斉藤先生と佐藤くん

鳴神楓

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質問 1(side:斉藤先生)

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 佐藤くんが用意してくれた朝食は昨夜飲み過ぎた俺を気遣ってくれたらしく、細かめに刻んだ何種類もの野菜が入ったみそ汁と大根おろしが添えられただし巻き玉子だった。
 いつも通り美味しいのだろうとは思うが、この後の佐藤くんの話というのが気になって、味はよくわからなかった。
 食事の後、コーヒーを入れてから再び席についた佐藤くんはついに話を切り出した。

「斉藤先生、夕べ帰ってきてからのこと、どれくらい覚えてますか?」

 佐藤くんの問いかけに、一瞬なにも覚えていないとしらばっくれようかと思ったが、やはりそれは佐藤くんに対してあまりにも不誠実だと思い直し、正直に認めることにする。

「帰ってきた時のことはよく覚えてないけど、ベッドで佐藤くんが水を飲ませてくれた後のことは全部覚えてる。
 ……ごめん。
 いきなりあんなことをしてしまって、本当にすまなかった」

 佐藤くんにしてしまったことを考えると、とにかくもう謝るしかないと思った俺は、佐藤くんに深々と頭を下げる。

「いえ、それはもういいんで、頭を上げてください」
「え、いや、よくはないよね?」

 佐藤くんはそんな寝不足の目になるほどつらい思いをしたのに、もういいの一言ですませるようなことではない。

「いえ、昨日のことはホントもう気にしてないんで」
「しかし……」
「えーっと、じゃあ、申し訳ないと思うんだったら、お詫びの代わりに僕の質問に答えてもらえますか?」
「あ、うん、わかった」

 佐藤くんの要求に、俺はどんな質問が来るのかと身構える。

「それじゃあ、まず最初に。
 斉藤先生はゲイなんですか?」

 佐藤くんのど直球な質問に、俺は思わず言葉につまる。

「あ、その、もし違うんだったらすみません。
 けど先生、夕べは僕が男だってわかっててああいうことしてたみたいだったから、そうなのかなって」
「ああ、うん、そうだよ。
 昔から男しか好きになったことがないし、男としか付き合ったことがない」

 俺が正直に答えると、佐藤くんは「そうですか」と言ってから、ちょっと迷うように視線を泳がせた。

「それじゃあ、あの、夕べ僕のことを、その、『愛しい』って言ったの、あれ本心ですか……?」
「……うん、本心だよ」

 正直にそう答えたら、この同居生活が終わってしまうことはわかっている。
 けれどもやはり、こうなってしまった以上、せめて佐藤くんに対して誠実であるべきだろう。

「対談で初めて会った時に一目惚れしたんだ。
 それからも佐藤くんのことを知れば知るほど、どんどん好きになってしまって……」
「そんな前から……」
「ごめんな。
 男からそんなこと言われても気持ち悪いだけだよな。
 もう俺と同居するのも嫌だろうから、引っ越しの費用とか引っ越し先が見つかるまでの宿泊費とかはこちらで持つから……」
「あの、そうじゃなくて!」

 今後のことを話し始めた俺を、佐藤くんがさえぎる。
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