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第27話、大蛇が現れても、ルーナは平然としながら話しかけていた。
しおりを挟む「クラウス様、一緒に狩り行きますか?」
「……それは、俺に言っているのか?」
「クラウス様しかいないですよ、今」
「……行く」
「では、行きますか」
今日はクラウスを狩りに誘ってみたのだが、少し考えた様子を見せたクラウスは承諾し、簡単に準備を始めたので、ルーナも持っていくものを鞄に詰める。
簡単に用意が完了したルーナは再度クラウスに視線を向けると、クラウスも軽い荷物を持ちながらルーナの前に立っていた。
「あ、長剣ですが、そちらの剣ではなくこちらの剣を持って行ってください」
「……これは、邪魔か?」
「邪魔と言うか、立派すぎるから……汚したら大変だと思って」
「そんなの気にしなくていい。この剣は汚れる為にあるからな」
「……クラウス様がそれでいいなら別に大丈夫なんですけど」
ルーナは置いてあった古びた長剣を渡してみたのだが、どうやら使い勝手がいい長編の方がいいらしく、クラウスは持っていくのを断った。
クラウスが持っている長剣は、この村からずっと離さず持っている長剣だ。
ルーナからしたらとても立派な長剣なので、そんな長剣を狩りの為に使うわけにはいかないと思ったのだが、クラウスは気にしないらしい。
本人が大丈夫ならば、と言う事でルーナは持っていた長剣を置き、森の方に歩き出す。
ルーナの後を急いでつくて行くように、クラウスも歩き出した。
「とりあえず今日は野兎を数匹捕まえます。で、家に帰って解体して、一日薬草につけて、明日の食事にします……明日はどうやら天気が悪そうなので」
「天気……わかるのか?」
「うちの村には優秀な魔術師ばば……いえ、おばあさんがいるので」
カルーナは魔術で天気を見てくれる事がある。
明日、天気が悪いという事を教えてくれたので、今日中に明日の分を取っていかなければならないと思ったからである。
森の中に入りながら、ルーナは辺りを見回すようにしつつ、鞄から古びた短剣の鞘を抜き、握りしめる。
「ルーナは短剣を使うのか?」
「長いモノを振り回すのは苦手なんです。一度シリウス様に教えてもらいましたが、短い方が性に合っているみたいです」
「短剣もあの神父殿に?」
「ええ。全部教わりました。生きる事全て」
ふと、一部だけルーナの頭の中に思い出されたシリウスとの鍛錬。
正直、良い事ではなかったのだと、ルーナは理解している。
(……厳しかったんだよなぁ、死ぬ気で覚えないと殺されそうだったし)
堕落している男のはずなのに、剣術のような事は一通り教わった。
その際、教わり方が間違いなく鬼共感だと言って良いほど、厳しい指導だったことを思い出す。
嫌な顔をしながらルーナは前に突き進んでいる。
そんなルーナの様子を背後で静かに見つめていたクラウスだったが、ふと動きを止め、剣の鞘を握りしめる。
「ん、クラウス様?どうか致しましたか?」
「あ、いや……今、殺気を感じたような気がしたんだが……」
「……ああ、まぁ、感じるかもしれないですね。何せこの森は『特殊』ですから」
」『特殊』……そう言えば、俺はこの森の事を詳しく聞いてなかったな……」
「え、クラウス様この森の事知らないのですか?」
「こちらの方角は全く来た事ないので知らん」
「そんな偉そうな顔で言わなくても……まぁ、面白い顔をしていたので許しましょう」
ちょっと偉そうな顔をしながら答えるクラウスの表情は何処か楽しく感じながら、ルーナは笑いながら返事を返す。
「この森は、別名『魔の森』です」
「魔の森?」
「名前の通り、この森には動物もいれば、魔物も存在します……何せ、この森を管理している存在が、ドライアド……精霊です」
ドライアド――樹木の精霊の一種。
そして、ドライアドのサーシャはこの森で管理をしており、同時にこの森の主と言う存在でもある。もちろん、強い力の持ち主だ。
そんな彼女が管理している森はただの森ではない。
ふと、クラウスは疑問に思った事をルーナに問いかける。
「ならルーナ……何故その森の中に、『村』があるんだ?」
「ああ、それはですね……ッ!」
何故村が森の中にあるのか、と言う事を説明しようとしたその時、ルーナの目が鋭くなる。
急いでクラウスの背中に周り、持っていた短剣を強く握りしめながら、構える。
「クラウス様、気配わかりましたか?」
「……ああ、ピリピリしてる……間違いなく殺気だ」
「……この気配か、ちょっといけないやつだな」
ルーナが嫌そうな顔をしながらそのように発言してきたので、クラウスは首をかしげながら彼女に視線を向ける。
何故か困った表情をしている彼女は、この強い殺気が怖くないのだろうか、と。
クラウスは微かに震えていた。
今まで感じたことのないあ強い殺気に、握りしめていた剣が震えてしまう程――向かって来る相手は間違いなく、格上だと言う事に。
ルーナが静かに息を吐き、短剣を抜くと同時だった。
目の前に突然、真っ黒い大蛇が姿を見せた。
「ッ!」
クラウスは咄嗟に剣を構え、彼女を守るように一歩前に立つ。
睨みつけるように視線を向けながら、向かって来るのではないだろうかと言う恐怖を感じつつ、クラウスはその場を動かず剣を構えたまま。
現れた大蛇も静かに目の前の男、クラウスに視線を向け、睨みつけているのみ。
大蛇が現れて数十秒後、ルーナの呆気ない声で、クラウスは剣の力を緩めてしまった。
「突然現れてクラウス様が困るだろう、『アシュレイ』」
『――オマエガ、ヨソノオトコヲツレテクルカラダ、るうな』
「……は?」
突然大蛇に話しかけたルーナに呆気にとられたと同時に、頭の中で響き渡る声に、クラウスは呆然としながら一人と一匹のやり取りを見て固まるのだった。
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