脅迫者は優しいご主人様

鳴神楓

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本編

11 尾行 1☆

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男から次の呼び出しの連絡があった。
いつも通り前日に送られてきたメッセージに「行ける」と返信した後、俺はカバンの中に尾行する時の変装用の着替えを入れた。

「しかし、これ、明日も剃られるのかな……」

この前、男に剃られた下の毛は、少し伸びてきたせいで、ふとした瞬間にチクチクして気になってしまうし、そのたびに剃られた時のことを思い出して恥ずかしさがよみがえって来るので困っている。

「これもあいつの職場を調べて、あいつと取り引きするまでの辛抱だから……」

尾行がうまく行けば、男のプレイに付き合うのはあと一回で済むはずだから、毛を剃られるのも次で終わりにできるはずだ。

「明日は気合い入れて尾行しないと」

明日の尾行を成功させるためにも、俺は今夜はさっさと寝ることにした。

————————————————

翌日、約束の時間よりもだいぶ前に、スマホに男からメッセージが来た。

『今、どこにいますか?』
『まだ家だけど』
『それはよかった。
 それでは今日は、今からプレイを始めましょう』
「はあ⁈」

男からのメッセージを読んだ俺は、思わず声をあげてしまう。
俺の困惑などよそに、男からは次のメッセージが入る。

『みちる、先日私がきれいにしてあげたところは、今どうなっていますか』
『毛が少し生えかけています』

こんなメッセージのやり取り、終わったら速攻履歴を消してやると心に誓いながら、俺は男に返信する。

『それはいけませんね。
 それでは今から、自分で先日のようにきれいに剃りなさい』
「げっ、自分で剃るのかよ!」

てっきりまた男に剃られるものだとばっかり思っていたのに、こんなことを命令されるとは予想外だ。

『みちる、返事は?』
「あっ、ヤバい」

メッセージを既読にしたまま、しばらく放っておいたせいで、男から再度メッセージが入ったので、慌てて『はい、わかりました。ご主人様』と返信する。

『よろしい。
 終わったらまた、報告のメッセージを入れるように』
『わかりました。
 シャワーを使うついでに、準備もしたいので、少し時間がかかってもいいですか?』

準備も一緒にすることを黙っていて、後で報告する時に遅くなったことを叱られるのも嫌なので、いやいやながら許可を求めるメッセージを送ると、男から『まあ、構わないでしょう』と返信があった。

着替えを用意し、心を無にしてトイレと風呂でいつもの準備を終えた俺は、洗面所から安全カミソリを取ってきた。

「……よし、やるぞ」

俺はそうつぶやくと、ボディソープを泡立てて下の毛に塗りつけ、カミソリを当てた。

こんなもの、さっきやった準備と同じで、単なる作業だから。

そう自分に言い聞かせながら、俺は下の毛を剃っていく。
無心に無心にと思っているのに、そうしているとどうしても、前に男に毛を剃られた時のことを思い出してしまう。

あの時の男も、今の俺のように単なる作業だというように淡々と俺の毛を剃っていた。
それなのに俺は、男に与えられるほんの少しの刺激でコレを立たせてしまった。
そうしてあいつに、どうしてペニスを勃起させているのかと問い詰められ、答えるとご褒美だと言って、あいつの手でコレをこすられて……。

そうやって、連鎖的にあの時の快感を思い出してしまい、気付くと俺のモノは半勃ちになっていた。

「だから、思い出すなって!」

俺は大きく首を振って、頭の中からあの時のことを追い出そうとする。

「ああ、もう。なんか他の難しいことでも考えて……」

俺はあの時のことを考えようにするために、数学の公式を片っ端から思い出しながら、下の毛を剃っていった。

————————————————

若干ぐったりしつつ風呂を出て、毛を剃り終えたことを報告するメッセージを送ると、ホテルに行くように指示されたので、準備をして家を出た。
ホテルに着くと、男はすでにシャワーを終えた後のようで、バスローブ姿で待っていた。

「俺も風呂行ってくるから」
「みちる?」

俺を呼び止めた男の口調はとがめるようなもので、完全にプレイ中のものだった。
まだ来たばかりなのにどうして、と思ったが、そういえばスマホで受け取ったメッセージに『今からプレイを始めましょう』とあったのを思い出す。

えっ、まさか、あれからずっとプレイが続いてるってことなのか?

そう気付いた俺が、あわてて「申し訳ありません」と謝ると、男は鷹揚にうなづいた。

「お風呂はいいですから、こちらに来て服を脱ぎなさい。
 みちるが自分できちんときれいに出来たかどうか、確かめてあげます」
「はい、ご主人様」

これ以上失敗できない俺は、すぐに返事をすると、男の前に行って服を脱いだ。
全裸になって男の目の前に気をつけの姿勢で立つと、男は俺の股間に顔を近づけて、きちんと剃れているか確認し始めた。

上品な顔立ちの男が、俺の股間を真剣な顔で見ている様子は、馬鹿げているとしか言いようがない。
しかし、そんな馬鹿げた状況なのに、俺のモノは少しずつ反応し始めている。
やがて男が隠れているところを確認するために、俺のモノやその下の袋の部分を持ち上げ始めると、俺のモノは完全にそうとわかるくらい反応してしまった。

「ああ、またペニスが勃起していますね。
 もしかして、家で自分で剃っている時にも、こうやって勃起していたのですか」
「……っ!
 …はい、少しだけ。
 ご主人様に剃っていただいた時のことを思い出してしまって……」
「そうでしたか。
 それで、君はその勃起したペニスをどうしましたか?」
「いえ、何もしていません。
 あの時のことを考えないようにしようと思って、数学の公式を思い出していたら、そのまま元に戻ったので」

俺がそう答えると、男は眉間にしわを寄せた渋い顔になって立ち上がった。

「それはいけませんね。
 みちる、前に教えたでしょう?
 プレイの最中は、快感もすらも君の自由になるものではないと。
 たとえ目の前に私がいなかったとしても、私のことを思い出してペニスを勃起してしまったのなら、君はそれを自分勝手に抑えようとするのではなく、私にその状況を報告して指示を仰がなければならなかった」
「あ……」

確かに、男の言う通りだった。
俺はメッセージでプレイが始まっていることを知らされていたのに、男がその場にいなかったこともあって、プレイ中だと意識していなかったのだ。

「申し訳ありません……」

俺が小さくなって謝ると、男は「まあ、今回は仕方ないでしょう」と言った。

「確かに君は間違えましたが、それは私がまだ君に色々なことを教えていないせいでもありますからね」

あっさりと許してもらえて俺がほっとしていると、男は笑みを浮かべながらこう言った。

「それではいい機会ですから、きちんと教えることにしましょう。
 そうですね、まずは自分の状況を、きちんと私に報告できるようになるところから始めましょうか」
 
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