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本編
テディとの暮らし 3
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森の中だからということもあるだろうけれど、この世界の文明の進み具合は、なんとなくちぐはぐなところがある。
鉛筆や紙みたいに日本で使っていたのに近い便利な道具もあるけれど、調理がかまどだったり井戸がつるべ式だったりと遅れている部分も多い。
テディに聞いたら井戸は手押しポンプがあるらしいけれども、値段がすごく高くてあまり普及していないそうだ。
文明がちぐはぐな理由は、僕みたいな異世界人が何人もいるから知識は手に入るけど、石油や石炭などのエネルギーが少ないから、その知識が活かしきれてないからなんじゃないかと思う。
もしかしたら異世界人の中には水力や風力発電の知識を持ってる人がいたかもしれないけれども、それにしたって電気がまったくない世界で発電設備を作るのは相当難しいだろう。
ファンタジー世界で電気に代わるエネルギーとしてありがちなものに魔法があるが、この世界にも一応魔法はあるらしい。
テディによれば、この世界の魔法は誰でも使えるものではなく、ほんの一握りしかいない魔術師だけが使えるもので、さらに魔法の道具というのもなく、魔法自体あまり一般的なものではないらしい。
そういうことなら、きっと街まで行っても魔法の恩恵にあずかっているのはごく少数の金持ちだけで、大半の人はテディと変わらないようなちょっと不便な生活をしているのだろう。
不便ではあるけれども、俺自身はこの世界での生活が──より正確にいえばテディと2人だけの森での生活が気に入っている。
それはやはり、森の中では人の声を聞かなくてもすむというところが大きい。
森の中で聞こえるのは、葉ずれの音や鳥や獣の声、俺とテディが立てる物音、それに俺自身がテディに話しかける時の声くらいだ。
人の声が怖い俺にとって、聞こえてくる声が自分の声だけという今の状況はとても気が楽で、日本で人の声が聞こえてくるたびにビクビクしていたあの頃に比べると、精神的にも安定しているように思う。
今では、テディの言いたいことが上手く理解できなくてもどかしい時なんかに「テディもしゃべれたらいいのに」と思ってしまうこともあるくらいだ。
自分が誰かにしゃべって欲しいと思えるようになるなんて考えてもみなかったから、自分でも驚いているけれども、そう思えるようになったのはテディの性格によるところも思う。
テディは穏やかで優しくて、森での暮らしに慣れてなくて色んなことが上手く出来ない俺にも怒ったりせずに根気強く教えてくれるような、本当にいいやつなのだ。
着替え一つ持たずにこの世界に来た俺のために、テディは街で着替えや生活に必要なものをあれこれ買ってきてくれたけど、俺がお礼に渡そうとした異世界の持ち物は、俺にとって大切なものだろうからと受け取ってくれなかった。
テディみたいないいやつなら、きっとしゃべることができても両親やクラスメイトみたいなひどいことを言ったりしないだろうから、安心して「しゃべれたらいいのに」と思えるのだと思う。
テディにはお世話になりっぱなしなので、出来るだけ恩返しがしたくて毎日彼の手伝いをしているけれども、まだまだ全然恩返しになっていない。
なかなかテディの役に立てなくて申し訳ないけれど、テディ自身は別に俺のことを迷惑には思っていないようで、むしろ今まで1人でやっていた仕事を俺と2人でやったり、俺の一方的な話を聞いたりすることを結構楽しんでくれているようだ。
そんな時のテディのどことなく嬉しそうな表情を見ると、俺はこの世界で初めて出会ったのがテディで、本当に良かったとおもうのだった。
鉛筆や紙みたいに日本で使っていたのに近い便利な道具もあるけれど、調理がかまどだったり井戸がつるべ式だったりと遅れている部分も多い。
テディに聞いたら井戸は手押しポンプがあるらしいけれども、値段がすごく高くてあまり普及していないそうだ。
文明がちぐはぐな理由は、僕みたいな異世界人が何人もいるから知識は手に入るけど、石油や石炭などのエネルギーが少ないから、その知識が活かしきれてないからなんじゃないかと思う。
もしかしたら異世界人の中には水力や風力発電の知識を持ってる人がいたかもしれないけれども、それにしたって電気がまったくない世界で発電設備を作るのは相当難しいだろう。
ファンタジー世界で電気に代わるエネルギーとしてありがちなものに魔法があるが、この世界にも一応魔法はあるらしい。
テディによれば、この世界の魔法は誰でも使えるものではなく、ほんの一握りしかいない魔術師だけが使えるもので、さらに魔法の道具というのもなく、魔法自体あまり一般的なものではないらしい。
そういうことなら、きっと街まで行っても魔法の恩恵にあずかっているのはごく少数の金持ちだけで、大半の人はテディと変わらないようなちょっと不便な生活をしているのだろう。
不便ではあるけれども、俺自身はこの世界での生活が──より正確にいえばテディと2人だけの森での生活が気に入っている。
それはやはり、森の中では人の声を聞かなくてもすむというところが大きい。
森の中で聞こえるのは、葉ずれの音や鳥や獣の声、俺とテディが立てる物音、それに俺自身がテディに話しかける時の声くらいだ。
人の声が怖い俺にとって、聞こえてくる声が自分の声だけという今の状況はとても気が楽で、日本で人の声が聞こえてくるたびにビクビクしていたあの頃に比べると、精神的にも安定しているように思う。
今では、テディの言いたいことが上手く理解できなくてもどかしい時なんかに「テディもしゃべれたらいいのに」と思ってしまうこともあるくらいだ。
自分が誰かにしゃべって欲しいと思えるようになるなんて考えてもみなかったから、自分でも驚いているけれども、そう思えるようになったのはテディの性格によるところも思う。
テディは穏やかで優しくて、森での暮らしに慣れてなくて色んなことが上手く出来ない俺にも怒ったりせずに根気強く教えてくれるような、本当にいいやつなのだ。
着替え一つ持たずにこの世界に来た俺のために、テディは街で着替えや生活に必要なものをあれこれ買ってきてくれたけど、俺がお礼に渡そうとした異世界の持ち物は、俺にとって大切なものだろうからと受け取ってくれなかった。
テディみたいないいやつなら、きっとしゃべることができても両親やクラスメイトみたいなひどいことを言ったりしないだろうから、安心して「しゃべれたらいいのに」と思えるのだと思う。
テディにはお世話になりっぱなしなので、出来るだけ恩返しがしたくて毎日彼の手伝いをしているけれども、まだまだ全然恩返しになっていない。
なかなかテディの役に立てなくて申し訳ないけれど、テディ自身は別に俺のことを迷惑には思っていないようで、むしろ今まで1人でやっていた仕事を俺と2人でやったり、俺の一方的な話を聞いたりすることを結構楽しんでくれているようだ。
そんな時のテディのどことなく嬉しそうな表情を見ると、俺はこの世界で初めて出会ったのがテディで、本当に良かったとおもうのだった。
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