残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
10 / 206
一章

過信する者、しない者

しおりを挟む
 アイアンランクに昇格した僕は、今まで受けられなかった危険な討伐依頼も受ける事が出来る。デライラ達のパーティはまだブロンズランクだから、あの連中は地団駄を踏んでいるかもしれないね。これで僕達に仕掛けてくる事は無くなるかもしれないけど、あいつらの運命は変わらない。
 ――僕が許してもノワールが許さないだろうしね。

「どうですか? そろそろ身体の方も慣れて来たのでは?」
「ああ。スピードやパワーに、漸く感覚が追い付いてきたよ」

 二本の短槍を接続させて一本にした、両端に穂先がある変則槍。それで足下のオークを突き刺し、止めを刺したところだ。
 オークは単体ではアイアンランクに位置付けられている魔物だ。パーティで対応する場合はブロンズランカーでも何とかなるけど、オークは多くの場合群れで行動しているため、最低でも一対一でオークに勝てる実力がないと、手を出さない方がいい。

「それはそうとして、この武器はどうにも使いにくいね。接続させてもリーチが伸びるだけでそれ以外のメリットがないし、自分に刃が向いている状態で突いたり引いたりするのは怖いよ」
「なるほど……では私の双剣をお使いになってみますか?」

 短槍は突きのみに特化した武器で、重量もそれほどではないから鈍器代わりに殴っても効果は薄い。ただ、僕みたいに非力で臆病な人間には向いてはいる。相手の懐に入らずにチクチクと突いていればいい。そもそも僕はウィザードだからね。
 でも、接近戦に持ち込まれたら無力になるようでは困る。だから両手に短槍を持って手数で敵を近付けない。そういう目的として割り切ってしまえばそう悪くはないとも言える。
 それが短剣レベルなってしまうと、今倒したオークのような大型の魔物にはリーチで負けてしまう。正直怖い。

「うふふ。強化状態のご主人様なら、このような豚ごとき、素手で殴り殺せますのに」
「そうかも知れないけどね。怖いものは怖いさ」
「ご主人様のそのような慎重さは、生き延びる為の大事な要素です」

 僕の内心を察したように、ノワールが励ましてくれる。ウサギの時はその愛くるしさで僕を癒してくれたけど、今の彼女は笑顔で、言葉で、ぬくもりで癒してくれる。

「それに、私がご主人様の中に入らずとも、ご主人様はご自身の魔力のみで十分お強くなりましたよ?」

 どういう事かというと、ウィザードが魔法を行使するには精霊に命じて、精霊に協力させなければならない。ところが僕の魔力は闇属性に特化しているため、一般的に認知されている火、水、風、土の四大属性の精霊は僕に対して非協力的だ。
 しかし、今の所闇属性の精霊というのはこのノワールしかいないようで、僕が闇魔法を使うにはノワールの存在が不可欠であり、彼女の協力無くしては魔法を発動させられない。
 そこで考えたのが、僕自身の魔力を体内に循環させて身体能力を爆発的に上げて体術で戦うというものだ。初めの内はノワールに身体の中に入ってもらい、アシストを受けながら強化していた。だが、今はノワールと離れていても身体強化は可能になった。
 ノワールがいない時でも戦えなくちゃね。
今倒したオークという魔物は豚のような顔に鋭い牙を生やし、でっぷりとした巨大な体躯を持つ手強い魔物だ。討伐依頼が受けられるのはアイアンランク以上からっていう条件が付く事から、冒険者ギルドも強力な魔物だと認識している事が分かる。
 人間側の勝手な解釈ながら、冒険者ランクと同様に魔物にもランク付けをしている。要はランクに見合わない強力な魔物に挑んで、冒険者が命を落とさないようにとの措置なんだよね。
 そういう訳で、遭遇戦は致し方ないとしても、低ランクの冒険者が高ランクの魔物を討伐しにいくのは禁じられている。
 だけど、冒険者ランクと実力が比例しているかと言えば必ずしもそうじゃない訳で。

「今のご主人様なら、もうワンランク上の魔物相手でも遅れは取りませんね」

 というノワールの言葉の通り、実力にランクが追い付いてこないケースもある。実際僕はこのオークを魔法なしで圧倒した訳で、もっと強い魔物ともやり合えるとは思う。
 たまに低ランクの実力者が、高ランクの魔物との遭遇戦でそれを倒した場合、実力が認められて一気にランクアップするケースはある。
 逆に、ランクアップを狙った低ランク冒険者が、遭遇戦を装って高ランクの魔物に挑み命を落とすなんて話も枚挙にいとまがない。

「何事も過信はいけないし、臆病なくらいでちょうどいいんだよ」

 そんな僕に、ノワールが苦笑した。
 
「それに、森や廃坑内部は暗くて隠れる場所も多い。不意打ちに注意しなくちゃいけないしね」

 いくら強くなっても、想定外の事にまで完全に対処するのは難しい。だから絶対に油断しちゃいけないんだ。

「それならご心配には及びません」

 だが、僕の言葉にノワールはゆっくりと首を振る。

「森の闇、ダンジョンの闇。それらは全て私の支配領域。むしろご主人様に仇なす者など存在しえません。どこに潜んでいようが私からは逃れられませんので」

 なるほど。闇こそ僕の力が最大限発揮されるフィールドって訳だね。しかもノワールに任せておけば索敵の心配がいらないどころか、先制攻撃すら容易い。
 
「楽しみだね、ノワール?」
「はい! ご主人様!」

 さあ、戻ろうか。かなり素材も溜め込んだし、装備も新調した方がいいかな。アイアンランクだしね。

△▼△

 その頃別の狩り場では。

「きゃっ!」

 オークの打撃を捌ききれず、デライラが吹き飛ばされた。そのままデライラに追撃を掛けようとするオークに、牽制の射撃をする弓使い。

「おいおい!」

 もう一匹のオークが盾持ちの斧使いに迫る。双剣士がそのオークの側面に回り込み斬り込むが、分厚い脂肪を破れずに有効なダメージを与えられない。

「くっ! 仕方ない、全員、撤退だ!」

 弓使いが声を上げながら指示を出す。牽制の矢を放ちながら自らも徐々に後退していく。

「私達にはオークはまだ早すぎたのよ!」

 デライラが、走りながら弓使いの男に非難めいた視線を投げかけ叫ぶ。

(ちっ……この女も期待外れだったな。いっそコイツもダンジョンで……)

 弓使いの中にどす黒い感情が渦巻いた。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...