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一章
想定外の帰還
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おい、残滓だぜ
あいつ、冒険者辞めて田舎に帰ったんじゃねえのか
あの褐色の女は誰だ?
残滓のクセに、可愛い子連れてやがんなぁ
僕が街に戻った時、聞こえてきたのはそんな無遠慮なヒソヒソ声。中には敢えて聞こえるように話している者もいる。
「いいかいノワール、何があっても僕が指示するまでは手を出しちゃいけないよ?」
「はい、ご主人様」
この先僕は嫌がらせを受けるだろう。ノワールのような美少女を連れているのだから尚更だ。でも、ここで彼女が爆発してしまっては元も子もない。闇属性なんて世界に知られていない力を安易に使う訳には行かないからね。
とりあえず僕は今まで住んでいた家へと戻り、影の中からそこそこいい金額になりそうな素材をいくつかと、比較的弱い魔物や獣の素材を多めに取り出した。冒険者という枠組みの中では僕の信用度は低い。そんな僕が討伐しても不自然じゃない程度でね。
「これをギルドで換金したら、ノワールの服を買おうか」
今のノワールは獣の皮を剥いだものを纏っているだけで、非常に危うい。いや、でも僕の前で人型になった時は素っ裸だったんだからまだマシだけど。どうも精霊にはその辺の羞恥心というものが欠落しているらしい。
「精霊には雌雄の区別がありませんので、そういう感覚は分かりません」
……だそうだ。
ともあれ、僕は目的を果たす為にもう少しだけこの街に留まる必要ができた。その為には、残滓と呼ばれている僕一人でいるよりは、ノワールを冒険者にしてパーティを組んでいた方が色々と都合がいい。なので、彼女を連れて冒険者ギルドへと向かった。
僕とノワールがギルドへ入ると、室内全体がどよめいた。勿論悪い意味で。
恐らく僕はこの数日間で、田舎に帰ったか、あるいは消息不明になっているという事になってるんじゃないかな。
だから僕がノワールのような美少女を連れて戻ってきた事は、色んな人間にとって想定外だったはず。僕を追い出したかったヤツには特にね。
「ショーンさん! ご無事だったんですね!」
その中で唯一、僕を歓迎してくれる声が聞こえてくる。受付嬢のパトラさんだ。
「急にいなくなったと聞いて……」
明らかに安堵した表情でパトラさんがそう話す。
どうやら僕が急にいなくなった事で田舎に僕が帰っているか使いを出したらしい。そうしたところ、僕がまだ戻っていないという事で消息不明という扱いになっていたという事だ。
参ったな……
僕は確かに田舎に帰ると伝えたはずなんだけど、森に籠ってノワールと修行している間にちょっとした騒ぎになっていたようだ。
「だって、大家さんにも家を引き払う手続きを取っていなかったそうじゃありませんか」
今度はちょっと怒った口調で口を尖らせるパトラさん。
そっか。それはちょっと迂闊だったかな。でもあの時の僕はノワールが殺された事で、まともな精神状態じゃなかったんだよなぁ。
「そんな事よりパトラさん。実は相談がありまして」
「え? あ、はい?」
僕がノワールの方へ視線を移すと、パトラさんも漸くノワールの存在に気付いたようだ。
「実は田舎に帰る途中で森に入ったんですけど、そこで彼女が魔物に襲われていまして」
「まあ……」
そこからのシナリオはこうだ。
魔物の群れに襲われていた彼女は奮戦していたが、深手を負っていた。そこに僕が助っ人に入り魔物を倒したが彼女は動ける状態ではなく、しかも打ちどころが悪かったのか記憶もあやふやな状態だった。
「止むを得ず、彼女が回復するまで森で動かずに保護していました。これがその時の魔物や獣の素材です」
僕は淀みなく説明しながら、予め影から取り出しておいた魔物や獣の素材をカウンターに出した。
「こんなに……しかもゴブリンやコボルトまで」
「ははは……彼女も中々の戦闘力だったので。僕一人で討伐した訳ではないですよ」
「そう、ですか……ではこちらは換金でよろしいですか?」
「はい。取り敢えず彼女には服なり靴なりを買ってあげないと」
僕は少し笑いながら頭を掻いてそう答えた。換金して服を買うのは事実だしね。
「それは、ショーンさんがそちらの女性の面倒を見るという……?」
あれ?
なんでそこでパトラさんの視線が険しくなるんだ?
「そういう事になるのかな? それで、本題なんですけど、彼女の冒険者登録をお願いしようと思いまして」
「冒険者登録ですか? 彼女は冒険者ではないのに森で魔物と戦っていたのですか?」
「はい。詳しい事は僕にも分かりません。ですが彼女には身元を証明するものもありませんでしたし、冒険者のタグもありませんでした。それならば、彼女には冒険者になってもらい、僕とパーティを組んでもらおうと思ったんです。彼女、腕は確かですよ?」
「なるほど……」
ここからはもうシナリオ通りだ。冒険者ランクの最低のウッドから始まる。だけどノワールは大精霊だからね。ゴールドランカーだって太刀打ちできないと思うよ。
それに、僕に相棒が出来るのはパトラさんだって安心すると思うんだ。
「そう、ですか。ではショーンさんが身元保証人という事で、そちらの方には冒険者登録をしていただきますね」
そうしてノワールの冒険者登録が滞りなく済んだ。
ノワールがウッドランカーを示す木製のタグが付いたチョーカーを首に巻く。
「さて、ノワール、行こうか」
「はい、ご主人様!」
あっ、その呼び方はマズい!
『ごしゅじんさまぁぁぁぁ!?』
ほら、ギルド内の雰囲気が一気に険悪になっちゃった。
どうしよ?
あいつ、冒険者辞めて田舎に帰ったんじゃねえのか
あの褐色の女は誰だ?
残滓のクセに、可愛い子連れてやがんなぁ
僕が街に戻った時、聞こえてきたのはそんな無遠慮なヒソヒソ声。中には敢えて聞こえるように話している者もいる。
「いいかいノワール、何があっても僕が指示するまでは手を出しちゃいけないよ?」
「はい、ご主人様」
この先僕は嫌がらせを受けるだろう。ノワールのような美少女を連れているのだから尚更だ。でも、ここで彼女が爆発してしまっては元も子もない。闇属性なんて世界に知られていない力を安易に使う訳には行かないからね。
とりあえず僕は今まで住んでいた家へと戻り、影の中からそこそこいい金額になりそうな素材をいくつかと、比較的弱い魔物や獣の素材を多めに取り出した。冒険者という枠組みの中では僕の信用度は低い。そんな僕が討伐しても不自然じゃない程度でね。
「これをギルドで換金したら、ノワールの服を買おうか」
今のノワールは獣の皮を剥いだものを纏っているだけで、非常に危うい。いや、でも僕の前で人型になった時は素っ裸だったんだからまだマシだけど。どうも精霊にはその辺の羞恥心というものが欠落しているらしい。
「精霊には雌雄の区別がありませんので、そういう感覚は分かりません」
……だそうだ。
ともあれ、僕は目的を果たす為にもう少しだけこの街に留まる必要ができた。その為には、残滓と呼ばれている僕一人でいるよりは、ノワールを冒険者にしてパーティを組んでいた方が色々と都合がいい。なので、彼女を連れて冒険者ギルドへと向かった。
僕とノワールがギルドへ入ると、室内全体がどよめいた。勿論悪い意味で。
恐らく僕はこの数日間で、田舎に帰ったか、あるいは消息不明になっているという事になってるんじゃないかな。
だから僕がノワールのような美少女を連れて戻ってきた事は、色んな人間にとって想定外だったはず。僕を追い出したかったヤツには特にね。
「ショーンさん! ご無事だったんですね!」
その中で唯一、僕を歓迎してくれる声が聞こえてくる。受付嬢のパトラさんだ。
「急にいなくなったと聞いて……」
明らかに安堵した表情でパトラさんがそう話す。
どうやら僕が急にいなくなった事で田舎に僕が帰っているか使いを出したらしい。そうしたところ、僕がまだ戻っていないという事で消息不明という扱いになっていたという事だ。
参ったな……
僕は確かに田舎に帰ると伝えたはずなんだけど、森に籠ってノワールと修行している間にちょっとした騒ぎになっていたようだ。
「だって、大家さんにも家を引き払う手続きを取っていなかったそうじゃありませんか」
今度はちょっと怒った口調で口を尖らせるパトラさん。
そっか。それはちょっと迂闊だったかな。でもあの時の僕はノワールが殺された事で、まともな精神状態じゃなかったんだよなぁ。
「そんな事よりパトラさん。実は相談がありまして」
「え? あ、はい?」
僕がノワールの方へ視線を移すと、パトラさんも漸くノワールの存在に気付いたようだ。
「実は田舎に帰る途中で森に入ったんですけど、そこで彼女が魔物に襲われていまして」
「まあ……」
そこからのシナリオはこうだ。
魔物の群れに襲われていた彼女は奮戦していたが、深手を負っていた。そこに僕が助っ人に入り魔物を倒したが彼女は動ける状態ではなく、しかも打ちどころが悪かったのか記憶もあやふやな状態だった。
「止むを得ず、彼女が回復するまで森で動かずに保護していました。これがその時の魔物や獣の素材です」
僕は淀みなく説明しながら、予め影から取り出しておいた魔物や獣の素材をカウンターに出した。
「こんなに……しかもゴブリンやコボルトまで」
「ははは……彼女も中々の戦闘力だったので。僕一人で討伐した訳ではないですよ」
「そう、ですか……ではこちらは換金でよろしいですか?」
「はい。取り敢えず彼女には服なり靴なりを買ってあげないと」
僕は少し笑いながら頭を掻いてそう答えた。換金して服を買うのは事実だしね。
「それは、ショーンさんがそちらの女性の面倒を見るという……?」
あれ?
なんでそこでパトラさんの視線が険しくなるんだ?
「そういう事になるのかな? それで、本題なんですけど、彼女の冒険者登録をお願いしようと思いまして」
「冒険者登録ですか? 彼女は冒険者ではないのに森で魔物と戦っていたのですか?」
「はい。詳しい事は僕にも分かりません。ですが彼女には身元を証明するものもありませんでしたし、冒険者のタグもありませんでした。それならば、彼女には冒険者になってもらい、僕とパーティを組んでもらおうと思ったんです。彼女、腕は確かですよ?」
「なるほど……」
ここからはもうシナリオ通りだ。冒険者ランクの最低のウッドから始まる。だけどノワールは大精霊だからね。ゴールドランカーだって太刀打ちできないと思うよ。
それに、僕に相棒が出来るのはパトラさんだって安心すると思うんだ。
「そう、ですか。ではショーンさんが身元保証人という事で、そちらの方には冒険者登録をしていただきますね」
そうしてノワールの冒険者登録が滞りなく済んだ。
ノワールがウッドランカーを示す木製のタグが付いたチョーカーを首に巻く。
「さて、ノワール、行こうか」
「はい、ご主人様!」
あっ、その呼び方はマズい!
『ごしゅじんさまぁぁぁぁ!?』
ほら、ギルド内の雰囲気が一気に険悪になっちゃった。
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