7 / 30
お泊まり 3(side:斉藤先生)
しおりを挟む
突然だが俺はゲイだ。
初恋は小学校低学年の頃、覚えたばかりの逆上がりをやってみせたら、「よしたかくん、すごい!」と俺を尊敬の目で見てくれた近所の一個下の男の子だった。
そんな頃から承認欲求強かったのかよと我ながらあきれるしかないのだが、基本的なところは今も変わっていない。
しかも惚れっぽい方なので、褒められたりちやほやされたりすると、すぐにその相手を好きになってしまう方だ。
人気作家になってからは褒められる機会が増えたが、それでも俺の小説を褒める人の大半はSF要素ではない部分を評価しているので、褒められたら笑顔で礼を言いはするが、内心は「褒めて欲しいのはそこじゃないんだよなぁ」と思って惚れるところまではなかなかいかない。
そうやって褒めてくれた人の中で大人の付き合いができそうな相手と遊んだりすることもあったが、本気になることはなかった。
けれども、もし俺の小説のSF要素を考察して評論にまとめてくれたあの書評家や、いつも俺の小説のSF要素のネタ元をブログにあげてくれているあのファンみたいな、濃いSFファンに面と向かって褒められたら絶対に惚れてしまうと思う。
それがわかっているので、作家デビューしてからは彼らや他の熱心なSFファンに会う可能性があるSFファンの集まりには顔を出せなくなってしまっていた。
それなのにだ。
それなのに俺は、うっかりそのことを忘れて佐藤くんとの対談をセッティングしてもらってしまったのだ。
初めて会う佐藤くんは、かなり緊張していたようだが、憧れの作家に会えたという喜びが全身からあふれ出ていて、そんな佐藤くんに俺は完全に一目惚れしてしまった。
佐藤くんは顔立ちは平凡だが小柄で俺好みの体型だった上に、対談で話したら今まで読んできたSF小説の好みも俺と似ていて話も合い、俺は短い間に自分がどんどん佐藤くんのことを好きになっていくのを感じた。
──けどまあ、いくら俺が好きになっても、佐藤くんはノンケだろうからなあ。
俺がこんなよこしまな目で見ているなんて、きっと全然気付いてないだろうし。
それに佐藤くんは名古屋に住んでいて会う機会も少ないだろうから、俺の気持ちもすぐに治まるだろう。
そう考えて早々にこの恋心を諦めることにしたけれども、それでもやっぱり離れがたくて佐藤くんを晩飯に誘ってみたところ、なんと佐藤くんが今夜はネットカフェに泊まると言い出した。
ダメだろ!
こんな子犬みたいな子が東京のネットカフェなんかに泊まったら、絶対に犯罪に巻き込まれるから!!
佐藤くんをそんな危険な目にあわせたくないと思った俺は、後先も考えずに佐藤くんを我が家に誘っていたのだった。
初恋は小学校低学年の頃、覚えたばかりの逆上がりをやってみせたら、「よしたかくん、すごい!」と俺を尊敬の目で見てくれた近所の一個下の男の子だった。
そんな頃から承認欲求強かったのかよと我ながらあきれるしかないのだが、基本的なところは今も変わっていない。
しかも惚れっぽい方なので、褒められたりちやほやされたりすると、すぐにその相手を好きになってしまう方だ。
人気作家になってからは褒められる機会が増えたが、それでも俺の小説を褒める人の大半はSF要素ではない部分を評価しているので、褒められたら笑顔で礼を言いはするが、内心は「褒めて欲しいのはそこじゃないんだよなぁ」と思って惚れるところまではなかなかいかない。
そうやって褒めてくれた人の中で大人の付き合いができそうな相手と遊んだりすることもあったが、本気になることはなかった。
けれども、もし俺の小説のSF要素を考察して評論にまとめてくれたあの書評家や、いつも俺の小説のSF要素のネタ元をブログにあげてくれているあのファンみたいな、濃いSFファンに面と向かって褒められたら絶対に惚れてしまうと思う。
それがわかっているので、作家デビューしてからは彼らや他の熱心なSFファンに会う可能性があるSFファンの集まりには顔を出せなくなってしまっていた。
それなのにだ。
それなのに俺は、うっかりそのことを忘れて佐藤くんとの対談をセッティングしてもらってしまったのだ。
初めて会う佐藤くんは、かなり緊張していたようだが、憧れの作家に会えたという喜びが全身からあふれ出ていて、そんな佐藤くんに俺は完全に一目惚れしてしまった。
佐藤くんは顔立ちは平凡だが小柄で俺好みの体型だった上に、対談で話したら今まで読んできたSF小説の好みも俺と似ていて話も合い、俺は短い間に自分がどんどん佐藤くんのことを好きになっていくのを感じた。
──けどまあ、いくら俺が好きになっても、佐藤くんはノンケだろうからなあ。
俺がこんなよこしまな目で見ているなんて、きっと全然気付いてないだろうし。
それに佐藤くんは名古屋に住んでいて会う機会も少ないだろうから、俺の気持ちもすぐに治まるだろう。
そう考えて早々にこの恋心を諦めることにしたけれども、それでもやっぱり離れがたくて佐藤くんを晩飯に誘ってみたところ、なんと佐藤くんが今夜はネットカフェに泊まると言い出した。
ダメだろ!
こんな子犬みたいな子が東京のネットカフェなんかに泊まったら、絶対に犯罪に巻き込まれるから!!
佐藤くんをそんな危険な目にあわせたくないと思った俺は、後先も考えずに佐藤くんを我が家に誘っていたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる