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第13話、このままいくと、国が滅びるらしい。
しおりを挟む「「……」」
『あらあら、それは初めて聞いたわ。流石、顔は良い人間はモテるわねー』
「いや、違うと思うんですけど……何ですかその発言。私、初めて聞きましたよ?」
「初めて言った」
「……ここに来た理由、聞いておけばよかったわ」
平然としながらそのように答えるクラウスに対し、頭痛が激しくなりそうな感じに陥ってしまったルーナは頭を抱えながら、首をかしげるようにしながら自分に視線を向けている彼に対し、一発ぶん殴っても大丈夫だろうかと言う衝動に駆られてしまった。
どうやらシリウスも同じような事を考えていたらしく、ルーナと同じように右手には拳を作って強く握られている光景がある。
隣に立つサーシャが笑いながら、その拳を優しく包み込むようにしながら止めていたんだが。
しばらくルーナとシリウスの沈黙が続いている中、全くわかっていないサーシャはクラウスに目を向けて放しかける。
『つまりあなたは、その聖女様?って人から求婚されたってこと?』
「はい、どうやら顔が好みだから、だそうです。おかげで取り巻きの男たちにはめちゃくちゃ睨まれました」
『で、どのように返事したの?』
「はっきり言いましたよ。『ハーレムに加わる気はない』と」
「……はっきり言うんだな、クラウス様」
多分、今している顔でその聖女様と言う女に言ったのかもしれない。
「……だから、逆凛に触れたって言う感じですか?」
「ああ、そうだ」
「……トワイライトの国の権力者の人たちを敵に回して?」
「ああ……そもそも、俺はあの聖女様が気に入らなかった」
「……」
真顔でそのように発言するクラウスの姿を、ルーナは見つめる事しかできない。
同時に、一緒に過ごすようになって彼女は思った。
――クラウスらしい発言、だと。
クラウス・エーデルハットは縛られることを否定し、自由に生きて、自由に騎士をして、自由に暮らしている存在なのだという事を、改めて理解する事になった。
ふと、クラウスはルーナに視線を向ける。
「……ルーナ」
「はい、何ですか?」
「俺は、間違っていたか?」
国の為に働いていた目の前の男は、自分の道を進むために聖女の言葉を断ったのであろう。
しかし、そんな事ルーナには関係ない。
「間違ってないと思いますけど?寧ろ、クラウス様らしい発言をしたのでは?」
全く興味のなさそうな顔でそのように発言するルーナを見たクラウスは一瞬驚いた顔をしていたのだが、すぐにフッと笑うようにしながらルーナを何処か楽しそうに見ている。
なぜそのような顔をして自分を見るのか理解できないルーナは少し不快そうな顔をしながらクラウスに目を向ける。
「な、なんですか?」
「いや、ルーナはルーナだなと思って」
「い、意味が分からないんですけど……」
「ああ、わからなくていい」
「??」
どのように反応すれば良いのかわからないルーナが戸惑っている中、クラウスとルーナのやり取りを見ていたシリウスは静かに息を吐く。
「――トワイライトだって言うのはわかっていたんだがな。『血濡れの狂騎士』が居る場所はトワイライトの騎士だし……狂騎士と言われていたが、国には忠義を持っていたと聞いていたからどうしてこの森の中に逃げ込んだのかわからなかったが……なるほど、聖女か」
『……昔、聞いたけどシリウス。あなたの国を襲った存在も『召喚』だったわよね?』
「ああ――『勇者召喚』だ」
シリウスにとって、忌々しい記憶が蘇ろうとしている。
同時に二度と思い出したくないし、これからも関わっていくつもりはないと思っていた『モノ』だ。
サーシャはシリウスが何故この森に逃げ込んできたのか、閉鎖的の村でルーナと一緒に暮らすようになったのか、その理由を知っている。
禁忌とされた『勇者召喚』――未だにそれを行おうとしている奴らが存在する。
「この国には『魔王』なんていう存在はいない筈なのにな」
トワイライトは何故、『聖女召喚』をし、異世界から少女を召喚したのだろうか?
召喚するなら、何か理由があるはずだ。
しかし、シリウスも、ルーナも、この閉鎖的な村で暮らしている為、外の情報は全く入っていない。
「……『外』で何かあったのか?」
シリウスは静かにそのように呟くと、クラウスに声をかける。
「狂騎士様、俺達がこの村で暮らしている間、『外』で何かあったか?」
「……『外』と言うのは、この村の『外』か?」
「ああ、俺もルーナも……この村で暮らしている数人の住人達も、『外』には全く干渉しない。だから、何か起きているのか全く分からない。数年前までは『外』の情報を集めていたんだが、めんどくさくてやめちまってな」
「……と言うか、『外』の情報を集めてくれていた人がいたんだけど、大ケガをしてしまってそれが出来なくなってしまったんです」
「そうなのか……そうだな、特に変わった事はない。ただ、俺の国のトワイライトはその聖女様のせいでだいぶ危ない状況だがな」
「……なんか、国が滅びそうな言い方ですね」
「言い方じゃない。真実だ」
「え?」
クラウスの発言に驚いた顔をしながら、ルーナは目を見開く。
しかし、目の前の男は平然とした顔をしながら、その言葉に対し否定もせず、静かに肯定する。
「このままじゃ間違いなく、聖女様のせいで国が滅びるな」
と、他人事のように目の前の男はそのように発言したのである。
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