残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

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一章

デライラの事情

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「どういう事?」

 僕はデライラに訊ねるけど、彼女はとっとと階段を上っていってしまう。

「詳しい説明ならギルド長からあると思うわ」

 背中越しにそう返すだけ。まあいいけどね。
 二階に上がり、入るように指示されたのはいつものギルド長の執務室ではなく、会議室のような部屋だった。飾り気のない三人掛け用の長い机が二つだけ用意されていた。正面には教壇のようなものがあり、そこににも同じ長い机。全体のスペースは五~六十人は集まれると思われる大きな部屋だ。
 その教壇の長机にギルド長のサマンサさんと、副ギルド長のイヴァンさん。こちら側には僕達ダークネスの三人で一つの長机を使い、もう一つはデライラが使う位置関係だ。

「あー、この面子なら自己紹介はいらんな? じゃ、早速始めるぞー。ギルド長、頼む」
「もう、イヴァンは……では、説明を始めます」

 そう言って、サマンサギルド長が説明を始めた。大筋は前にグリペン侯爵から送られてきた手紙の内容と同じ。
 一応僕は真面目に聞いているけど、ノワールは姿勢正しく目を閉じている。寝てるのか? アーテルは退屈そうに窓の外を眺めていた。絶対聞いてないね。

「ここまでで何か質問はあるかしら?」

 ここでデライラが挙手する。

「今回はどこまで潜る予定なんですか? というか、今の説明だと行けるとこまで行く、みたいに聞こえましたけど、それだとポーターがあたし一人じゃ足りないと思うんです」

 え? デライラがポーター?
 そんな僕の視線を感じ取ったのか、彼女はふうっと息を吐いてから僕に答えた。

「この間の件でね、ウッドに降格しちゃったのよ。それでもアイツらに比べたら命があるだけ儲けものかしらね。そんな訳だから、ポーターだろうが迷子の猫探しだろうが、なんでもやって昇格したいのよ」

 なるほど。彼女には情状酌量の余地はあると思っていたんだけど、ある程度とはいえ共犯って判断がなされた訳か。
 それでも弓使いはノワールに殺され、他の二人は生きている事を後悔するような場所に送られたらしいからね。かなり優しい刑って事か。

「それに彼女は降格したとはいえ実力はブロンズでも上位だったしな。今回のクエストにはうってつけだろう?」

 なるほど。イヴァン副ギルド長の言う通りか。仮とは言え、僕のパーティの人員だと僕が認識すれば、おそらく彼女にもバフは効くだろうし、戦力として数えられるかもしれない。

「えーと、話を戻すわよ? ポーターが一人で足りるのかって話よね?」

 そんなサマンサギルド長の言葉に、デライラがコクリと頷く。

「それなら多分問題ないわね。今回は領主様直々の依頼なので、ちょっとしたお宝グッズを貸し出してもらっているの」

 そう言って、サマンサギルド長が足下から何やら包みを持ち上げた。長机の上に包みを置きそれを開くと、現れたのはやや大きめのバックパックだ。見た目はごく普通、どこにでも売っているもののように見える。

「凄まじい魔力ですね」
「ほう? あのようなものがまだ現存しておったのか」

 ノワールとアーテルは、そのバックパックに何かしら感じるものがあるらしい。その二人の様子を見たサマンサギルド長の目がスッと細められた。
 しまった、迂闊だぞ二人共。
 俺の思考を読んだ二人がバツの悪そうな顔をする。しかしサマンサギルド長はそのまま話を続けた。

「これは所謂マジックバッグというものね。何でも、このルーブリム王国に古くから伝わるアーティファクトで、国内にも数える程しかないみたい。王家や一部の貴族しか持っていないお宝って訳」
「まあ、形は両手がフリーになる背嚢式に変えたみたいだがな。中には解析不能の魔法がエンチャントされていて、このギルドの建物くらいなら余裕ですっぽり入っちまうって話だ」

 イヴァン副ギルド長からも補足説明が入る。なるほどそれは確かにお宝だ。影に収納しちゃう僕にとっては何の魅力も感じないけど、あのマジックバッグは冒険者にとっても軍事的にも物凄い価値があるんだろうね。補給や輜重といった物資面の問題が大きく軽減される訳だし。
 それに、アーテルはアレの事を知っているようだったな。もしかすると闇属性の精霊達が駆逐される以前から存在している……?
 そんな僕の考察をよそに、話は進んでいた。国内で数点しかない超お宝グッズと聞いて、顔面蒼白になっているのはデライラだ。

「も、もしかしてそれをあたしが?」
「あん? 当たり前だろ? お前がポーターなんだからよ」
「ええ……」

 まあ、デライラの気持ちも分かるけどね。それでも僕は苦笑するしかない。

「この国宝級のアーティファクトを持ち出してくるって事は、侯爵も本気って事ね」

 そんなサマンサギルド長の一言で、更にデライラの血の気を引かせる。
 でも待てよ? このダンジョン調査の依頼がそれほど重要なら、僕達みたいな冒険者に任せないで、侯爵直属の軍人さんを派遣すればいいのでは?
 ……そんな権力者サイドの介入がない方が、僕にとってはやりやすいか。あっと、その前に確認しとかなきゃいけない事があった。

「ギルド長、侯爵閣下の目的というか、その……可能ならダンジョンを破壊しろって事ですか?」
「詳しくは言えないわ。でも、鉱石資源を欲しがっているのは確かね。これで察してくれるかしら?」

 なるほど。軍は動かせない。でも鉱石は必要……ダンジョン化して廃坑になっている鉱山を復活させたいって事だよね。
 どうやら血生臭い話が背後にあるみたいだ。
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