OK牧場~私をバカにする皆さまに一撃KOをそして私は牧場主となる~

山田空

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3話 セバスチャン

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朝陽が草原を黄金色に染める。

冷たい空気の中、私は牧場小屋の扉を開け柵越しに魔牛たちを眺めた。

「うふふのどかでいいわね」

しかし、魔牛には昨日とは少し違う気配があった。

魔牛たちの体からほんのりと青白い光が漏れ毛並みが微かに揺れている。

角の先端が朝日を反射して小さくきらめき息を吐くたびに空気が震えるようだ。

「……ん?」

遠くで草を食む魔牛の周囲に緑の小さな風の渦が巻き上がっている。

地面の草がほんの少しだけ浮きまるで魔力が空気と遊んでいるかのようだった。

「……あら風魔法が使えるのね」

目の前の一頭が私の視線をまっすぐに返してくる。

角の光が強くなるにつれ胸の奥が少しざわついた。

「うふふああ楽しみ」

なにかが起きる期待感を胸に私は深呼吸をして腕まくりをする。

だが、一匹の魔牛の様子がおかしいことに私は気がついた。

「ちょっと待ちなさい」

一頭の魔牛が胸の奥でうずく魔力を暴れさせるように、鼻息荒く柵に向かって突進してきた。

その体は馬車二台分はあろうかという巨躯。

角からは青白い光が迸り地面に触れるたびに草が微かに焦げる匂いがした。

私は一歩も引かず魔牛の目を見据える。

「おとなしくしなさい。

あなたはまだ金になっていないのよ」

魔牛は突進を強め柵を飛び越えようとした。

地面が震え周囲の草が渦を巻く。

魔力が渦を巻きまるで生き物のように空気を切り裂く。

私はわずかに足を踏み込む。

「身体強化の加護 ボディーザ・ロック」

ドンッ

私のからだが魔牛の頭に直撃した瞬間青白い光が一瞬だけ爆ぜる。

巨体は地面に沈み込むように止まり角も体も微動だにしない。

暴れん坊だった魔力は一撃で沈黙したかのように静かに蠢くだけになった。

「ふうこれで落ち着いたわね」

私は魔牛の頭をそっと撫でる。

「安心しなさいあなたは金になるまでは絶対に殺さないから」

魔牛は鼻を鳴らし少しずつ呼吸を整えていく。

周囲の魔牛たちもその場に座り込むように静まり返った。

でも、周囲の魔力が形作られ私が止めた魔牛を中心として形作られていく。

その姿はまるで真っ黒な人

いわゆる魔神と言うヤツだとおもう。

顔には大きな角が2本はえてゴツゴツした筋肉を持った大男

漆黒の筋肉と角全身からほとばしる魔力の光が空気を震わせる。

「はあ面倒ごと発生ってことですか」

地面が魔神の足音で小さく震え草は波のように揺れる。

周囲の魔牛たちも恐怖で後ずさる中、私は軽く腕を振って深呼吸

「一撃鉄拳」

拳に込めた全身の力が魔神の胸板に直撃

衝撃は一瞬で周囲の空気を裂き青白い魔力の光が爆ぜる。

魔神の体が宙を舞う。

空を切る音、地面を蹴る衝撃、風が巻き上がり草木が全て後ろへ吹き飛ばされる。

だが私は一点も揺るがず魔神の目を真っ直ぐに見据えた。

魔神は巨大な背中を反転させ地面に叩きつけられる。

衝撃波で草原は裂け泥と草が宙を舞う。

まるで雷神が地面を打ち砕いたかのような光景だった。

「これで終わりよ」

魔神の体がゆっくりと沈み込み青白い魔力も微かに蠢くだけになった。

倒れた魔神を見下ろし私は拳を軽く拭う。

「さあってとどうしましょうか食べるわけにもいきませんしね」

魔神はゆっくりと頭を上げ私を睨み返す。

だがその目には私を主として認めると言う気持ちとそれがいやだという葛藤を感じた。

私は倒れた魔神と魔牛たちを見渡した。

あさひに照らされた草原の中、魔神はゆっくりと起き上がった。

漆黒の巨体は圧倒的な存在感を放ち周囲の魔牛たちは尻尾を巻いて後ずさる。

だが、その目には妙な意思が宿っていた。

「……名前をつけてはくれねえか」

低く響く声が私の胸を微かに震わせる。

「え、名前を……ですか?」

「そうだ。

おまえがこの群れの主なら我にも名が必要であろう」

「へえ…………いいわならセバスチャンでもいいかしら」

「セバスチャン?」

魔神は腕を組むように両手を胸に置きじっと私を見据える。

「ふふなるほどなでは我は今日から召使いといったところか」

一瞬の沈黙の後、魔神の目がわずかに光った。

「よい覚えたぞ今日から我はセバスチャンだ」

魔神の息を漏らすその姿を見ながらセバスチャンが召使いって意味だと知ってたんだと驚いた。

その背中に太陽が反射して青白い魔力が淡く光る。

「さあこれであなたも正式に私の牧場の一員よ」

周囲の魔牛たちもセバスチャンを中心に少しずつ落ち着きを取り戻す。

ユリウスが騒ぎを駆けつけこんなことをいってきた。

「へえなんかすごいことになってたんすね」

そんなどうでもよさげなことばに私はどこか肩透かしのようなものを感じた。
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