残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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一章

え? あたしも?

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「話は分かったわ。とりあえずあのコアだった水晶を回収して、街に戻りましょう。なんだか疲れちゃったわ」

 ふうっと大きなため息をついて、サマンサギルド長が撤収の指示を出した。

「取り敢えず、ダンジョンを潰した件と、スタンピードを未然に防いだ件は侯爵に報告する。これは正当な報酬を得るために隠し立ては出来ん。冒険者として、そこは譲れないトコなんだ。分かってくれ」

 今回のグリペン侯爵からの指名依頼は成功って事で報告するんだね。それに大量発生した魔物のスタンピードを制圧した事で追加報酬を要求すると。
 まあね。あれだけの数の魔物を相手にしたんだから、通常の報酬だけじゃ割に合わないのも理解できるし、結果として領内の街や村を守った事になる。

「相手が貴族でも俺達の仕事を安売りする事はできねえんだよ。俺達街のギルドのトップが貴族に舐められちまったら、街の冒険者全員がいいように使われちまう」
「そうよ。私達は貴族や軍と協力する事はあっても、いいように使われる存在に成り下がってはいけないの」

 そうかぁ。街の冒険者を守る為にも貴族様相手に退かない強い態度が必要なんだね。僕だったら胃が痛くなりそうだよ。

「あの、僕達も領主様の所へ報告に行かなきゃダメですか?」

 なんか行きたくないよね。面倒な事になるのはほぼ確定だし。特にアーテルは侯爵だろうが王様だろうが、人間相手にへりくだる必要性を感じていないし。そういう意味も込めて一応聞いてみたのだけれど。

「あたりめえだろ? 指名依頼を受けたヤツが行かねえでどうするよ?」

 そうですか。そうですよね。はぁ。
 まあ、いざとなったら影泳ぎで逃げちゃおう。

「お前、逃げんなよ? 下手打つと故郷の村が焼き討ちされるとかあるからな?」
「まあ、グリペン侯爵はそんなお方ではないけれど、そういう貴族もいるって事よ」

 イヴァン副ギルド長のあまりの口ぶりに唖然としていると、サマンサギルド長からフォローが入ったよ。びっくりしたなあ……
 でも、貴族の力を見くびるなって事か。僕達だけならどうにでもなるけど、周りを巻き込む恐れもあると。

「大丈夫ですよ、ご主人様。私達がおります。ご主人様に徒成すような者であれば、侯爵だろうが国王だろうがぴちゅんです」
「そうだぞ主人! ケンカを売られたら遠慮なく買うのだぞ? そしたら我がこーやってこーやって、それからこうしたらこうだ!」

 ノワールは両手をグーにしてやる気マンマンな表情で見上げてくるし、アーテルはなんだろう? 相手を掴んで倒したらなんか関節キメて最後にはひっぱりあげてブン投げるようなアクションをしていた。
 そういうのはいいからね?

「あの……あたしも行くんですか?」

 そんな楽しい雰囲気のところで、デライラが恐る恐る手を上げて聞いた。そうだよね。彼女は指名依頼とは関係ないし、侯爵の所へ行く必要もないと思うけれど。

「あー、お前さんはなぁ……」
「一応、最重要人物の一人になっちゃったものね」

 ギルドの二人のデライラを見る視線が、この上なく気の毒な少女を見る目になってるよ。

「えぇ……」

 それを見たデライラもガックリと項垂れた。

△▼△

 僕達はスタンピード鎮圧の証明として凡そ八百体分の魔物の討伐証明部位や死骸を持ち帰り、二日間ほどはのんびりと過ごした。そして三日目、侯爵から報酬の受け渡しと事情の説明の為、領都の居城まで登城するよう通達が来た。
 そして侯爵が手配した豪華な馬車に揺られている訳なんだけれど。

「やっぱりあたしも行かなきゃダメなのね」

 僕の向かい側のシートでデライラがさめざめと泣くフリをしている。

「まあ、ギルド長達もデライラも、僕のゴールド昇格に巻き込まれた感はあるよね……」
「そうよ! あんたのせいよ!」

 デライラが僕をキッと睨みつけてくる。その発言を聞いたノワールが、僕の隣から殺気を飛ばす。

「ひっ……」
「ご主人様がこのような事になったのは、よくも悪くもあなたが原因だという自覚はないのですか?」

 デライラはノワールのツッコミにしゅんとしてしまう。でもここは僕からフォローしておこうか。

「本当は君の事もあの三人組と一緒に復讐するつもりだった。だけど、それを止めてくれたのはノワールなんだ」
「……え?」

 デライラには何か隠された力がある事。本人はそれを自覚していないようだけど、それに目覚めた時、僕の助けになるだろう事。だからデライラを生かせと。

「その時は光の魔力持ちだとは気付けませんでしたが。あくまでもご主人様のメリットになると判断しての事です。他意はありませんので」
「あ、はい」
「ノワールよ、そう虐めてくれるな。デライラ様とて、ショーン様を思っての事だというのは分かっているのだろう?」

 ノワールに言われて小さくなっているデライラの隣に座るイケメン、ルークスがフォローする。
 彼は街に戻ってからギルドで冒険者登録をし、日用品や装備を買い揃えてデライラの定宿に転がり込んだ。一応ウッドランクという事になるので、デライラも込みで僕達のパーティ『ダークネス』に加入した。その方が色々都合がいいし、僕とデライラが旧知の仲なのはみんな知っている。
 だけど、あくまでも暫定的な話で、この先もデライラと行動するかと言われればそれは別の話だけど。
 ちなみに村人の服から『駆け出し冒険者の服』にランクアップした彼は、それはもう眩いばかりのイケメンぶりで、ギルドで冒険者登録する際は受付嬢だけじゃなくて男の冒険者ですら溜息を零したほどだ。

「ノワールもそれくらいにしておいて?」
「はい! ご主人様がそう仰るのであれば! デライラさん、仲良くしましょうね!」

 この変わり身だよ。馬車の中で全員が苦笑する。
 ああ、ギルド長達は僕達が乗る馬車の前を走る、もう一台の馬車に乗っている。あちらは侯爵からの案内人と一緒だ。そして馬車の前後には厳めしい金属甲冑姿の騎士さん達が、二十騎ほどで護衛に付いている。僕等を逃がさないよっていう圧を感じるのは気のせいかな?

「ルークスよ。ヤツはどうしているだろうな」

 窓の外の景色を眺めながらアーテルが不意に呟いた。

「其方と同じように本来の力を失っているだろうからな。どこかで無事でいるとよいが」
「そうだな」

 ヤツって誰だろう?
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