残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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一章

合同クエスト

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 冒険者達の引率は、ギルドのお偉いさんがやるんだって。副ギルド長らしいんだけど、元ゴールドランクの強者だそうだ。
 また、この街を含めた辺境を治める領主様からも、役人が派遣されてきている。今回は領軍を派遣してこないみたいだから、単なる監視かな?
 そのお役人と副ギルド長は馬車に乗り、その他は徒歩で移動。ポーター含めて六十人くらいはいるだろうか。
 僕はこれだけの冒険者が同じ目的で動く事に軽く興奮を覚えているけど、今回はこれでも前回の共同クエストよりは規模が小さいみたいだし、領軍もいない。
 その事で、一部の冒険者からは戦力不足を不安視する声も聞こえてくる。その逆に、冒険者が少なく軍人もいない事で、稼ぎ甲斐があるという冒険者もいる。
 まあ、僕達の目的はお金を稼ぐためじゃないけどね。

 移動中に索敵に引っ掛かった魔物はたちまち討取られ、道中は大きな危険もなく移動できた。街を出てからはダンジョンまで中継地点となる村などはなく、野営になる。
 デライラのパーティの連中も、野営中は仕掛けてくる事がなかった。まあね、六十人もの冒険者が交代で寝ずの番をして、殆ど同じ場所で野営するんだから人目もある。やるなら人目に付かないダンジョンの中って事なんだろう。
 そして二日目も日が暮れる頃、岩山の麓に辿り着いた。ここは昔は鉱石を採掘していた鉱山で、ダンジョン化してしまった為廃坑になっている。その麓にぽっかりと空いた黒々とした穴。あれがダンジョンの入り口か。

「これより各自食事と休憩を取れ! 明朝よりダンジョン突入、今回は第五階層までとする!」

 副ギルド長が指示を飛ばすと、各々のパーティが野営の準備を始めていく。僕とノワールも腰を下ろし、食事の準備を始める。もっとも、あまり人目に付かない場所を確保した上で、だけど。

「ご主人様、私は少々ダンジョンの中を探ってきますね。何かあったらお呼び下さい」
「ああ。頼むよ」

 食事も睡眠も必要としないノワールは、闇に溶け込むように姿を消した。そして、僕の脳裏にダンジョン内の様子が映し出される。ノワールの視覚を共有しているという訳だ。
 彼女自身は影に溶け込んで移動しているから魔物に気付かれる事はない。どうやら僕達以外のパーティからも斥候スカウトがダンジョンに入って先行偵察をしているようで、気配を殺して進んでいく姿がスワールの目を通して確認できた。

(ご主人様、スライムが群生しています)

 スライムか。厄介だな。
 スライムとはゼリーのような不定形生物で、身体そのものが強酸で出来ている。倒すには一気に燃やしてしまうか、体内にある心核コアを破壊するしかない。しかしコア以外の部分は物理攻撃を受け付けず、更にはその強酸で武器を腐食させてしまうという嫌われ者だ。
 ウィザードならまだしも、余程腕利きの弓使い以外では相当苦戦するはずだ。

(どうしましょうか?)
「いや、そのままにしておこう。ウィザードの僕にはかえって都合がいいかもしれない」
「そうかもしれませんね。分かりました。放置しておきます」

 それから暫く、ノワールの目でダンジョン内部を見ていたけど、入口から上層には三階層、下層には十二階層に相当するだけのエリアがある事が分かった。そして魔物の分布も。

「なるほど、副ギルド長が五階層って言ってた意味が分かったよ」

 上層三階、下層五階まではブロンズランカーでもどうにか対処できる魔物しかいない。野生の獣に毛が生えた程度の魔物から、強くてもオークといったところだ。複数パーティであたればどうにかなるだろう。
 ところが、六階あたりからは俄然難易度が上がってしまうみたいだ。さっきのスライムもそうだし、オーガやワーウルフ、リザードマンといった、シルバーランク以上の魔物が目白押しだ。特に最下層にいるのは、うん。こんなヤツを相手にはしたくないね。

「おおよそ把握した。ノワール、帰っておいで」
「はい! ご主人様」

 短時間でこのダンジョンの全容をほぼ把握した僕は、ノワールを呼び戻した。間もなく、僕の影から彼女が姿を現した。

「本当にあっという間に来ちゃうんだ……」
「はい! ご主人様の所へなら一瞬です。自分は闇そのもの。闇が繋がってさえいれば、どこにでも現れる事ができますよ?」
「それ、僕も出来る?」
「闇魔法の応用で、近い事なら出来ますね」

 そうか。それなら是非ご教授願おう。
 
 ノワールも戻った事だし、枯れ枝を集めて火魔法で焚火を焚く。それで影から取り出した肉やパンを焼き、煮詰めて作った固形スープの素をマグカップにいれ、お湯を注ぐ。
 塩とスパイスを振りかけて炙った肉をスライスし。軽く温めたパンに葉野菜と一緒にサンド。そして温かいスープ。こういう野営の場所では中々のご馳走だ。
 魔法を使えないパーティは火を起こすのも簡単じゃないから、羨ましそうな視線もチラチラと感じる。火を起こすのが面倒なパーティは、カチカチに乾燥させたパンと水だけなんていうところもあった。
 中には火種を貰いに来たり、お湯を沸かすために間借りしてくるパーティもいる。そういう人達は僕を残滓とかいって蔑んだりしなかったか、僕がアイアンに昇格してから僕を認めて謝罪してきて、関係を改善できた人達だ。
 そういう人達になら僕も快く施すし、鞄から取り出すフリをして固形スープの素を分けてあげたりした。別に僕は敵を増やしたい訳じゃないからね。好意的な人達には好意で返すさ。
 もっとも、僕達と関係改善できたのは少数で、依然として僕の二つ名は『残滓』のままだし、今も美味しい匂いを漂わせている僕達に悪意を向けている人も多い。
 そんな中、かなり暗くなってきて肉眼で人物を判別するのが難しくなった頃、一人の人影が僕らに近付いてきた。

「……火種でも貰いにきたのかい?」
「違うわ。少しショーンと話がしたかったの」

 そこに現れたのは神妙な表情をしたデライラだった。
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