残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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二章

まずは時間稼ぎ

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 僕は刃に闇属性の魔力を纏わせた短双戟で、シルフに接近戦を挑んだ。霊体相手の戦いにおいて、通常の物理攻撃は全く意味を成さないけど、僕の武器は魔法陣を刻んだお手製の魔戟まげきだ。多少なりともダメージは通るだろう。
 それと接近戦を挑む理由は別にある。ヤツの全く前兆のない魔法攻撃だ。
 これが火魔法や水魔法といった目視出来るものならばまだしも、風や空気を操る魔法は見えないからね。魔法を撃たせない距離で戦うのが良策だろう。
 ともあれ、ヤツは僕の武器が魔改造されたものだとは分からないはずだ。初撃でいくらでも大ダメージを与えるべく、僕は全力で斬り込んだ。

「ふ、そんな物理攻撃が通用する訳が――むっ!?」

 ちっ、気付かれたか。シルフは咄嗟に風の障壁を張り巡らせ、僕の斬撃を弾いた。

「貴様、面白い武器を持っているな。まさか魔剣の類とは。しかも纏わせているのは闇の魔力か。何者だ?」
「さあ? あなたの敵だって事は間違いないですね」

 適当に答えをはぐらかしながら、接近戦を挑む。ヤツが僕を見くびって、この戦法に付き合ってくれている今がチャンスだ。

「そうか、貴様は闇属性のウィザードか。ならばそうやって武器を振り回して戦う以外に道はなかろうな!」
「くっ!」

 僕の攻撃を弾きながら、ヤツはカウンターを狙うように突きや蹴りを繰り出してくる。しかもその一撃一撃に風魔法を纏わせているのだからタチが悪い。掠っただけでも僕は吹き飛んでしまうだろう。
 でも僕にも有利な点がある。それはヤツが闇の大精霊の復活に気付いていないという事だ。だから僕が魔法を使えないと思い込んでいる。
 それなら僕は今の内に色々と仕込ませてもらおう。
 シルフとギリギリの接近戦をしながら、魔法を行使していく。もっとも、今ヤツにブチ当てる為のものじゃない。影収納の中に炎弾を準備しておくのだ。十個、二十個、いやもっとだ。
 僕が闇属性のウィザードで、それを逆手に取った伏線を張っている事に気付いていないシルフは、僕との接近戦をまるでウォーミングアップでもするかのように楽しんでいるようにも見える。ただの霊体のあつまりで、表情なんかも窺いようがないけれど、きっとヤツはニヤニヤと笑いながら僕の攻撃を捌いているんだろう。
 そもそも、アーテルの身体が消えている事にすら気付いていないとか、迂闊すぎると思うんだが。いや、闇魔法が発動出来ないと思い込んでいるし、そもそもその強大すぎる力のせいで、細かい事は気に留めていないのかもしれない。
 どちらにしろ、状況だけは僕に有利に傾いている。実力差は天と地ほどの差があってもね。
 そしてもう一つ。僕の魔力が物凄いスピードで減っている事。これは魔法を行使しているせいじゃない。恐らく影の中で、ノワールとアーテルが復活しようとしている。そのために僕の魔力を喰っているんだ。
 二人が復活してくれれば。それまで時間を稼げば。

「僕にも勝機はある!」

 僕はヤツの障壁ごと突き破るつもりで、渾身の左右二連突きを繰り出した。短双戟の穂先には、小規模な爆発を起こす火球を仕込んである。

 ――ボン! ボン!

「!?」

 僕の全力の突きもヤツの障壁を突破する事は出来ず、火球だけが爆発する。でも僕が魔法を使えないと思い込んでいたシルフは一瞬驚いたようだ。そして空に舞い上がっていく。身体強化を施した僕が全力でジャンプしても届くかどうか。館の四階の壁を背に、こちらを睨んでいる。

「よもや火属性魔法も使えようとはな。そうと分かればもう遊びは終わりだ」

 ダメージはあるかどうか不明だけど、やはり魔法による攻撃は精霊王であっても油断は出来ないらしい。もうどこから攻撃されているのか分からないくらい、全方位から風の刃、空気の塊、または空気を鋭い槍のようにしたものだろうか。僕を切り刻み、叩き潰し、突き刺そうと襲ってくる。
 そもそも見えないものだ。辛うじて魔力を感じるくらいが関の山。躱すなんて不可能に近い。いくつか被弾した僕は致命傷にならないようにガードしながら、周囲が土煙に覆われるの待つ。
 そしてその時は来た。

「おお、手酷くやられたな、主人よ」
「なに、見た目だけだよ。君ほどじゃない」

 土煙に紛れて影の中に隠れた僕は、幾分元気を取り戻したアーテルに迎えられる。確かに血だらけだからね。相当なダメージを受けているように見えるかもしれない。
 取り敢えずこの影の中は別の次元と言っていいだろう。他者が干渉する事はできない安全な空間だ。この中で簡単な治療を施した。

「で、どうだ?」
「ははは。流石は精霊王だね。僕一人じゃここまで時間稼ぎするのが精いっぱいだよ」
「一人の人間が精霊王に抗える時点で異常な事だぞ、主人よ」

 僕のそんな返しに、呆れたようにアーテルは言う。でも、善戦出来ても勝てなきゃ意味がない。

「ヤツを倒すには、君とノワールの力が必要だ」
「うむ、あと少しで回復する。任せておけ」

 僕に頼られているのが嬉しいのか、彼女は狼の姿でニカッと笑う。なかなか獰猛な表情だが頼もしいね。
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