残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
12 / 206
一章

合同クエスト

しおりを挟む
 冒険者達の引率は、ギルドのお偉いさんがやるんだって。副ギルド長らしいんだけど、元ゴールドランクの強者だそうだ。
 また、この街を含めた辺境を治める領主様からも、役人が派遣されてきている。今回は領軍を派遣してこないみたいだから、単なる監視かな?
 そのお役人と副ギルド長は馬車に乗り、その他は徒歩で移動。ポーター含めて六十人くらいはいるだろうか。
 僕はこれだけの冒険者が同じ目的で動く事に軽く興奮を覚えているけど、今回はこれでも前回の共同クエストよりは規模が小さいみたいだし、領軍もいない。
 その事で、一部の冒険者からは戦力不足を不安視する声も聞こえてくる。その逆に、冒険者が少なく軍人もいない事で、稼ぎ甲斐があるという冒険者もいる。
 まあ、僕達の目的はお金を稼ぐためじゃないけどね。

 移動中に索敵に引っ掛かった魔物はたちまち討取られ、道中は大きな危険もなく移動できた。街を出てからはダンジョンまで中継地点となる村などはなく、野営になる。
 デライラのパーティの連中も、野営中は仕掛けてくる事がなかった。まあね、六十人もの冒険者が交代で寝ずの番をして、殆ど同じ場所で野営するんだから人目もある。やるなら人目に付かないダンジョンの中って事なんだろう。
 そして二日目も日が暮れる頃、岩山の麓に辿り着いた。ここは昔は鉱石を採掘していた鉱山で、ダンジョン化してしまった為廃坑になっている。その麓にぽっかりと空いた黒々とした穴。あれがダンジョンの入り口か。

「これより各自食事と休憩を取れ! 明朝よりダンジョン突入、今回は第五階層までとする!」

 副ギルド長が指示を飛ばすと、各々のパーティが野営の準備を始めていく。僕とノワールも腰を下ろし、食事の準備を始める。もっとも、あまり人目に付かない場所を確保した上で、だけど。

「ご主人様、私は少々ダンジョンの中を探ってきますね。何かあったらお呼び下さい」
「ああ。頼むよ」

 食事も睡眠も必要としないノワールは、闇に溶け込むように姿を消した。そして、僕の脳裏にダンジョン内の様子が映し出される。ノワールの視覚を共有しているという訳だ。
 彼女自身は影に溶け込んで移動しているから魔物に気付かれる事はない。どうやら僕達以外のパーティからも斥候スカウトがダンジョンに入って先行偵察をしているようで、気配を殺して進んでいく姿がスワールの目を通して確認できた。

(ご主人様、スライムが群生しています)

 スライムか。厄介だな。
 スライムとはゼリーのような不定形生物で、身体そのものが強酸で出来ている。倒すには一気に燃やしてしまうか、体内にある心核コアを破壊するしかない。しかしコア以外の部分は物理攻撃を受け付けず、更にはその強酸で武器を腐食させてしまうという嫌われ者だ。
 ウィザードならまだしも、余程腕利きの弓使い以外では相当苦戦するはずだ。

(どうしましょうか?)
「いや、そのままにしておこう。ウィザードの僕にはかえって都合がいいかもしれない」
「そうかもしれませんね。分かりました。放置しておきます」

 それから暫く、ノワールの目でダンジョン内部を見ていたけど、入口から上層には三階層、下層には十二階層に相当するだけのエリアがある事が分かった。そして魔物の分布も。

「なるほど、副ギルド長が五階層って言ってた意味が分かったよ」

 上層三階、下層五階まではブロンズランカーでもどうにか対処できる魔物しかいない。野生の獣に毛が生えた程度の魔物から、強くてもオークといったところだ。複数パーティであたればどうにかなるだろう。
 ところが、六階あたりからは俄然難易度が上がってしまうみたいだ。さっきのスライムもそうだし、オーガやワーウルフ、リザードマンといった、シルバーランク以上の魔物が目白押しだ。特に最下層にいるのは、うん。こんなヤツを相手にはしたくないね。

「おおよそ把握した。ノワール、帰っておいで」
「はい! ご主人様」

 短時間でこのダンジョンの全容をほぼ把握した僕は、ノワールを呼び戻した。間もなく、僕の影から彼女が姿を現した。

「本当にあっという間に来ちゃうんだ……」
「はい! ご主人様の所へなら一瞬です。自分は闇そのもの。闇が繋がってさえいれば、どこにでも現れる事ができますよ?」
「それ、僕も出来る?」
「闇魔法の応用で、近い事なら出来ますね」

 そうか。それなら是非ご教授願おう。
 
 ノワールも戻った事だし、枯れ枝を集めて火魔法で焚火を焚く。それで影から取り出した肉やパンを焼き、煮詰めて作った固形スープの素をマグカップにいれ、お湯を注ぐ。
 塩とスパイスを振りかけて炙った肉をスライスし。軽く温めたパンに葉野菜と一緒にサンド。そして温かいスープ。こういう野営の場所では中々のご馳走だ。
 魔法を使えないパーティは火を起こすのも簡単じゃないから、羨ましそうな視線もチラチラと感じる。火を起こすのが面倒なパーティは、カチカチに乾燥させたパンと水だけなんていうところもあった。
 中には火種を貰いに来たり、お湯を沸かすために間借りしてくるパーティもいる。そういう人達は僕を残滓とかいって蔑んだりしなかったか、僕がアイアンに昇格してから僕を認めて謝罪してきて、関係を改善できた人達だ。
 そういう人達になら僕も快く施すし、鞄から取り出すフリをして固形スープの素を分けてあげたりした。別に僕は敵を増やしたい訳じゃないからね。好意的な人達には好意で返すさ。
 もっとも、僕達と関係改善できたのは少数で、依然として僕の二つ名は『残滓』のままだし、今も美味しい匂いを漂わせている僕達に悪意を向けている人も多い。
 そんな中、かなり暗くなってきて肉眼で人物を判別するのが難しくなった頃、一人の人影が僕らに近付いてきた。

「……火種でも貰いにきたのかい?」
「違うわ。少しショーンと話がしたかったの」

 そこに現れたのは神妙な表情をしたデライラだった。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...