王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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アニエス、プロポーズされる

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……ぬくい。チチチと鳥の鳴く声がする。
あれ?私?目が覚めると上掛けを巻き
付けてその上から、がっちり抱きしめ
られている。いい匂い。        
甘いグレン様の匂い。
グレン様?……寝てる。上掛けの上で何も
掛けずに私を抱きしめ眠るグレン様。

やだ、何で上掛けの上に寝てるの。
寒いでしょ。風邪引いちゃう。

でもここどこ?
あれ?ザルツコードのお屋敷だ。何で?
しかも何でグレン様と一緒に寝てるの?
やだグレン様、手が冷たい。何にも掛け
ないで寝てるから、体が冷えている。
私は上掛けをグレン様に掛けようとして
固まる。私、スゴい……

エロエロ、スケスケの夜着を着ている。

「ぎょっ!ぎゃああ~ん!!」

「ぎょっぎゃああーんってどんな悲鳴だ」

グレン様が起きた。
私は、ぱくぱくと口を動かす。
何か言おうとするけれど驚き過ぎてうまく
言葉が出てこない。
 
「真っ赤になった顔がタコみたいだと思っ
ていたが、口をそう、ぱくぱくしていると
金魚みたいだな」

軟体動物でも魚類でもないから!
いや、何、この状況。
何で私、こんなエロエロ、スケスケな夜着を
着てるの。

私はこれ以上赤くなりようが、ないぐらい
真っ赤になって、涙目で上掛けをすっぽり
頭から被る。

「ああ、その反応。アニエスだなぁ……。
あれはあれでエロくていいけど、やはり
こちらの方がいいな」

なんか、しみじみ言うグレン様はものすごく
眠そうだ。
えっと、デートして、別れを惜しんでいたら
話しがあると四阿に……あ、グレン様。
戦に行くって……あれ?
その後の記憶がない。色々混乱してる。

「あの、私?」

「その顔だと覚えていないな。ま、いい。
元に戻ったのなら」

「覚えてない。元に戻るって……私、
どうしたんですか。
気になるから教えて下さい」

「本当に知りたいか?」

さわやかな、笑顔のグレン様が怖い。
私、一体どうしたの。
何かやらかしたのでしょうか。

「本当に知りたい?」

キラキラの笑顔のグレン様が余計に怖い。
グレン様はギラギラが普通。
ちゃんとギラギラしていて。怖いよ顔が。

「ううぅ、知りたくないです」

「よし」

頭を撫でられる。あ、負けた。押しきられ
ちゃった。
なんだろう。知らない方がいいってこと?
スゴい不安。それに……。

「グレン様、戦に行くというのは夢?」

夢だよね。夢って、言って。

「それは覚えているんだな。夢じゃない。
北の辺境に行く。ごめんな、アニエス。
しばらく側を離れる」

やっぱり、夢じゃないんだ。
グレン様が戦場に行く。
ポロポロと涙がこぼれる。
グレン様が上掛けごと私を抱き寄せる。

「必ず戻ってくる。北の辺境、アニエスの
故郷をそしてこの国を守ってみせる。
だから俺を信じて待っていてくれないか?
無事に帰ると約束する。だから……」

グレン様が一旦、言葉がを切る。
私の両頬を手で包み私としっかりと目線を
合わせる。

「戻って来たら……全て片付いたら俺と。
俺と結婚して欲しい。
アニエス、愛しているよ。
お前が何者であっても俺が何者であっても。
こうして二人で寄り添って生きていきたい。
頼む。返事をくれないか?」

プロポーズ?された?
そんなの、答えは決まっている。

「はい。私も好きです。……離れたくない。
お願いちゃんと無事で帰って来て下さい。
グレン様、グレン様、グレン様!
あなたを……愛しています。もし身分的に
許されのるなら、お嫁にもらって下さい」

グレン様が破顔する。
すごくいい、幸せそうな笑顔。

──この笑顔、きっと一生忘れない。

「だから、何者であってもと、言っている。
そもそも、オーウェンの養女になったのは
俺と身分を合わせるためだしな」

えっ、なんか新事実。なにそれ?
だって養女になったの二年前だし。
あの頃は私、グレン様が怖くて逃げ回って
いたのになんでそんな話になるの?

「生贄には繁殖の機会が与えられる。
俺と魔力が釣り合うと、子を成せると思わ
れたから、オーウェンが身分を作ったんだ」

「それって、魔力が釣り合うからグレン様は
私と結婚するって事?」

それは何だか嫌だ。繁殖目的。養殖されてる
みたいでイヤ。
途端に不安になる。

グレン様は今度は両手で拳骨を作って私の
こめかみをグリグリする。
痛った~!何するの。

「馬鹿リスだな?確かに魔力の釣り合いは
大事だろうがそれだけじゃないだろう。
そもそも俺はお前と出会う前に一度、その
話を断っているんだ。子を成すためだけの
婚姻は嫌だった。
でもお前と出会って、全てが変わったんだ」

それ、本当?私と出会って好きになって
くれたの?魔力の釣り合い云々でなく。
もし、そうならすごく嬉しい。


「ええ~じゃあグレン様、私の一番好きな
所を言ってみてくださいよ!」

ほらほら、ほら。私のどこが好きなの?
ドキドキ。
天井を見ながら考えるグレン様。

「……一番好きな所……あ・し、かな?」

「はい?」

「あの木にぶら下がっていたアニエスの
足を見た時の衝撃は、きっと一生忘れない。
うん。一番好きなのは、足だな」

「馬鹿魔王ですね!誰が体の一番好きな所
を言えといいました!この足フェチの
変態エロ魔王!」

「ああん?俺が足フェチで、変態で
エロ魔王だと国が滅ぶのか?そう言う事を、
いうのはこの口か?」

グレン様が私の口を指で思い切り引っ張る。
ううぅ、私、本当にプロポーズされたんだ
よね?
何で変顔にされているの。もう。

「滅ばないよう、頑張ってくださいね。
……待ってますから。必ず帰ってきて?」

グレン様が顔を寄せて来る。
そのままそっと口付けられる。
二度啄むようなキスをして顔を離した。

「約束する。必ず帰ってくる」

涙が止まらない。
帝国の馬鹿。何で戦争なんて始めるの。

「……泣くな。笑え。俺はお前の笑った顔が
好きなんだ」

もう。そんな事言われたら余計涙が止まら
ないから。
涙を舐められる。グレン様、舐めるの好き
だなぁ。
もう、一度口付けられる。
今度のキスは、深い、深いキスだった。


──プロポーズはベッドの上で。
エロエロ、スケスケな夜着を着て、
上掛けを頭から被ったまま。

……ロマンチックは欠片もないけど。
それなりに心に残った。









                              
                                                                                                                                                
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