傷だらけの騎士を手当てしたら、惚れられ、連れていかれ、そして溺愛されました。お願いですからやめてください!?

桜塚あお華

文字の大きさ
35 / 50

第35話、では行きましょう。魔王退治へ

しおりを挟む

 ――魔王が世界を滅ぼすのは、当たり前なのではないか?

 カルーナに言われた言葉に対し、妙に納得してしまった二人はそれ以上言葉が出ないまま、お互い顔を見回せたまま呆然としている。
 彼女の言う通り、トワイライト王国を攻め込むのに、理由なんて居るのだろうか?『魔王』であれば、なおさらだ。

「あの男のことじゃ……目的なぞ、ないのであろう。あるとすれば――」

 カルーナはそのように発言しながらルーナに視線を向ける。
 何故、彼女を狙うのか、その理由は本人すら知らない。
 知っているのは、この場ではどうやらカルーナと、そして真実を言う事がないシリウスのみ。
 シリウスは相変わらずしかめっ面な表情を見せながら、ルーナたちに目を向けているだけで何も言おうとはしない。カルーナに真実を言うつもりはないのだろうか、と言う目線を向けられても、シリウスは言葉を発する事はなかった。
 数分程沈黙が続いている中、シリウスは静かに息を吐きながら立ち上がると、そのままルーナに近づき、肩を軽く叩く。

「ルーナ」
「……神父様」
「真実はまだ言えない……もう少しだけ待っていてくれないか?」
「待っていてくれないかって……神父様はその『魔王』を知っているの?」
「ああ、よく知ってる……知っているからこそ、本当に話していいのか正直わからない……しかし、話さなければならないとは思ってる」
「……」

 シリウスにもシリウスなりの考えがあるのだろうと、ルーナは理解する。
 彼が触れた手が、微かに震えているのが分かったからだ。
 平然とした顔をしていても、シリウスの表情が変わっていなくても、この話をするのは怖いのではないだろうか?
 ルーナはシリウスの手に静かに触れた。

「神父様、大丈夫」
「……ルーナ」

「どんな真実でも、私はそれを受け止める覚悟です。だから、落ち着いた時で良いから話してください。私が、一体どんな人物なのか、と言う事を」

 静かに笑いながら答えるルーナの姿を見たシリウスは少しだけ安心したのか、安堵した表情を見せながら、彼女の頭に手を伸ばし、優しく撫でる。
 先ほどの表情とは打って変わって、落ち着いた姿を見せたシリウスに、ルーナは安堵を覚えた後、クラウスに目を向けた。

「それでクラウス様、どうしますか?」
「どうしますかって……何をどうするんだ?」

 突然話を振られたので驚いたクラウスだったが、ルーナはあっけらかんとした顔でクラウスに言う。

「何って、トワイライト王国に行って『魔王』を倒しちゃおうって話ですよ」

「「……は?」」

 簡単にそのように発言するルーナは全く持って、わかっていないような顔をして答えているので、クラウスとシリウスは思わず声をそろえながら発言してしまい、カルーナもその発言を聞いた瞬間、目を見開いたと同時にその場で大笑いをする。
 突然大笑いをし始めたカルーナに疑問を抱きながら首をかしげるルーナに対し、シリウスは両肩を鷲掴みにしながらルーナに詰め寄る。

「どうして、そうなるんだ!!何も考えてないのかお前は!」
「え、だって、このままだとトワイライト王国、滅んじゃうと思って……クラウスさんの国ですよ?あ、故郷って言う意味で」
「だからってなぁお前は!俺やクラウス二人だけで、勝てる相手だと思うか!!」
「え、シリウス様は世界最強じゃないんですか?」
「あー!話が通じねぇ!!」
「そう教えたのはお前さんじゃぞ、シリウス」

 ヒヒっと楽しそうに笑いながら答えるカルーナに対し、シリウスは一度目の前のババアをぶん殴ってやろうかと拳を握りしめた。
 ルーナの変わらない顔を見ながら、クラウスは驚く顔を見せたまま、呆然とルーナに視線を向けている。

「……ルーナ」
「なんですか、クラウス様?」
「俺の国は既に『聖女』の力でほとんど、滅びに向かっているようなものだ。それに俺は国を追われている……戻ってしまったら、それこそ俺は殺されるし、それに既に終わって――」

「国が終わっていても、クラウス様の家族はまだあの国に居るんでしょう?」

「ッ……」

 ルーナの言葉を聞いて、何も言えない。
 確かにあの国を出る前は、まだ家族は無事だった。
 自分だけでも、クラウスだけでもこの国から出るように助けてくれたのは、間違いなく家族だ。
 その家族はまだ、あのトワイライト王国に残ったままだ。
 ルーナはその事を言っている。
 『家族』を救えと。

「クラウス様、私の本当の家族はわかりませんし、孤児と言われていたから知らないです。けど、クラウス様には居るでしょう?」
「……ああ」
「既に終わっている国かもしれないですが、それでも、あの国はクラウス様の故郷であり、大切な場所なのでしょう?」
「……うん」

「大切な存在を失ってしまった後では遅いと思いますよ?」

 その言葉を聞いた瞬間、頭の中で色々と考えていたことが、抑えていた『糸』が一瞬にして千切れた感覚を覚えた。
 ルーナはそのままクラウスの両手を鷲掴みにし、笑顔を見せる。

「もちろん、私も一緒に行きますから、味方になるって言いましたしね」
「……本当、ルーナには敵わないな」

 笑いながら答えるルーナに対し、クラウスの無表情が一瞬にして崩れたような笑みを見せた。
 二人のそのようなやり取りに視線を向けていたシリウスはため息を吐き、カルーナは相変わらず笑っている。

「ヒヒっ、まぁ、ルーナの言い分はわかるがなぁー」
「……まぁ良い。そろそろケリをつけようとは思っていたからな」

 笑いながら答えるカルーナは持っていた杖を強く握りしめ、ため息を吐いていたシリウスは拳を強く握りしめたのだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

処理中です...