残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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二章

訓練で無双

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 暇潰しにポーバーグ城へ兵達の訓練に付き合うようになってから四日目。初日は余裕で捌いていたデライラの額に汗が光る。少しはこの戦士団も成長したみたいだ。

「練度は比べ物にならないほどグリペン侯爵の騎士団が上。個々の力を見れば得るものはそんなにないんだけど……一対多の対人戦ってあんまりやる事ないじゃない? 魔物の群れと戦うのとはまた違った手強さがあるわね」

 そう言ったのはデライラだ。僕と別れたあと、彼女はグリフォバーグ城で剣術の修行をしていた。騎士が使う正当剣術というのは中々得るものが多かったらしい。ソードファイターじゃない僕にはちょっと分からないけどね。

「それでも少しはマシになったようです。倒れている時間が短くなりました」

 これはノワールの言葉。彼女なりに評価しているのだろうが、無表情で話すものだからよく分からない。彼女、興味がない事にはとことん無表情なんだよね。

「まあ、いい運動不足解消にはなるな!」

 アーテルにとっては五十人の戦士団をたった三人であしらっておきながら、準備運動程度の事らしい。

「ショーン」

 訓練も一段落したところで、今日は訓練場に顔を見せていなかったケルナーさんが現れた。

「タッカー様の準備が整った。明日にでも出立したいとの事だ」

 特に荷物もないし、それは問題ないね。というか、準備が出来たって事は、領地の継承の件だけでなく、ブンドルとマルセル前伯爵の悪事の証拠が揃ったって事だよね。

「そんな訳で訓練に付き合ってもらうのも今日までだ。すまんな。みんなも少しは使えるようになった」
「いえ、僕はなにも」

 戦士団の実力向上に一役買ったおかげで彼等が強くなったのは間違いない。ケルナーさんもそこはしっかり感謝してくれている。だけど、実際に頑張ってくれたのはデライラ、ノワール、アーテルの三人と、あとは回復係でこっそりルークス。僕は何もしてないんだよなぁ。
 だけどそこでケルナーさんの瞳が怪しく光った。

「なに? 何もしてないのに礼を言われるのは心外だと? なるほど、それもそうだな!」

 ――スラリ

 ケルナーさんが腰に佩いている剣を抜いた。

「は?」
「最後に一手ご指南願う」

 いやいやちょっと!
 それ真剣だし!
 ビュンと風切り音を残して剣が振り下ろされる。

「っっとお!?」

 僕はそれを後方に飛び退いて躱す。

「今のを躱すか! 流石はプラチナランカー候補!」

 口では褒めているけどまだまだヤル気マンマンの表情だ。
 それにしても、ノワールもアーテルも止めに入らないって事は、僕にやれって事だよね。仕方ないなぁ。

「まだまだ行くぞ!」

 更にケルナーさんが踏み込みながら剣を振るってくる。その剣筋に一切の迷いがない。自分の剣如きが僕に届く事が無い事を分かっていながら、それでも全力で挑むという姿勢が見える。
 それなら、僕も本気で相手をしよう。

「ノワール! 訓練用の剣を二本だ!」
「はい!」

 ケルナーさんの剣を躱しながらノワールに指示を出すと、彼女が影収納に訓練用の剣を二本突っ込んだ。これでいつでも僕も影収納から取り出す事が出来る。

「ふんっ!!」

 ケルナーさん渾身の袈裟斬りを半身で躱し、そのまま背後を取って背中を蹴り飛ばす。

「なっ!?」

 僕はそのまま影収納から訓練用の剣を取り出し両手に持った。たたらを踏むケルナーさんに、わずか一歩で肉薄し、剣の腹で強かに打ち付けた。

「がはっ……」

 横っ腹に痛撃を受けた彼はそのまま蹲る。
 これで終わりか。
 ……と思ったら、今度は五十人が一度に向かってきた。

「隊長の仇!」
「是非俺にもご指南を!」

 そんな事を叫びながら殺到してきた。事前に示し合わせていなかった分、全員が早い者勝ちとばかりに向かってくるものだから、結局僕一人で全員を相手にする事になった。うはぁ……
 こうなったら僕も少し本気を出す。魔法は使わず身体強化のみ。流石に短双戟を使うとみんな死んじゃうかも知れないから、あくまでも訓練用の剣でぶん殴る。多分ルークスが回復してくれるから、後の事は多分大丈夫だろう……うん、きっと。
 群がりくる男達を躱し、捌き、殴り、蹴る。殺さないように気を付けながらというのは中々大変だったけど、その加減を気遣いながらの戦闘というのは中々いい訓練になるね。
 必要最小限の力で相手を無効化する。それはスタミナや魔力の消費を抑える事に繋がる訳で、その分継戦時間も長くする事が出来る。

「素晴らしいです、ご主人様!」

 ノワールがタレ耳をパタパタさせながら目を輝かせている。

「うむ、うむ!」

 その隣ではアーテルが腕を組んで満足気だ。
 どうやら僕は、スタミナと魔力を如何に効率よく使うかに集中してしまい、気付いた時には五十人全てを倒してしまったようだ。

「呆れた……あんた、魔法なしでもそんなに強いの? 全く。どんどんあんたの背中が遠くなるわ」

 デライラが眉間を押さえながらそう言ったのがやけに印象的だったな。
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