商店街の稲荷神社に奉職しました

鳴神楓

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本編

稲荷神社の一日 3

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手早くできるメニューを中心にした夕食が出来上がると、宮司を呼んだ。
お酒は宮司に選んでもらうことにして、僕は料理を居間のコタツに運ぶ。
朝は台所の小さな食卓で食べたが、夜は宮司はいつもコタツでテレビを見ながら飲むと言うので、僕もそちらで一緒に食べることにする。

「中芝さんも飲みますか?」
「いえ、すみませんが、また酔っ払うといけないので、ご飯にしておきます」
「まあ、昨日の今日ですからね。
 そのうちまた付き合ってください」
「はい、少しなら」
「それでは、いただきます」
「いただきます」

宮司は昨日とは違う銘柄の冷や酒に口をつけてから、僕の料理に箸を伸ばした。

「味付け、大丈夫でしょうか。
 僕が作るのとどうしても関西風になってしまうもので」

前の神社の寮にいた時も、時々材料費をもらってみんなの分をまとめて作っていたが、関西出身の人には好評だったが、関東出身の人は「味が薄い」と言って醤油を足していた。
宮司は当然東京生まれだろうからと、コタツには一応醤油を持ってきている。

「いえ、美味しいですよ。
 出汁がきいていますね」
「あ、はい。
 お下がりの昆布と干し椎茸があったので、使わせてもらいました」
「この油揚げのネギ味噌焼きも美味しいですね。
 いつもは焼いて醤油をかけるだけなので、これは一味違っていていいです」

幸いなことに、宮司の口には関西風の味付けも合ったようだ。
食後には「良かったら明日も作ってもらえませんか」と言われたので、僕は快く毎日朝晩のご飯を作ることを約束した。

夕食の後片付けをした後、宮司は書庫専用になっている部屋に案内してくれた。

「わあ、すごいですね」

書庫の中には本棚が何本もあり、普通の本だけではなく古そうな和綴じ本もたくさんあった。

「初代の宮司から代々の宮司の本が全部ここにあるらしいです。
 とは言っても古くても江戸時代のもので、それほど価値の高い本もありませんから、自由に読んでもらって結構ですよ」

宮司がそう言ってくれたので、早速和綴じ本を1冊手に取って開いてみたが、中は当然のようにくずし字だった。

「うーん、これは辞典があれば読めなくはないけど、ちょっと大変そうかな」
「ああ、そうでしょうね。
 まあ、こっちの名所図会めいしょずえなんかは絵を見るだけでも面白いですよ」
「あ、そうですね。
 けどせっかくですから、この機会に少し覚えてみることにします。
 前からちゃんと勉強してみたいとは思っていたので」
「それはいいですね。
 残念ながら、ここにはくずし字の本や辞典はありませんので、今日のところは他の本にするといいですよ」

そう言って宮司は自分が買い揃えた本がある棚に案内してくれたので、その中から面白そうなものを何冊か選び、ありがたく借りることにした。

居間に戻って、BSテレビでやっていた歴史番組を流しながら、2人それぞれに本を読んだ。
時々テレビの内容について軽い議論をしあったりもしつつ、ゆっくりと時間を過ごし、風呂に入って、宮司に「おやすみなさい」とあいさつしてから、自分の部屋に戻って眠りについた。
 
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