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第一話:「七不思議の始まり」
しおりを挟む「この学校には七不思議があるんだよ」
教室の後ろで、クラスメイトのミユがいたずらっぽく笑った。昼休みの雑談中、ふとしたきっかけでその話題になったのだ。
「七不思議なんてどこにでもある話じゃん」
半ば興味を失いかけていたリツだったが、ミユの真剣な目が気になった。
「でも、この学校の七不思議、ちょっと変わってるの」
「変わってるって?」
「七つの噂を全部調べると、“八つ目”が見つかるんだって」
その瞬間、教室の雰囲気がわずかに変わった気がした。
普段はおしゃべりに忙しいクラスメイトたちも、自然と耳を傾ける。
「八つ目ってなに?」誰かが聞いた。
ミユは少し声をひそめて続けた。
「それを知ったら…消えるんだって」
---
七不思議の調査
その日の放課後、リツとミユ、そしてもう一人の友人ハルカは、興味本位で七不思議を調べることにした。
ミユが持ってきた古びたノートには、次のような七つの噂が書かれていた。
1. 音楽室のピアノ:夜中に誰もいないはずの音楽室でピアノが鳴る。
2. 体育館の影:夜の体育館に現れる謎の影。
3. 理科室の人体模型:勝手に動き出すことがある。
4. 旧校舎の鏡:鏡に映った自分が動かなくなることがある。
5. 図書室の本棚:開かずの棚があり、そこに触れると消えるという噂。
6. 屋上の足音:誰もいない屋上で足音が響く。
7. 裏庭の井戸:昔、生徒が井戸に落ちて死んだという話が残っている。
「どれもありがちな話だけど…八つ目ってどうやってわかるのかな?」
リツがつぶやくと、ミユは少し考えてから答えた。
「全部調べて、噂の“本当の意味”を知ることじゃない?」
---
音楽室のピアノ
その夜、三人は七不思議の中でも簡単そうな「音楽室のピアノ」を調べることにした。
部活帰りを装い、校内に残った三人は、人気のない廊下を進む。
音楽室のドアの前で、ミユが振り返る。
「ほんとにやる?」
「ここまで来たのに、やらないわけないでしょ」
ハルカが軽く笑った。
ドアを開けると、中は昼間と変わらない静けさだった。
ピアノは部屋の奥にひっそりとたたずんでいる。
「ほら、普通じゃん」ハルカがつぶやく。
しかしその瞬間。
カタ…ン
微かな音がした。
「え…今の音、聞こえた?」
リツが言うと、三人は顔を見合わせた。部屋には誰もいない。
カタカタ…ン
次の瞬間、明らかにピアノの鍵盤が動く音がした。
「うそでしょ…?」ハルカが震える声を漏らす。
その音はだんだんと大きくなり、ついには不協和音が響き渡った。
「逃げよう!」
ミユの声に、三人は一斉に駆け出した。
---
廊下の影
音楽室から飛び出した三人は、足を止めることなく廊下を駆け抜けた。
ようやく息をつける場所まで来たとき、ハルカが振り返った。
「なにあれ…」
廊下の奥に、一つの影が動いていた。
形ははっきりしないが、人間には見えない何かだ。
「誰か、いた?」リツが声を震わせながら言う。
影はじわじわと近づいてくるように見えた。だが、それがただの錯覚ではないことは三人の誰もが理解していた。
「行こう…ここにいたら、何か良くないことが起きる」
ミユが言うと、三人は再び廊下を走り出した。
---
消えた足音
階段を駆け下り、次の教室へ逃げ込むと、辺りは急に静かになった。
影は追ってこないのかもしれない――そう思ったのもつかの間だった。
廊下から、カツ…カツ…とゆっくりした足音が聞こえてきた。
「まさか…追いかけてきた?」ハルカがつぶやく。
リツはふと、自分の手元を見ると、いつの間にか握っていたノートが目に入った。
ミユが持ってきた、あの七不思議が書かれたノートだ。
「…このノート、ちょっとおかしい」
リツが言うと、二人が彼女の手元を覗き込んだ。
ノートの最終ページには、こう書かれていた。
『七つを超えたその先に、“八つ目”が待っている』
次の瞬間、教室のドアがバタンと音を立てて閉じた。
---
続く
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