だったと噂されている人物。
因みに彼が初めて人を殺したのは、自分を裏切った友人数名を容赦なく殺し、平然と血まみれになったと言われている、と言う話を以前神父から聞いた。
次の日、あばらの骨と右足を骨折した神父に青ざめた顔で青年の名前を口にすると、神父の顔は恐怖に歪んでいた。
「……俺、生きているよな?」
「うん、生きているから大丈夫だから!」
流石の神父も反省したようで、それと同時に殺されたくないのであろうとルーナは理解する。
因みに何故ルーナがクラウスの事を知っているのかは、もちろん神父と、そして一人のご老人に教わったからである。そのような話があると言う事を。
実際に見るのは初めてだったが――いや、そもそもこのような閉鎖された村にまさか神父がそのような人物を拾ってくるなんて誰も想像しないであろう。
とりあえずケガが治ったらすぐにこの村から出て行ってもらおうと言う事で、神父とルーナの意見は一致するのだが。
「ルーナ」
「あ、クラウス様」
「……気軽にクラウスって呼んでも良いぞ?」
「いや、流石に平民が王族の血を持つ高貴たるお方を呼び捨てに何て出来ないですよ」
「そうか……だが、俺はお前にそのように呼ばれたいのだがな」
「はぁ……」
数日後、ケガの治りが早いのか、教会で安静にしていたクラウスも最近では外に出るようになっていった。美味しい田舎の空気を吸いながら、ルーナの姿を見つけると、笑顔で声をかけてくる。
声をかけてくる事は別にルーナにとっては構わないのだが、しかしそれでも目の前の男は貴族と言う存在であり、ルーナは平民である。名前など絶対に気軽に呼べない。
そのような存在のクラウスが、なぜかついてくる。外を歩くと後ろからついてくるかのように、そしてルーナが住んでいる小屋の中に入ると、なぜか入ってきて、彼女が行う家事や、少ない食事を一緒に取ったり、最近では薬草を見分け、分けてくれたり、塗りつぶしてくれたりする事をしてくれる。その事に関しては、ルーナはありがたいと思っている。
しかし、相手は『血濡れの狂騎士』と呼ばれている男で、油断が出来ない。
言葉を間違えてしまえば、もしかしたら腰につけている長剣で首をはねられてしまうのかもしれないと思うと、気が気ではない。とりあえず、言葉を否定する事なく、肯定させながら、数日過ごし――だいぶケガの調子も良く治ってきたと思ったルーナは聞いてみた。
「クラウス様」
「なんだ、ルーナ」
「……いつ、クラウス様はこの村を出ていくのですか?」
――ぶっちゃけ、この村に居る意味ないですよね?
と、ルーナは簡単にそのような発言をしてみて、相手の出方を待ったのだが、まさかそのような発言をされるとは思っていなかったのか、突如動きを止めたクラウスは驚いた顔をしながらルーナに視線を向ける。
そのような顔をされるのは予想外だったので思わず驚いてしまったルーナに対し、クラウスは彼女に目を向けながら固まった体を動かす事なく、震える唇で呟く。
「る、ルーナは……俺にここを、出て行って、もらいたいのか……?」
「え、ま、まぁ……だってここは閉鎖的な村で、滅多に余所者が来ない場所です。それに、クラウス様は王族の血筋の方で貴族です。このような村に居る人ではないと、思うのですが……ボク、いえ、わたし、間違った事言いましたか?」
「……い、いや、確かに、そうなのだが……ああ、そうだな。全く脈なしだったと言う事か」
「え?」
「傍に居て、アピールをしていたのだが……どうやら響かなかったらしいな。ルーナは俺に寄ってきた女たちとは違うのだな……」
「あ、あの……クラウス様?」
ぶつぶつと呟き始めたクラウスの言葉が全く理解できず、ルーナは再度クラウスに声をかけたのだが、次の瞬間、目を見開いたと同時に、クラウスはルーナの両肩を鷲掴みにする。
え、これは『死』なのかと頭にそのような文字が過ったのだが、クラウスはルーナに顔を近づけながら、真剣なエメラルドの瞳でルーナを見る。
相変わらず綺麗な瞳だなと思いながら、ルーナはクラウスの目を見つめていると。
「ルーナ」
「は、はい……」
「ルーナは、俺のような男性は、その、どう思う?」
「え、クラウス様のような人……それは、好みを聞いていらっしゃるのでしょうか?」
「そうだ」
「……そうですね、正直顔が整っている方は苦手です。うちの神父も同じように顔が整っている人ですが、どうもそのせいなのかわかりませんが、整っている人の性格は歪んでいる、クソだと思ってしまう事があるんです」
「く、クソ……そ、そうか……」
「……ですが、綺麗なモノは、好きです。クラウス様」
「……綺麗なモノ?」
「クラウス様のエメラルドの瞳……私は透き通る宝石のように見えて、好きですよ」
この村には若者は居ないし、顔が整っている人物はただ一人――神父なのである。しかし、その神父の性格はクソほど歪んでいるので、ルーナの頭は整った顔をしている、綺麗な顔をしている人の性格は絶対に歪んでいて、関わってしまうと絶対にロクな事はないと思っているからである。
クラウスも正直、性格が問題なければ好意を抱いていたのかもしれないが、ルーナにとってクラウスと言う存在は恐怖の対象でしかない。
しかし、ただ一つ言えるのは、クラウスの瞳の色、透き通るエメラルドの色が純粋で、とても綺麗だと何度も思った。それを素直に伝えてみたのだが――。
呆然と、クラウスはルーナに目を向け、徐々に頬が赤く染まっている姿になる。
「あの、クラウス様?」
「……ルーナ、お前、これは無自覚で言っている、という事なんだな」
「ええ、なんか変な事言いましたか私!?」
変な事を言ってしまっただろうかと青ざめた顔をしながら答えるが、クラウスは怒るどころか肩を揺らしながら笑っている。
口を抑えながら笑っているクラウスの姿に、ルーナは少しだけ安堵した様子を見せながら、クラウスを見ている事しかできなかった。
そして、何故クラウスがそのような発言をしたいのか、疎い性格のルーナは全く理解できず、結局この日、ルーナはクラウスの言葉を理解しないまま、一日が過ぎた。
ルーナの村から離れた場所にある王国の血縁者であり、敵なら容赦なく命を奪うとされ、その光景はまるで狂ったような戦士だったと噂されている人物。
因みに彼が初めて人を殺したのは、自分を裏切った友人数名を容赦なく殺し、平然と血まみれになったと言われている、と言う話を以前神父から聞いた。
次の日、あばらの骨と右足を骨折した神父に青ざめた顔で青年の名前を口にすると、神父の顔は恐怖に歪んでいた。
「……俺、生きているよな?」
「うん、生きているから大丈夫だから!」
流石の神父も反省したようで、それと同時に殺されたくないのであろうとルーナは理解する。
因みに何故ルーナがクラウスの事を知っているのかは、もちろん神父と、そして一人のご老人に教わったからである。そのような話があると言う事を。
実際に見るのは初めてだったが――いや、そもそもこのような閉鎖された村にまさか神父がそのような人物を拾ってくるなんて誰も想像しないであろう。
とりあえずケガが治ったらすぐにこの村から出て行ってもらおうと言う事で、神父とルーナの意見は一致するのだが。
「ルーナ」
「あ、クラウス様」
「……気軽にクラウスって呼んでも良いぞ?」
「いや、流石に平民が王族の血を持つ高貴たるお方を呼び捨てに何て出来ないですよ」
「そうか……だが、俺はお前にそのように呼ばれたいのだがな」
「はぁ……」
数日後、ケガの治りが早いのか、教会で安静にしていたクラウスも最近では外に出るようになっていった。美味しい田舎の空気を吸いながら、ルーナの姿を見つけると、笑顔で声をかけてくる。
声をかけてくる事は別にルーナにとっては構わないのだが、しかしそれでも目の前の男は貴族と言う存在であり、ルーナは平民である。名前など絶対に気軽に呼べない。
そのような存在のクラウスが、なぜかついてくる。外を歩くと後ろからついてくるかのように、そしてルーナが住んでいる小屋の中に入ると、なぜか入ってきて、彼女が行う家事や、少ない食事を一緒に取ったり、最近では薬草を見分け、分けてくれたり、塗りつぶしてくれたりする事をしてくれる。その事に関しては、ルーナはありがたいと思っている。
しかし、相手は『血濡れの狂騎士』と呼ばれている男で、油断が出来ない。
言葉を間違えてしまえば、もしかしたら腰につけている長剣で首をはねられてしまうのかもしれないと思うと、気が気ではない。とりあえず、言葉を否定する事なく、肯定させながら、数日過ごし――だいぶケガの調子も良く治ってきたと思ったルーナは聞いてみた。
「クラウス様」
「なんだ、ルーナ」
「……いつ、クラウス様はこの村を出ていくのですか?」
――ぶっちゃけ、この村に居る意味ないですよね?
と、ルーナは簡単にそのような発言をしてみて、相手の出方を待ったのだが、まさかそのような発言をされるとは思っていなかったのか、突如動きを止めたクラウスは驚いた顔をしながらルーナに視線を向ける。
そのような顔をされるのは予想外だったので思わず驚いてしまったルーナに対し、クラウスは彼女に目を向けながら固まった体を動かす事なく、震える唇で呟く。
「る、ルーナは……俺にここを、出て行って、もらいたいのか……?」
「え、ま、まぁ……だってここは閉鎖的な村で、滅多に余所者が来ない場所です。それに、クラウス様は王族の血筋の方で貴族です。このような村に居る人ではないと、思うのですが……ボク、いえ、わたし、間違った事言いましたか?」
「……い、いや、確かに、そうなのだが……ああ、そうだな。全く脈なしだったと言う事か」
「え?」
「傍に居て、アピールをしていたのだが……どうやら響かなかったらしいな。ルーナは俺に寄ってきた女たちとは違うのだな……」
「あ、あの……クラウス様?」
ぶつぶつと呟き始めたクラウスの言葉が全く理解できず、ルーナは再度クラウスに声をかけたのだが、次の瞬間、目を見開いたと同時に、クラウスはルーナの両肩を鷲掴みにする。
え、これは『死』なのかと頭にそのような文字が過ったのだが、クラウスはルーナに顔を近づけながら、真剣なエメラルドの瞳でルーナを見る。
相変わらず綺麗な瞳だなと思いながら、ルーナはクラウスの目を見つめていると。
「ルーナ」
「は、はい……」
「ルーナは、俺のような男性は、その、どう思う?」
「え、クラウス様のような人……それは、好みを聞いていらっしゃるのでしょうか?」
「そうだ」
「……そうですね、正直顔が整っている方は苦手です。うちの神父も同じように顔が整っている人ですが、どうもそのせいなのかわかりませんが、整っている人の性格は歪んでいる、クソだと思ってしまう事があるんです」
「く、クソ……そ、そうか……」
「……ですが、綺麗なモノは、好きです。クラウス様」
「……綺麗なモノ?」
「クラウス様のエメラルドの瞳……私は透き通る宝石のように見えて、好きですよ」
この村には若者は居ないし、顔が整っている人物はただ一人――神父なのである。しかし、その神父の性格はクソほど歪んでいるので、ルーナの頭は整った顔をしている、綺麗な顔をしている人の性格は絶対に歪んでいて、関わってしまうと絶対にロクな事はないと思っているからである。
クラウスも正直、性格が問題なければ好意を抱いていたのかもしれないが、ルーナにとってクラウスと言う存在は恐怖の対象でしかない。
しかし、ただ一つ言えるのは、クラウスの瞳の色、透き通るエメラルドの色が純粋で、とても綺麗だと何度も思った。それを素直に伝えてみたのだが――。
呆然と、クラウスはルーナに目を向け、徐々に頬が赤く染まっている姿になる。
「あの、クラウス様?」
「……ルーナ、お前、これは無自覚で言っている、という事なんだな」
「ええ、なんか変な事言いましたか私!?」
変な事を言ってしまっただろうかと青ざめた顔をしながら答えるが、クラウスは怒るどころか肩を揺らしながら笑っている。
口を抑えながら笑っているクラウスの姿に、ルーナは少しだけ安堵した様子を見せながら、クラウスを見ている事しかできなかった。
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