5 / 36
本編
森の中の家 3
しおりを挟む
「えっと、『閉じ込められる』?
それって、牢屋とか?」
男は首を横に振って先を続ける。
「『大事にされる』けど?
『たまにひどい目にあう』……か。
閉じ込められるけど、扱いは基本的に良くて、でもたまにひどい目にあわされるって感じで合ってる?」
俺が確認すると男は大きくうなずいた。
「うーん、そうなんだ……」
男から教えてもらった異世界人の扱いに、俺は悩む。
大事にしてもらえるとはいえ、たまにひどい目にあわされるというのは具体的にどんなことかはわからないけどやっぱり嫌だし、何より閉じ込められて自由がなくなるというのは困る。
「あ、そうだ。
俺みたいな異世界から来た人で元の世界に戻った人っているんですか?」
異世界のお約束でたぶん無理だろうなと思いつつ聞いてみると、やはり男は首を横に振った。
うーん、困ったな。
元の世界には帰れなくて、街に出たら捕まって閉じ込められると言うのなら、俺が取るべき行動は……。
「あの、お願いなんですけど、俺をここに置いてもらえないでしょうか?
特技とかもないし、できることは少ないと思うけど、がんばって働きますから。
お金もないけど、もし俺の持ち物が売れそうなら生活費代わりにお渡しします。
俺、街に行って捕まって閉じ込められるのは嫌なので、何とかお願いできませんか」
俺が必死になって頼むと、男はあっさりとうなずいてくれた。
「いいんですか?!
ありがとうございます。
あ、そう言えば、俺をかくまったらあなたが罰せられるとかいうことはありませんよね?」
心配する俺に、男は大丈夫だというようにうなずく。
「ならよかったです。
それじゃあ、これからよろしくお願いします」
俺がぺこりと頭を下げると、男も同じように頭を下げてから、自分の口を指差した。
「えーと、『名前』?
あ、俺の名前ね。
和生、谷村和生です。
あなたは?」
俺がそう聞くと男は首を横に振って、俺に向かってどうぞと言うように手を差し出した。
「え、『いいえ』ってことは、名前がないの?
俺がつけていいってこと?」
俺の言葉に男は大きくうなずいて、まるで俺がつける名前を楽しみにしてるみたいにニコニコしながら俺を見ている。
「えーっと、じゃあ、テディとか?
あ、待って、やっぱ今の無しで!」
熊みたいな大男なのに優しくて、ちょっと可愛らしいところもある男に、思わず世界的に有名なクマのぬいぐるみの名前をつけかけたけれども、慌てて取り消す。
こちらの世界の人があのぬいぐるみのことを知っているとは思えないけれど、やっぱりいくら何でもクマのぬいぐるみ扱いは失礼だろう。
俺はそう思ったのだけれど、男の方は違ったらしい。
男は首を横に振ると、自分を指差して『テディ』という口の動きを繰り返した。
「え、もしかしてテディっていうの気に入ったんですか?」
俺が問い返すと、男はニコニコしながら何度もうなずいた。
「うーん、気に入ったんだったらいいか。
じゃあ、あなたのことはテディって呼びますね」
そんなふうにして、俺とテディの森での生活は始まった。
それって、牢屋とか?」
男は首を横に振って先を続ける。
「『大事にされる』けど?
『たまにひどい目にあう』……か。
閉じ込められるけど、扱いは基本的に良くて、でもたまにひどい目にあわされるって感じで合ってる?」
俺が確認すると男は大きくうなずいた。
「うーん、そうなんだ……」
男から教えてもらった異世界人の扱いに、俺は悩む。
大事にしてもらえるとはいえ、たまにひどい目にあわされるというのは具体的にどんなことかはわからないけどやっぱり嫌だし、何より閉じ込められて自由がなくなるというのは困る。
「あ、そうだ。
俺みたいな異世界から来た人で元の世界に戻った人っているんですか?」
異世界のお約束でたぶん無理だろうなと思いつつ聞いてみると、やはり男は首を横に振った。
うーん、困ったな。
元の世界には帰れなくて、街に出たら捕まって閉じ込められると言うのなら、俺が取るべき行動は……。
「あの、お願いなんですけど、俺をここに置いてもらえないでしょうか?
特技とかもないし、できることは少ないと思うけど、がんばって働きますから。
お金もないけど、もし俺の持ち物が売れそうなら生活費代わりにお渡しします。
俺、街に行って捕まって閉じ込められるのは嫌なので、何とかお願いできませんか」
俺が必死になって頼むと、男はあっさりとうなずいてくれた。
「いいんですか?!
ありがとうございます。
あ、そう言えば、俺をかくまったらあなたが罰せられるとかいうことはありませんよね?」
心配する俺に、男は大丈夫だというようにうなずく。
「ならよかったです。
それじゃあ、これからよろしくお願いします」
俺がぺこりと頭を下げると、男も同じように頭を下げてから、自分の口を指差した。
「えーと、『名前』?
あ、俺の名前ね。
和生、谷村和生です。
あなたは?」
俺がそう聞くと男は首を横に振って、俺に向かってどうぞと言うように手を差し出した。
「え、『いいえ』ってことは、名前がないの?
俺がつけていいってこと?」
俺の言葉に男は大きくうなずいて、まるで俺がつける名前を楽しみにしてるみたいにニコニコしながら俺を見ている。
「えーっと、じゃあ、テディとか?
あ、待って、やっぱ今の無しで!」
熊みたいな大男なのに優しくて、ちょっと可愛らしいところもある男に、思わず世界的に有名なクマのぬいぐるみの名前をつけかけたけれども、慌てて取り消す。
こちらの世界の人があのぬいぐるみのことを知っているとは思えないけれど、やっぱりいくら何でもクマのぬいぐるみ扱いは失礼だろう。
俺はそう思ったのだけれど、男の方は違ったらしい。
男は首を横に振ると、自分を指差して『テディ』という口の動きを繰り返した。
「え、もしかしてテディっていうの気に入ったんですか?」
俺が問い返すと、男はニコニコしながら何度もうなずいた。
「うーん、気に入ったんだったらいいか。
じゃあ、あなたのことはテディって呼びますね」
そんなふうにして、俺とテディの森での生活は始まった。
21
あなたにおすすめの小説
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
異世界唯一のオメガ、恋を選ぶまでの90日
秋月真鳥
BL
――異世界に「神子」として召喚されたのは、28歳の元高校球児、瀬尾夏輝。
男性でありながらオメガである彼は、オメガの存在すら知られていない異世界において、唯一無二の「神に選ばれし存在」として迎えられる。
番(つがい)を持たず、抑制剤もないまま、夏輝は神殿で生活を共にする五人のアルファ候補たちの中から、90日以内に「番」となる相手を選ばなければならない。
だがその日々は決して穏やかではなく、隣国の陰謀や偽の神子の襲撃、そして己の体に起きる変化――“ヒート”と呼ばれる本能の波に翻弄されていく。
無口で寡黙な軍人アルファ・ファウスト。
年下でまっすぐな王太子・ジェラルド。
優しく理知的な年上宰相・オルランド。
彼らが見せる愛情と執着に、心を揺らしながら、夏輝は己の運命と向き合っていく。
――90日後、夏輝が選ぶのは、誰の「番」としての未来か。
神の奇跡と恋が交錯する異世界で、運命の愛が始まる――。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
【完結】顔だけと言われた騎士は大成を誓う
凪瀬夜霧
BL
「顔だけだ」と笑われても、俺は本気で騎士になりたかった。
傷だらけの努力の末にたどり着いた第三騎士団。
そこで出会った団長・ルークは、初めて“顔以外の俺”を見てくれた人だった。
不器用に愛を拒む騎士と、そんな彼を優しく包む団長。
甘くてまっすぐな、異世界騎士BLファンタジー。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる