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1話 豪快すぎる婚約破棄
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柵にもたれかかりながら私は周りを見回す。
ようやく念願の牧場が完成した。
家畜小屋、草地、井戸
そして私がこれから可愛がっていく予定の家畜──いや未来の可愛い金となる魔牛たち。
「ふふ、いい風景じゃない。実に平和的」
私は深呼吸し新しい人生の匂いを味わう。
……干し草と牛の匂いが八割だが。
しかしその平和は、五秒で崩れた。
「……ん?」
一頭の巨大魔牛がこちらをにらみながら鼻息を荒くしていた。
体は馬車二つ分
角は私の背丈より高い。
その脚が地面を ドンッ と蹴りつける。
「もしかして……逃げる気?」
次の瞬間──魔牛が柵を飛び越えようと私に突進してきた。
「ちょっと待ちなさい。
あなたまだ金になってないじゃない」
もちろん、魔牛は言葉など分からない。
だが私は慈悲深い貴族
逃げる金にきちんと指導をしなくてはならない。
「止まりなさい」
私の拳が魔牛の顔面にめり込み魔牛の突進は一瞬で止まった。
巨大な体がそのまま地面を滑り、ドサッと横向きに倒れる。
……ピクリとも動かない。
「よし気絶だけね
骨も折れてないよかったこれで折れてたら金にならないところだったわ偉いわ私」
私は倒れた魔牛の頭を撫でてやる。
「安心なさい。
暴力は愛情。
しつけとは優しさ。
そして家畜は金になる牧場経営の基本よ?」
魔牛は答えなかった。
代わりに、遠くの牛たちがブルブル震えていた。
「うふふいい子達
逃げようなんて思わなければ、私はとっても優しいんだから」
それにしてもまさかあんなにも都合よくことが運ぶなんておもいもしなかったわ
「婚約を破棄しよう」
王宮の中庭で第一王子は冷たくそう言い放った。
いやもうこいつを第一王子だなんて言い方をする必要もないししたくもないそうだな豚と呼ぼう。
なんでそんなに怒っているのか?といわれればこの豚には幾度も恥をさらされたからだ。
この豚に髪を引っ張られ胸ぐらを掴まれたことをいまでも覚えている。
婚約者でなければ私はぶん殴っていたところだ。
もちろん私は婚約を破棄したいと父親にいったこともあった。
だが、それでも王家との繋がりに固執する私の父親が私の話を聞かない。
そのせいで私はずっとずっとストレスをためる一方だった。
まあ私をバカにしてきたやつらは大体ぼこぼこにしてきたので魔法とか関係なく私の鍛えてきた筋力で
私の加護はじぶんの身体をおもうような強さで作りあげることが可能なのでそれも関係しているのかもしれない。
それゆえに私はたくさんのサンドバックを扱ってきた。
後ろで王子の取り巻きがクスクス笑っていて腹立つ。
ああ、うるさい
そうおもい睨むと途端に怯えて目をそらす。
はあ本当に情けなくて腹立たしい。
でもまあいい今日でこの家畜どもの鳴き声が聞こえなくなると思うと逆に寂しいほどに感じてくるわ。
それにしてもなんで私がこんな茶番に付き合わなくてはいけないのかしら
でも私は優しいのだから一応形式だけは婚約破棄のシーンだけやっておいて差し上げましょう。
「なぜそのようなことを申し上げるのでございますか豚王子」
「理由……?
おまえは社交界でも有名な粗暴者だ。
魔物を素手で殴り飛ばしたとか私を気絶させたとか」
「あなたが助けてとおっしゃいましたので」
「助けてって言われて強盗ごとわたしを吹っ飛ばすバカがどこにいる
というかおまえ今豚王子とか言わなかったかおい」
「あらそんなこと言ったかしら私」
「白々しいなおまえは本当に
それに最近は噂もひどい。
おまえ何人もの人たちを病人送りにしているらしいではないか」
「はあそうでございましたかね?」
「……反省とかないのか?」
「ありえませんね。
だってそもそもやってきたのはあちらですので」
王子の眉がピクリと跳ねた。
この人、本当に分かりやすい。
私はため息をひとつついた。
婚約者からの冷遇、家のギスギス、広がる噂
どれもこれももううんざりだ。
「なので私はこの場で令嬢と言う役割を全部捨てさせていただきますわ」
「……は?なにをいって」
「牧場主です。
草を育て牛を育てついでに私の心もうるおう
そんな最高の職業に私は就きたいのです」
ぽかんと開いた口はまるで間抜けな羊にしか見えなかった。
というか牧場主なんて令嬢がするものじゃないなんておもってるのかも
いらないなあ本当この家畜
「ではさようなら。
あなたは今日から──」
私は彼の胸倉を掴み聞こえるか聞こえないかの声で囁く。
「私の家畜です」
その瞬間、王子の顔から色が消えた。
そして同時に私の拳が軽快に動いた。
──パシャ。
あまりにも見事なタイミングで、近くの記者がシャッターを切っていた。
王子がアホヅラでぶっ飛んでいく姿がばっちり写真に収められる。
「お、おまっ……殴ったな……!」
「ええ殴りましたよ?」
「ふっふざけるな」
そんな騒ぎのせいで私は王都から追放と言われた。
だが問題ない。
そもそも牧場を開くつもりだったのだ。
行き先はきれいな草原とたくましい動物たちがいる喧騒のない平和な世界
「では行きましょうか私の牧場へ」
私は満足げに息を吸い込み馬車に乗り込んだ。
こうして暴力令嬢の牧場生活が始まった。
ようやく念願の牧場が完成した。
家畜小屋、草地、井戸
そして私がこれから可愛がっていく予定の家畜──いや未来の可愛い金となる魔牛たち。
「ふふ、いい風景じゃない。実に平和的」
私は深呼吸し新しい人生の匂いを味わう。
……干し草と牛の匂いが八割だが。
しかしその平和は、五秒で崩れた。
「……ん?」
一頭の巨大魔牛がこちらをにらみながら鼻息を荒くしていた。
体は馬車二つ分
角は私の背丈より高い。
その脚が地面を ドンッ と蹴りつける。
「もしかして……逃げる気?」
次の瞬間──魔牛が柵を飛び越えようと私に突進してきた。
「ちょっと待ちなさい。
あなたまだ金になってないじゃない」
もちろん、魔牛は言葉など分からない。
だが私は慈悲深い貴族
逃げる金にきちんと指導をしなくてはならない。
「止まりなさい」
私の拳が魔牛の顔面にめり込み魔牛の突進は一瞬で止まった。
巨大な体がそのまま地面を滑り、ドサッと横向きに倒れる。
……ピクリとも動かない。
「よし気絶だけね
骨も折れてないよかったこれで折れてたら金にならないところだったわ偉いわ私」
私は倒れた魔牛の頭を撫でてやる。
「安心なさい。
暴力は愛情。
しつけとは優しさ。
そして家畜は金になる牧場経営の基本よ?」
魔牛は答えなかった。
代わりに、遠くの牛たちがブルブル震えていた。
「うふふいい子達
逃げようなんて思わなければ、私はとっても優しいんだから」
それにしてもまさかあんなにも都合よくことが運ぶなんておもいもしなかったわ
「婚約を破棄しよう」
王宮の中庭で第一王子は冷たくそう言い放った。
いやもうこいつを第一王子だなんて言い方をする必要もないししたくもないそうだな豚と呼ぼう。
なんでそんなに怒っているのか?といわれればこの豚には幾度も恥をさらされたからだ。
この豚に髪を引っ張られ胸ぐらを掴まれたことをいまでも覚えている。
婚約者でなければ私はぶん殴っていたところだ。
もちろん私は婚約を破棄したいと父親にいったこともあった。
だが、それでも王家との繋がりに固執する私の父親が私の話を聞かない。
そのせいで私はずっとずっとストレスをためる一方だった。
まあ私をバカにしてきたやつらは大体ぼこぼこにしてきたので魔法とか関係なく私の鍛えてきた筋力で
私の加護はじぶんの身体をおもうような強さで作りあげることが可能なのでそれも関係しているのかもしれない。
それゆえに私はたくさんのサンドバックを扱ってきた。
後ろで王子の取り巻きがクスクス笑っていて腹立つ。
ああ、うるさい
そうおもい睨むと途端に怯えて目をそらす。
はあ本当に情けなくて腹立たしい。
でもまあいい今日でこの家畜どもの鳴き声が聞こえなくなると思うと逆に寂しいほどに感じてくるわ。
それにしてもなんで私がこんな茶番に付き合わなくてはいけないのかしら
でも私は優しいのだから一応形式だけは婚約破棄のシーンだけやっておいて差し上げましょう。
「なぜそのようなことを申し上げるのでございますか豚王子」
「理由……?
おまえは社交界でも有名な粗暴者だ。
魔物を素手で殴り飛ばしたとか私を気絶させたとか」
「あなたが助けてとおっしゃいましたので」
「助けてって言われて強盗ごとわたしを吹っ飛ばすバカがどこにいる
というかおまえ今豚王子とか言わなかったかおい」
「あらそんなこと言ったかしら私」
「白々しいなおまえは本当に
それに最近は噂もひどい。
おまえ何人もの人たちを病人送りにしているらしいではないか」
「はあそうでございましたかね?」
「……反省とかないのか?」
「ありえませんね。
だってそもそもやってきたのはあちらですので」
王子の眉がピクリと跳ねた。
この人、本当に分かりやすい。
私はため息をひとつついた。
婚約者からの冷遇、家のギスギス、広がる噂
どれもこれももううんざりだ。
「なので私はこの場で令嬢と言う役割を全部捨てさせていただきますわ」
「……は?なにをいって」
「牧場主です。
草を育て牛を育てついでに私の心もうるおう
そんな最高の職業に私は就きたいのです」
ぽかんと開いた口はまるで間抜けな羊にしか見えなかった。
というか牧場主なんて令嬢がするものじゃないなんておもってるのかも
いらないなあ本当この家畜
「ではさようなら。
あなたは今日から──」
私は彼の胸倉を掴み聞こえるか聞こえないかの声で囁く。
「私の家畜です」
その瞬間、王子の顔から色が消えた。
そして同時に私の拳が軽快に動いた。
──パシャ。
あまりにも見事なタイミングで、近くの記者がシャッターを切っていた。
王子がアホヅラでぶっ飛んでいく姿がばっちり写真に収められる。
「お、おまっ……殴ったな……!」
「ええ殴りましたよ?」
「ふっふざけるな」
そんな騒ぎのせいで私は王都から追放と言われた。
だが問題ない。
そもそも牧場を開くつもりだったのだ。
行き先はきれいな草原とたくましい動物たちがいる喧騒のない平和な世界
「では行きましょうか私の牧場へ」
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こうして暴力令嬢の牧場生活が始まった。
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