事故物件に男2人なにも起こらないはずもなく

山田空

文字の大きさ
14 / 20

14話

しおりを挟む
事故物件から出て数日。
光太と悠真は、少しずつ日常を取り戻していた。

光太はリビングの机に座り、シンタが残した布をそっと手に取る。

「……まだ、シンタの匂いが残ってる気がするな」
悠真が隣でコーヒーを飲みながら微笑む。

「……ああ。毎日、匂い嗅いで癒されてるんだろ?」

光太はムッとしながらも、少し笑う。

「いや、そうじゃなくて……なんか、安心するっていうか」
悠真はその言葉に頷き、手を伸ばして光太の手を握る。

「……安心できるならいいんだよ。俺もだ」

光太はぎゅっと握り返す。
胸の中が、なんだかあたたかくなる。

翌日、二人は事故物件の管理会社へ出向いた。

担当者はまだ、事故の詳細を隠していた。

「えっと……この部屋、まだ調査が必要でして……」
担当者の声に、光太がつい言った。

「もう、俺たちが全部見つけました。
隠された証拠も、全部確認しましたから」

悠真も添える。

「ここで怨念に囚われてた子も、もう解放されました」

担当者は目を丸くしながらも、静かに頷く。

「……そうですか……ありがとうございます」

二人は少し得意げに、互いを見合った。

その夜。
帰り道、光太はふと思い出す。

「……シンタ、どうしてるかな」

悠真もそっと光太の肩に触れる。

「もう、自由だろ。
俺たちがちゃんと見送ったからな」

光太は微笑む。

「そうだな……ありがとう、悠真。
俺、あの家で一番怖かったけど、
一番良かったのも、悠真と一緒だったことかもな」

悠真は少し赤くなって、照れ笑い。

「……俺もだ。光太が一緒でよかった」

二人は手を繋ぎ、
夜風に吹かれながら歩いた。

空には、
シンタの白い光が小さく揺れるような気がした。

「……また会えるかな」
光太が囁く。

悠真はぎゅっと手を握る。

「……いつでも会えるさ。
心の中でな」

光太は頷き、少し照れた笑顔で言った。

「じゃあ、俺たちも日常を楽しもう。
シンタの分もな」

悠真も笑顔で頷く。

「そうだな。事故物件を出た後の、俺たちの日常をな」

二人の背中に、
夜の静かな街の光が優しく降り注ぐ。

事故物件の恐怖も、
もう過去のものだった。

でも、心の片隅には、
シンタの温かい記憶がずっと残っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君のスーツを脱がせたい

BL
 学生兼モデルをしている佐倉蘭とオーダースーツ専門店のテーラー加瀬和也は絶賛お付き合い中。  蘭の誕生日に加瀬はオーダースーツを作ることに。  加瀬のかっこよさにドキドキしてしまう蘭。  仕事、年齢、何もかも違う二人だけとお互いを想い合う二人。その行方は?  佐倉蘭 受け 23歳  加瀬和也 攻め 33歳  原作間  33歳

百合の匂い

青埜澄
BL
大学生の佑は、同じバイト先で働く修と親しくなる。 強引で無邪気で、どこか危うい修に振り回されながらも、佑は次第に自分の世界が修で満たされていくのを感じていた。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

残念でした。悪役令嬢です【BL】

渡辺 佐倉
BL
転生ものBL この世界には前世の記憶を持った人間がたまにいる。 主人公の蒼士もその一人だ。 日々愛を囁いてくる男も同じ前世の記憶があるらしい。 だけど……。 同じ記憶があると言っても蒼士の前世は悪役令嬢だった。 エブリスタにも同じ内容で掲載中です。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

俺達の関係

すずかけあおい
BL
自分本位な攻め×攻めとの関係に悩む受けです。 〔攻め〕紘一(こういち) 〔受け〕郁也(いくや)

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

青龍将軍の新婚生活

蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。 武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。 そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。 「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」 幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。 中華風政略結婚ラブコメ。 ※他のサイトにも投稿しています。

処理中です...