【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山

文字の大きさ
27 / 47

27、~佐藤マユside7~ 解放


 ハロルド王子と宰相が出て行った廊下をマユは睨んでいた。 

 アイツら、私を置いて逃げやがった。

「マジ、信じられねぇ……」

「あ?」

 サイモンが声を上げたときだ、マユは腕からスルリと逃げて、デンっとソファに座った。それでもイライラは納まらず、マユはソファにあったクッションを床へ叩きつけた。

「マジむかつくんだよっ!」

 豹変したマユの態度に、少し怯んだサイモンだがハッと思い出したように、

「おい、さっさと呪いを解けよ!」

 マユの正面に立って剣を向ける。
 
 ソファで足を広げ、マユは爪を噛みながら、貧乏ゆすりをする。

「ったく、信じられぇ。マジむかつく」

 サイモンは呆気にとられた様子で、マユを見下ろしている。

「お前、聖女だよな……」

 マユが「ふんっ!」と横を向くと、サイモンが怒鳴りつけた。

「聞いているんだよ!」

 マユは怖くも何ともなかった。

 こういう男は知っている。たくさん見てきた。
 女を暴力で支配しようとする男だ。マユがもっとも嫌いなタイプだった。

 マユは、視線をあわさない様にテーブルをみる。

 ん? テーブルの視線の先に魔獣がいた。

 なんだよ、その目は、文句あるんのかよ。

「なんで、気持ちの悪い魔獣までいるんだよ。キモいんだよ」

「すみません」

 うつむく魔獣の前にあるテーブルには、飲みかけのコップに入った水があった。
 これって、宰相がさっきまで飲んでいた水じゃね?

「おい、お前が聖女かって聞いているんだよ、返事をしろよ」

 あぁ、ごちゃごちゃうるせーな。
 アイツら、私をおいて逃げやがった。

「あいつら、信じられぇ、普通、逃げるか? しかも婚約者を置いてよ」

「王子とロドリックのことか? いや、そんなことよりも、はやく、カルロスの呪いを解いてやってくれ」

 サイモンに言われ、マユは向かいのソファに寝かされている男に視線を向けた。
 ソファに寝かされたカルロスの顔は黒ずみ、生きているのか死んでいるのかわからない状態だ。

「で、カルロスって、この黒ずんだ男? すでに死んでいるんじゃね」

 マユは言い放った。

 それを聞いたサイモンは慌ててカルロスの傍へ行き膝をついた。そしてカルロスの首の付け根に手を置き、脈を測るようにしながら、息をしているか顔を近づける。

 ホッとした表情になると、顔を上げてマユを睨みつけた。

「お前、不吉なことを言うんじゃねーよ。まだ生きてるだろ。さっさとカルロスの呪いを解けよ」

 横柄な態度のサイモンに、マユは横を向く。

「突然こんな世界に連れてこられて、呪いを解けなんて言われても出来ると思ってんの? 使い方なんて知らねーし、教えてもらってねーし、聖女だから呪いを解けなんて言われて、はいそうですか、って、すぐに出来るわけないだろ」

 思ったことを言ったマユだが、まだ苛立ちが治まらない。

「聖女はなんでも出来る万能なのかよ」

 吐き捨てるようにマユは言った。

 そして、目の前にある宰相の飲みかけのコップの水を持ち、自然と口をつけていた。

 ん、おいしい。
 なんだかイライラが収まっていく。
 
 これって、酒か?
 飲みやすく、後味も香りもフルーティで果実酒のようだ。

 マユはコップの透明の液体をマジマジと見ていた。

 その向こうでは、サイモンが魔獣に聞いていた。

「おい、魔獣、聖女は呪いを解くことができるんだよな」

「すみません。僕もわかりません」

「はぁ? お前、今さらなんだよ!」

「……すみません」

 二人が会話をしているなか、マユは立ち上がり、水差しに新しいグラスに水を入れて飲んだ。

 あれ? こっちは水だ。

「おい、勝手に歩き回るなよ」

 サイモンがマユに言ったその時だ。

 ガシャガシャと廊下から聞こえたかと思ったら、ドカドカと盾をもった兵士の男たちが部屋に入って来た。
 すぐさまサイモンがマユの腕を引っ張った。

「おい、お前ら、聖女がどうなってもいいのか」

 サイモンが背後からマユの首に腕を回し、頸動脈を締め上げるマネをする。

 兵士の隊長らしき人間が静かに言葉を伝える。

「サイモン。今なら、王子がお前たちのやったことの罪を軽くするとおっしゃてくださっている。今すぐ、聖女様を解放しろ」

「なにが罪だ! 今更どうでもいい。こっちは呪いで生きるか死ぬかなんだよ」

 兵士の隊長らしき人が顔をしかめる。

「呪いだと?」

 王子や宰相から呪いのことを聞いていなかったようで、考えあぐねいている様子だ。

「た、助けてください」

 マユは兵士に助けを求めた。

「聖女様、無事に助け出しますから」

「は、笑わせるな。何が無事に助けるだ。おい、聖女、さっさと呪いを解けよ」

 サイモンはマユの首に巻いた腕に力を入れる。

「それとも俺らと一緒にあの世へ行くか」
「ふざけんじゃねぇ……。どうしてスリーパーホールドかけられなきゃいけないんだよ」
「ああ?」
 
 こそこそと二人が会話をしていると、兵士たちがザザザっと、盾を持ちながらサイモンたちを囲んだ。

「お前ら、聖女がどうなってもいいのかって言っているんだ! 部屋から出て行け。お前もさっさとカルロスの呪いを解けよ」

 もうやけっぱちのようにサイモンが怒鳴った。

 できるわけねぇだろ――。

 そのときだ、部屋に眩い光が走った。

 サイモンが顔を背け、同時に手で光を遮るようにした瞬間、マユは逃げ出した。必死で廊下に向かって走った。

 そのタイミングを見計らったように、兵士たちが盾を持ってサイモンと魔獣に向かって突進した。

「聖女様、こちらへ」
 隊長がマユに声をかけ、
「は、はい……」
 マユは廊下へ連れて行かれた。

「もう大丈夫ですよ、聖女様」
「ありがとうございます」

 光が止んだ後、サイモンと魔獣は兵士たちによって床に身体を押さえつけられ、制圧されていた。

「マユ怖かったぁ。あの人たちに、呪いを解けなんて言われて……、ひっく、ひっく」

 マユが嘘泣きしていると、背後から女性の声がした。

「お待ちください。魔獣さんは無理やり連れてこられたのです」

 マユが振り返ると、そこには青い服のメイドがいた。
 なんだこのメイド?

 赤い髪の毛を後ろにくくり、そばかすの顔に、印象的な赤い目をしていた。

 じろじろとマユの視線を受けて、メイドは自己紹介を始めた。

「申し遅れました。わたくし博美様を担当しているメアリーと申します」

 あぁ、そういえば、あのバリキャリと外でピクニックしていたメイドか。

 マユはニコリと笑顔をつくった。

「まぁ、博美さんも心配してくださって、あなたをここへ?」

「いいえ。博美様は魔獣さんを心配されていました」

 ちっ、どいつもこいつも、誰も私のことを心配してないじゃねーか。

「ああ、マユ、めまいがするぅ」

 そう言いながら、マユはふらふらと廊下の壁にもたれかかると、急いで兵士の一人が駆け寄った。

「聖女様、大丈夫ですか。まずは外に出ましょう。ハロルド王子が心配されています」

 はぁ? 王子が心配しているだと? 真っ先にこの部屋から逃げたのは王子なんだよ。
 だが、そんなことをおくびにも出さず、マユは小さく頷いた。

「そうですか、王子様が……。わかりました。でもぉ、立てない」

 そういったマユは腰が抜けたような演技をすると、ひょいと兵士がお姫様だっこをした。

「聖女様、自分が外までお送りしましょう」

「ありがとうございます」

 マユは思いっきり、上目遣いで兵士に御礼を言った。

 そのときだ、また眩い光が部屋から放たれる。

 おいおいおい、何度も閃光弾を使うなよ。
 マユは抱きかかえられたまま、部屋に顔を向けた。

 すると、あのソファに寝かされていた男の足から徐々に光が広がっていく。光が波のように男の全身へ行き渡ると、黒ずみが消えていた。

「カルロス! カルロス!」

 兵士たちの腕を振りほどき、サイモンがソファに横たわるカルロスのそばに寄った。

「兄ちゃん……」

 ソファから身体を起こすカルロスは、血色のいい顔をしていた。

「よかった、カルロス。お前が元に戻って、本当によかった」

 ちっ、なんだよ、治ったじゃねーか。人騒がせな野郎だな。

「今の奇跡は、聖女様のお力で?」

 マユを抱きかかえている兵士が言った。

 ややこしいことに巻き込まれたくないマユは、とりあえず、首をかしげてやり過ごすことにした。

「マユわかんなーい」
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!

未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます! 会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。 一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、 ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。 このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…? 人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、 魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。 聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、 魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。 魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、 冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく… 聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です! 完結まで書き終わってます。 ※他のサイトにも連載してます

【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!

えとう蜜夏
恋愛
 ミレニア王国にある名もなき村の貧しい少女のミリアは酒浸りの両親の代わりに家族や妹の世話を懸命にしていたが、その妹や周囲の子ども達からは蔑まれていた。  ミリアが八歳になり聖女の素質があるかどうかの儀式を受けると聖女見習いに選ばれた。娼館へ売り払おうとする母親から逃れマルクト神殿で聖女見習いとして修業することになり、更に聖女見習いから聖女候補者として王都の大神殿へと推薦された。しかし、王都の大神殿の聖女候補者は貴族令嬢ばかりで、平民のミリアは虐げられることに。  その頃、大神殿へ行商人見習いとしてやってきたテオと知り合い、見習いの新人同士励まし合い仲良くなっていく。  十五歳になるとミリアは次期聖女に選ばれヘンリー王太子と婚約することになった。しかし、ヘンリー王太子は平民のミリアを気に入らず婚約破棄をする機会を伺っていた。  そして、十八歳を迎えたミリアは王太子に婚約破棄と国外追放の命を受けて、全ての柵から解放される。 「これで私は自由だ。今度こそゆっくり眠って美味しいもの食べよう」  テオとずっと一緒にいろんな国に行ってみたいね。  21.11.7~8、ホットランキング・小説・恋愛部門で一位となりました! 皆様のおかげです。ありがとうございました。  ※「小説家になろう」さまにも掲載しております。  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

バナナマヨネーズ
恋愛
香澄静弥は、幼馴染で従姉妹の千歌子に嵌められて、異世界召喚されてすぐに魔の森に捨てられてしまった。しかし、静弥は森に捨てられたことを逆に人生をやり直すチャンスだと考え直した。誰も自分を知らない場所で気ままに生きると決めた静弥は、異世界召喚の際に与えられた力をフル活用して異世界生活を楽しみだした。そんなある日のことだ、魔の森に来訪者がやってきた。それから、静弥の異世界ライフはちょっとだけ騒がしくて、楽しいものへと変わっていくのだった。 全123話 ※小説家になろう様にも掲載しています。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件

バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。 そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。 志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。 そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。 「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」 「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」 「お…重い……」 「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」 「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」 過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。 二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。 全31話