残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
34 / 206
一章

ショーンがいる時、いない時

しおりを挟む
 デライラがすらりと剣を抜く。本人の見た目の華やかさとは程遠い、実用一辺倒の両刃の直剣だ。彼女自身も華美な装飾を敬遠する質であるらしく、幼い頃から女の子らしいおしゃれを楽しむと言ったようなところは見た事がない。
 それでも本人の見た目が麗しいため、逆にそれが際立って見える。そんな彼女の装備も飾り気のない革製の防具。動きやすさを重視しているので盾も持っていない。あまりにも地味すぎて、なりたての冒険者のようにも見える。

「あたしが行く!」

 両手で剣を持ちながら、二本足で立ち上がり威嚇しているクレイズベアに肉薄していった。

「ほう? 速いな、あの娘」

 アーテルが感心したように呟いた。
 ソードファイターとしてのジョブを与えられた者は、剣を扱う戦闘において身体能力や技量の面で恩恵が与えられる。それは自己鍛錬によってさらに底上げも出来るし、生まれついての才能にも左右されると言われている。
 同じジョブを得たからと言って、全ての人間が横一線でスタートする訳ではないし、同じように成長していく訳でもない。才能がある者がより鍛錬を重ねていく事により、他者より強くなる。まあ、当たり前の事だよね。
 それとは逆に、僕のようにウィザードのジョブを得ているにも関わらず、双戟で戦うような事をしていると、一切恩恵は受けられず、ずぶの素人と同じだ。それでも鍛錬すれば技量も身体能力も上がるだろう。しかしそれはジョブを得た者の成長曲線とは比べるべくもない。
 僕はそれを闇属性の魔力を身体に巡らせて身体強化を施し、爆発的に性能を上げているんだけど、では、デライラのような戦闘ジョブの人間はどうか。
 魔力というのはどんな人間も持っている。ただ、一定量以上を保持していないと魔法や身体強化を使う事は出来ない。逆に言えば、魔法を使える魔力量を持っている人間は、僕みたいな魔法使いのジョブを得ると考えられている。
 つまり、ウィザードやウィッチといったジョブの人間は身体強化も施せる。しかしそんな事をしなくても、離れた場所からバンバン魔法を撃っていればいい訳で、敢えて貴重な魔力を身体強化に使うのは愚かだ。それが一般的な見方なんだよね。

 さて、そういう『常識』に当て嵌めれば、ソードファイターのデライラは身体強化なんてマネは自前じゃできっこない。でも、クレイズベアに突っ込んでいったデライラの速さが尋常ではない事は誰の目にも明らかな訳で。これを見ているサマンサギルド長とイヴァン副ギルド長はどう思うんだろうね。
 そんな事を考えている間に、デライラはクレイズベアを切り刻み始めた。

△▼△

 馬車の御者席からこれから始まる戦闘を眺めているサマンサとイヴァンの二人は、予想外の展開に困惑していた。
 クレイズベアと言えばブロンズランカーが一人でどうにか出来る相手ではない。しかし、目の前の現実は目を疑うものだった。
 不祥事でブロンズからウッドに降格したデライラが、たった一人でクレイズベアを圧倒していたからだ。一撃の重さが足りない代わりに手数で補う。上等な武器を持たせたらもっと早くカタが付きそうだが、そこまで見越して確実にヒット&アウェイでダメージを蓄積させていた。
 スッと滑らか且つ素早き動きでクレイズベアの懐に入り込み、剣を一閃二閃さえてすぐに距離を取る。クレイズベアの攻撃がくれば巧みなステップでそれを躱し、死角に回り込んで再び斬り付ける。
 デライラが身に着けている防具など、クレイズベアの攻撃を喰らえば紙切れ同然でしかない。それを恐れる事なくギリギリで躱し続け、確実にダメージを蓄積させていく。

「なるほどなぁ。あれじゃあ行く行くは剣聖ソードマスターになるなんて噂が飛び交う訳だ」
「そうね。ブロンズに昇格したてのニュービーが、あんな動きをしてたんじゃ……」

 デライラの戦闘を見ている二人は感嘆しながら呆れるという器用な真似をしていた。

「でも、ショーンのパーティを抜けてからの彼女は、並の冒険者以下に成り下がったって話じゃない?」
「となると、以前の活躍と今の様子を見るに、やっぱり秘密はあの坊主にありそうだな」
「ええ、ソードファイターが自前で身体強化出来るなんてありえないもの」
「やれやれ、あの坊主、一体何者なんだか……」

 御者席から観戦している二人の興味は、実際に戦闘しているデライラではなく、ショーンに移っていった。

△▼△

 ヒュン! と剣を振って血のりを払い、鞘に納めたデライラが戻ってきた。彼女の後方には、首を斬り落とされて絶命しているクレイズベアが見える。

「あれも回収しますか? ダンジョンの魔物ではないですが」

 そんなデライラの質問に、イヴァン副ギルド長が答える。

「ああ、そのままにしておくと別の魔物が来るしな。今夜は豪勢にクマ鍋といこうや」
「それなら我が回収してこよう」

 アーテルがウキウキしながらマジックバッグを持ってクレイズベアの方へ駆けて行った。クマ鍋が楽しみなのかな?

「前よりもキレてるんじゃないか?」

 デライラは僕とパーティを組んでいた時よりも、明らかに動きが良かった。おそらくこれは、僕のバフ以外にもデライラ自身の中で何かが変わったせいだろう。

「……やっぱりあんたと一緒だとあたしは強くなれるのね。今更だけどさ」

 デライラはそう寂し気に笑いながら、箱馬車に乗り込んでいった。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

処理中です...