13 / 21
本編
side:理一(12、回想)
しおりを挟む
マンションのエントランスに入ると、管理人室のドアが開いた。
「平岡さん、かわいい男の子がつけてきてるみたいなんですけど、大丈夫ですか?」
「ええ、わかってますので大丈夫ですよ。
ありがとうございます」
「それならいいんですけど。
あ、もしかしてあの子、平岡さんのペットなんですか?」
「いえ。
残念ながらまだ違います。
出来れば飼いたいとは思っているのですけれどね」
普通の人が耳にすればギョッとするような会話だが、このマンションの中ではごく日常的な会話だ。
なにしろこのマンションは、管理人を含め住民全員がSかMという特殊なマンションなのだから。
住民の中にはワケありの人間もいるので、セキュリティはしっかりしていて、監視カメラも広範囲を映しているため、管理人はみちるが私のあとをつけてきているのに気付いて声をかけてくれたらしい。
「ああ、そうだ。
もしかしたら、あの子がまた来るかもしれませんが、申し訳ありませんが、他の方に迷惑をかけない限りは放っておいてもらえますか?」
「わかりました。
じゃあ、もし見かけたら平岡さんに連絡入れますね」
「ええ、そうしていただけると助かります」
そうして管理人と「おやすみなさい」と挨拶を交わし、エレベーターに乗って自分の部屋に行く。
みちるが私のあとをつけてきているのには、ホテルを出て、しばらくしてから気が付いた。
服を着替えて帽子をかぶっていたが、いくら夏休みでもあんなオフィス街に高校生がいたら、目立つのが当たり前だ。
それにそもそも、あれだけ人目をひく容姿をしているみちるは、尾行には向いていない。
どうやら、みちる本人には自分の容姿が整っているという自覚はあまりないようだけれど。
————————————————
全ての始まりとなったあの夜、なじみのゲイバーに飲みに行く途中で、高校生らしき少年を見かけた。
高校生が夏休みの開放感で大人の世界を体験しに来たのかと思ったが、それにしては妙に思い詰めた顔をしているのが気になった。
その子のあとをつけてみると、露出趣味と覗き趣味のゲイが集まる公園に入って行き、物かげからセックスをする男たちを覗き始めた。
やがてその子がその場を離れ、泣きそうな顔になりながら前かがみでトイレに向かう姿を見た私は、この子はまだ自分がゲイであることを受け入れられないでいるのではないかと気付いた。
そしてその子が運よく覗き穴のあるトイレの個室に入り、動画を撮っている私には気付かずに自慰を始め、達した直後につぶやいた「くそっ」という、ゲイである自分に対する嫌悪感のこもった声を聞いた時、私は彼を罠にかけることを決めた。
これまでにも、SMの世界に足を踏み入れたばかりのMを調教したことは何度かある。
しかし、さすがにMの自覚がないどころか、自分がゲイであることすら認められないでいる男を調教したことはない。
この子がMかどうかはわからないが、大抵の人間は多かれ少なかれMの要素を持っているものだから、試してみる価値はあるだろう。
この子を自分の手で一から育て上げて、立派なMに調教することを想像すると、楽しみでぞくぞくする。
そうして私は、撮ったばかりの動画を再生し、トイレから彼が出て来るのを待った。
————————————————
実際に接してみると、幸いなことにみちるにはMの素質があった。
とはいえ、一般的にMという言葉でイメージされる、痛みや苦痛を快感ととらえられるタイプのMではない。
ただ1人の飼い主に可愛がられ、かまってもらえることに喜びを感じるタイプのMだ。
飼い主に愛されるためなら飼い主の言うことには喜んで従うし、飼い主が望むなら苦痛も快感にすり替えることができるだろう。
今はまだ、そこまでの段階には到達してないが、このまま少しずつ調教していけば、きっとみちるはそんなMに成長するだろう。
私には最初、みちるを立派なMに調教したいという欲求しかなかった。
調教した後はいつものように、みちる本人の意思を聞いて相性のいい主人(マスター)を見つけてやるなり、決まったマスターを持つ気がないなら、一般的にいうセフレのようにたまに会ってプレイを楽しめればいいと思っていた。
けれども、実際にみちるとのプレイを重ねていくうちに、私はみちるのことがだんだんかわいくて仕方なくなってきて、みちるのことを一生飼いたいと思うようになってきた。
どうやらみちるは両親にあまり構われていないらしく、そのせいか、私が褒めたり頭を撫でてやったりするのをひどく喜んだ。
みちるは今時の高校生らしく生意気な口は叩くが、本当のところは真面目で素直ないい子だ。
そんなみちるが私に少しずつ懐いてくれるのはかわいくて、このまま私好みのMに育てて一生側に置きたいと思うようになったのも無理のないことだと思う。
普通の人からしたら、私のこういう考え方は異常だと思うだろう。
けれども実のところ、これは一般的な恋愛感情と大して違いはないのだ。
愛した男性のことを可愛がってかまい倒して、私のことしか考えられないようになるまでどろどろに甘やかして、そうして彼も私のことを愛するようになってくれたら、互いに終生の愛を誓い合いたいと願う。
ほら、普通の恋愛と何も変わらない。
ただ、その方法がSM独特のものだというだけで。
まだ高校生のみちるのことを思えば、こんな特殊な恋愛をさせるのは可哀想なのかもしれない。
けれども私はその分、みちるのことを普通の男と恋愛するよりも何倍も幸せにするつもりだ。
それもこれも、みちるが私のことをただの脅迫者としか見ていないなら意味のない話だが、プレイの最中のみちるの様子を見ていると、自覚はないかもしれないが、みちるも私のことを少なからず想ってくれているように思う。
こうして今日、私のあとをつけてきたのも、深層心理ではきっと私のことをもっと知りたいという気持ちがあるからだろう。
おそらく尾行のきっかけは、私が前回プレイ中に仕事の電話を受けたことだろうから、きっとみちるは近いうちに、私の職場を調べるためにまた尾行しに来るだろう。
私の職場を知ったみちるがどうするつもりなのか、今から楽しみだった。
「平岡さん、かわいい男の子がつけてきてるみたいなんですけど、大丈夫ですか?」
「ええ、わかってますので大丈夫ですよ。
ありがとうございます」
「それならいいんですけど。
あ、もしかしてあの子、平岡さんのペットなんですか?」
「いえ。
残念ながらまだ違います。
出来れば飼いたいとは思っているのですけれどね」
普通の人が耳にすればギョッとするような会話だが、このマンションの中ではごく日常的な会話だ。
なにしろこのマンションは、管理人を含め住民全員がSかMという特殊なマンションなのだから。
住民の中にはワケありの人間もいるので、セキュリティはしっかりしていて、監視カメラも広範囲を映しているため、管理人はみちるが私のあとをつけてきているのに気付いて声をかけてくれたらしい。
「ああ、そうだ。
もしかしたら、あの子がまた来るかもしれませんが、申し訳ありませんが、他の方に迷惑をかけない限りは放っておいてもらえますか?」
「わかりました。
じゃあ、もし見かけたら平岡さんに連絡入れますね」
「ええ、そうしていただけると助かります」
そうして管理人と「おやすみなさい」と挨拶を交わし、エレベーターに乗って自分の部屋に行く。
みちるが私のあとをつけてきているのには、ホテルを出て、しばらくしてから気が付いた。
服を着替えて帽子をかぶっていたが、いくら夏休みでもあんなオフィス街に高校生がいたら、目立つのが当たり前だ。
それにそもそも、あれだけ人目をひく容姿をしているみちるは、尾行には向いていない。
どうやら、みちる本人には自分の容姿が整っているという自覚はあまりないようだけれど。
————————————————
全ての始まりとなったあの夜、なじみのゲイバーに飲みに行く途中で、高校生らしき少年を見かけた。
高校生が夏休みの開放感で大人の世界を体験しに来たのかと思ったが、それにしては妙に思い詰めた顔をしているのが気になった。
その子のあとをつけてみると、露出趣味と覗き趣味のゲイが集まる公園に入って行き、物かげからセックスをする男たちを覗き始めた。
やがてその子がその場を離れ、泣きそうな顔になりながら前かがみでトイレに向かう姿を見た私は、この子はまだ自分がゲイであることを受け入れられないでいるのではないかと気付いた。
そしてその子が運よく覗き穴のあるトイレの個室に入り、動画を撮っている私には気付かずに自慰を始め、達した直後につぶやいた「くそっ」という、ゲイである自分に対する嫌悪感のこもった声を聞いた時、私は彼を罠にかけることを決めた。
これまでにも、SMの世界に足を踏み入れたばかりのMを調教したことは何度かある。
しかし、さすがにMの自覚がないどころか、自分がゲイであることすら認められないでいる男を調教したことはない。
この子がMかどうかはわからないが、大抵の人間は多かれ少なかれMの要素を持っているものだから、試してみる価値はあるだろう。
この子を自分の手で一から育て上げて、立派なMに調教することを想像すると、楽しみでぞくぞくする。
そうして私は、撮ったばかりの動画を再生し、トイレから彼が出て来るのを待った。
————————————————
実際に接してみると、幸いなことにみちるにはMの素質があった。
とはいえ、一般的にMという言葉でイメージされる、痛みや苦痛を快感ととらえられるタイプのMではない。
ただ1人の飼い主に可愛がられ、かまってもらえることに喜びを感じるタイプのMだ。
飼い主に愛されるためなら飼い主の言うことには喜んで従うし、飼い主が望むなら苦痛も快感にすり替えることができるだろう。
今はまだ、そこまでの段階には到達してないが、このまま少しずつ調教していけば、きっとみちるはそんなMに成長するだろう。
私には最初、みちるを立派なMに調教したいという欲求しかなかった。
調教した後はいつものように、みちる本人の意思を聞いて相性のいい主人(マスター)を見つけてやるなり、決まったマスターを持つ気がないなら、一般的にいうセフレのようにたまに会ってプレイを楽しめればいいと思っていた。
けれども、実際にみちるとのプレイを重ねていくうちに、私はみちるのことがだんだんかわいくて仕方なくなってきて、みちるのことを一生飼いたいと思うようになってきた。
どうやらみちるは両親にあまり構われていないらしく、そのせいか、私が褒めたり頭を撫でてやったりするのをひどく喜んだ。
みちるは今時の高校生らしく生意気な口は叩くが、本当のところは真面目で素直ないい子だ。
そんなみちるが私に少しずつ懐いてくれるのはかわいくて、このまま私好みのMに育てて一生側に置きたいと思うようになったのも無理のないことだと思う。
普通の人からしたら、私のこういう考え方は異常だと思うだろう。
けれども実のところ、これは一般的な恋愛感情と大して違いはないのだ。
愛した男性のことを可愛がってかまい倒して、私のことしか考えられないようになるまでどろどろに甘やかして、そうして彼も私のことを愛するようになってくれたら、互いに終生の愛を誓い合いたいと願う。
ほら、普通の恋愛と何も変わらない。
ただ、その方法がSM独特のものだというだけで。
まだ高校生のみちるのことを思えば、こんな特殊な恋愛をさせるのは可哀想なのかもしれない。
けれども私はその分、みちるのことを普通の男と恋愛するよりも何倍も幸せにするつもりだ。
それもこれも、みちるが私のことをただの脅迫者としか見ていないなら意味のない話だが、プレイの最中のみちるの様子を見ていると、自覚はないかもしれないが、みちるも私のことを少なからず想ってくれているように思う。
こうして今日、私のあとをつけてきたのも、深層心理ではきっと私のことをもっと知りたいという気持ちがあるからだろう。
おそらく尾行のきっかけは、私が前回プレイ中に仕事の電話を受けたことだろうから、きっとみちるは近いうちに、私の職場を調べるためにまた尾行しに来るだろう。
私の職場を知ったみちるがどうするつもりなのか、今から楽しみだった。
0
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる