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一章
身勝手な理由
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僕の顔を見て一瞬だけ驚いた表情をしたデライラが、怒鳴り込んで来た。
そして、ノワールを殺った三人は、忌々しさを隠そうともしない目で僕を睨んでいる。
「ちょっとこの街でやらなきゃいけない事が出来ちゃったんだ」
僕はそう言いながらデライラではなく、弓使いの男に目を向ける。
「やらなきゃいけない事?」
デライラが首を傾げる。
「ああ。僕の大切なものを壊したヤツに復讐しなくちゃいけないんだ」
僕は尚も弓使いの男から視線を外さない。
「大切なものって……まさかあの黒ウサギの事?」
デライラのその言葉に、僕は視線を彼女の方に向けた。
「……なぜ君がその事を知っている?」
「えっ? いえ、それは、その……」
「つまり、後ろの男達が僕のノワールに手を掛ける事を知っていて、止めなかったんだ?」
「……」
そうか。そうだったのか。デライラ。君も僕の仇だったんだね。
「おい、さっきからてめえ、なんだってんだ? あんなウサギ一匹ぶっ殺されたからってなんだってんだ?」
僕がデライラを蔑んだ目で見ていると、斧使いの男が僕の胸ぐらを掴んできた。僕はそれを軽く払いのけながら言った。
「デライラ? 君が探していた『最強パーティ』っていうのはこんなクズ共の事だったのかい?」
「……」
デライラは俯いたまま尚も無言だったけど、斧使いのと双剣使いが武器に手を掛けた。しかし、そこで弓使いの男から制止が掛かる。
表面上は爽やかな笑顔を浮かべながら、悪びれる風もなく語る。
「まあまあ。俺達だって何の考えもなくやった訳じゃないさ。どうも残滓君がいるとね、君の事が気掛かりなようで、デライラが戦闘に集中できないみたいなんだ。それならいっそ、残滓君には冒険者を引退してもらい、田舎に帰った方が彼女も心置きなく戦えるってものさ。そう思わないかい?」
コイツは一体何を言っているんだろう?
この街で嫌な事があれば、僕が冒険者を辞めて田舎に帰る?
そんな理由でノワールに手を掛けた?
「君だって、デライラに死んで欲しくはないだろう?」
そうだね。そう思っていた。仮にも同じ村から出て来た幼馴染だもんね。死んで欲しいなんて思っていた訳がないじゃないか。
だけど、こいつらの蛮行を分かっていながら止めなかったデライラも同罪だ。もうどうでもいいよ。
「……僕に嫌がらせをしていい理由にはなりませんね。それに、もうどうでもいいですよ。僕には新しい相棒が出来たんで」
デライラがバッと顔を上げて僕を見る。次いで、僕の後ろにいたノワールを見た。さらに、改めてノワールをまじまじと見た三人組の表情が、邪悪に歪んだ。
そして三人組は僕を押し退けてノワールを取り囲んだ。ノワールの殺気が膨らむ。
「お嬢ちゃん、コイツの事、知ってるのかい? 魔法も使えないウィザードなんてやめときなって」
「俺達と組んだ方が稼げるぜ?」
「そうそう、こう見えて俺達強いんだよ?」
そんな男達の言葉に対して、ノワールが返したのは絶対零度の視線。いや、本気でこの辺の温度下がってないか?
それにしても、この殺気を感じ取れないとはなぁ……いや、ついこの間までの僕なら同じように分からなかったんだろうな。
「……これ以上私に近付くな、ゲスが。殺すぞ」
……怖い。ノワール、怖い。本気で怒ってる。
……無理もないよね。自分を殺した男達が目の前で気安く口説いてきているんだ。この場で暴れないだけでも偉いと思うよ。後で褒めてやろう。
「おお~、怖い怖い。お嬢ちゃん、後で後悔すんぞ?」
そう捨て台詞を吐いて男達は去っていった。互いに目配せして頷きながら。しかしデライラはそこに留まったままだ。
「……まだ何か? 用がないなら僕達はこれで」
何かを言いたそうなデライラを残し、僕達は家路へとついた。
△▼△
その夜、とある酒場で三人組がヒソヒソと話していた。
「残滓のクセして、なかなかいい女連れてやがったなぁ」
「ああ。上手い事言いくるめたんだろうぜ。でなきゃあんな出来損ないのウィザードに付いて来るヤツなんていやしねえよ」
「なんだか、ヤツと離れてからデライラも調子が出ないみたいだし、纏めてヤッてしまおうか」
最後の弓使いの言葉に、他の二人は手にしていたジョッキをテーブルに置き、真剣な表情になる。
「なんか、手があんのか?」
「ああ、定期的にあるだろう? ダンジョンで魔物の間引きをする共同クエストが」
「なるほど……その時のドサクサに紛れて、か」
この街は王国の中でも辺境にあり、魔物の数も多い。それは、街から徒歩で二日程の距離にあるダンジョンが原因ではないかと言われている。
ダンジョンとは、濃い魔力が吹き溜まりのように集まった場所が変異して、魔物を生み出す土壌になっている場所を言う。それは洞窟であったり廃坑であったり、あるいは森や山がダンジョン化していたり、中には街一つが丸々ダンジョン化してしまい、人間が住めなくなってしまった例もあるという。
ダンジョン発生の要因は魔力の吹き溜まりである事は有力な説としてあるが、なぜ魔力の吹き溜まりが出来るかは分かっていない。しかし、ダンジョンは魔物を生み出す。
魔物は素材や食料として流通しており、それが無くなるのは経済的にも痛い。そのため、国の政策としてダンジョンは潰さず、定期的に魔物を間引いて人々の生活を守る事になっている。
「今度の共同クエストはオイシイ思いが出来そうだな」
弓使いの男はそう呟き、エールを追加で注文するのだった。
そして、ノワールを殺った三人は、忌々しさを隠そうともしない目で僕を睨んでいる。
「ちょっとこの街でやらなきゃいけない事が出来ちゃったんだ」
僕はそう言いながらデライラではなく、弓使いの男に目を向ける。
「やらなきゃいけない事?」
デライラが首を傾げる。
「ああ。僕の大切なものを壊したヤツに復讐しなくちゃいけないんだ」
僕は尚も弓使いの男から視線を外さない。
「大切なものって……まさかあの黒ウサギの事?」
デライラのその言葉に、僕は視線を彼女の方に向けた。
「……なぜ君がその事を知っている?」
「えっ? いえ、それは、その……」
「つまり、後ろの男達が僕のノワールに手を掛ける事を知っていて、止めなかったんだ?」
「……」
そうか。そうだったのか。デライラ。君も僕の仇だったんだね。
「おい、さっきからてめえ、なんだってんだ? あんなウサギ一匹ぶっ殺されたからってなんだってんだ?」
僕がデライラを蔑んだ目で見ていると、斧使いの男が僕の胸ぐらを掴んできた。僕はそれを軽く払いのけながら言った。
「デライラ? 君が探していた『最強パーティ』っていうのはこんなクズ共の事だったのかい?」
「……」
デライラは俯いたまま尚も無言だったけど、斧使いのと双剣使いが武器に手を掛けた。しかし、そこで弓使いの男から制止が掛かる。
表面上は爽やかな笑顔を浮かべながら、悪びれる風もなく語る。
「まあまあ。俺達だって何の考えもなくやった訳じゃないさ。どうも残滓君がいるとね、君の事が気掛かりなようで、デライラが戦闘に集中できないみたいなんだ。それならいっそ、残滓君には冒険者を引退してもらい、田舎に帰った方が彼女も心置きなく戦えるってものさ。そう思わないかい?」
コイツは一体何を言っているんだろう?
この街で嫌な事があれば、僕が冒険者を辞めて田舎に帰る?
そんな理由でノワールに手を掛けた?
「君だって、デライラに死んで欲しくはないだろう?」
そうだね。そう思っていた。仮にも同じ村から出て来た幼馴染だもんね。死んで欲しいなんて思っていた訳がないじゃないか。
だけど、こいつらの蛮行を分かっていながら止めなかったデライラも同罪だ。もうどうでもいいよ。
「……僕に嫌がらせをしていい理由にはなりませんね。それに、もうどうでもいいですよ。僕には新しい相棒が出来たんで」
デライラがバッと顔を上げて僕を見る。次いで、僕の後ろにいたノワールを見た。さらに、改めてノワールをまじまじと見た三人組の表情が、邪悪に歪んだ。
そして三人組は僕を押し退けてノワールを取り囲んだ。ノワールの殺気が膨らむ。
「お嬢ちゃん、コイツの事、知ってるのかい? 魔法も使えないウィザードなんてやめときなって」
「俺達と組んだ方が稼げるぜ?」
「そうそう、こう見えて俺達強いんだよ?」
そんな男達の言葉に対して、ノワールが返したのは絶対零度の視線。いや、本気でこの辺の温度下がってないか?
それにしても、この殺気を感じ取れないとはなぁ……いや、ついこの間までの僕なら同じように分からなかったんだろうな。
「……これ以上私に近付くな、ゲスが。殺すぞ」
……怖い。ノワール、怖い。本気で怒ってる。
……無理もないよね。自分を殺した男達が目の前で気安く口説いてきているんだ。この場で暴れないだけでも偉いと思うよ。後で褒めてやろう。
「おお~、怖い怖い。お嬢ちゃん、後で後悔すんぞ?」
そう捨て台詞を吐いて男達は去っていった。互いに目配せして頷きながら。しかしデライラはそこに留まったままだ。
「……まだ何か? 用がないなら僕達はこれで」
何かを言いたそうなデライラを残し、僕達は家路へとついた。
△▼△
その夜、とある酒場で三人組がヒソヒソと話していた。
「残滓のクセして、なかなかいい女連れてやがったなぁ」
「ああ。上手い事言いくるめたんだろうぜ。でなきゃあんな出来損ないのウィザードに付いて来るヤツなんていやしねえよ」
「なんだか、ヤツと離れてからデライラも調子が出ないみたいだし、纏めてヤッてしまおうか」
最後の弓使いの言葉に、他の二人は手にしていたジョッキをテーブルに置き、真剣な表情になる。
「なんか、手があんのか?」
「ああ、定期的にあるだろう? ダンジョンで魔物の間引きをする共同クエストが」
「なるほど……その時のドサクサに紛れて、か」
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ダンジョンとは、濃い魔力が吹き溜まりのように集まった場所が変異して、魔物を生み出す土壌になっている場所を言う。それは洞窟であったり廃坑であったり、あるいは森や山がダンジョン化していたり、中には街一つが丸々ダンジョン化してしまい、人間が住めなくなってしまった例もあるという。
ダンジョン発生の要因は魔力の吹き溜まりである事は有力な説としてあるが、なぜ魔力の吹き溜まりが出来るかは分かっていない。しかし、ダンジョンは魔物を生み出す。
魔物は素材や食料として流通しており、それが無くなるのは経済的にも痛い。そのため、国の政策としてダンジョンは潰さず、定期的に魔物を間引いて人々の生活を守る事になっている。
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