残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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二章

敵を倒すのに手段は選ばない

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 アーテルの魔力弾によって大ダメージを受けたシルフは、その身体を構成していた魔力の多くを霧散させ、先程までと比べると随分と希薄な存在に感じられた。でも、相手は風の精霊王。ここからは欠片も油断なんかしないぞ。

「な、何故だ……闇の精霊共は全て封印したはず。何故それほどの力を行使できる」

 フラフラと起き上がったシルフが忌々しそうに言うが、ノワールの件に関してはまだ伏せておく。アーテルも答えるつもりはないらしく、頭を低くして唸っている。さっきのレベルの攻撃は流石に連発は出来ないみたいだね。

「おのれ……おのれぇぇぇ!!」

 怒り心頭のシルフが再び空中に舞い上がろうとする。なんだかんだ言っても、頭上を取るアドバンテージは強いからね。今は夜だから僕達に分があるけど、これが昼だったらと思うと寒気がする。そんな事もあって。日が昇る前にケリをつけたいところだ。
 だから――

「なんだっ!?」

 舞い上がろうとしたシルフが地上二メートル程の高さから、それ以上浮上出来なくなっている。これは僕が仕掛けていたものだ。
 アーテルが放った魔力弾と同じように、闇の魔力に質量を持たせる程に圧縮させ、細い糸のようにしたものだ。それをヤツの身体に巻き付けてある。それに気付いたシルフが叫んだ。

「これは、闇魔法!? なぜだ! あの人間は何処だ!?」

 事ここに至って漸く僕の姿が見当たらない事に気付いたのか、ヤツは辺りを見回して僕を探しているようだ。しかし魔力の糸で拘束されているため、まるで空中で磔にされているように動けない。辛うじて首だけが動かせるヤツは、周囲の風精霊に命じて探させているらしい。
 しかしここは影泳ぎをする空間の中。たとえ精霊であろうとも感知出来る場所ではない。
 見えない場所から一方的に攻撃するのが卑怯だと思うかい?
 僕は僕と仲間を傷付ける者には、どんな手を使っても報復する。

 魔力の糸を操作する。そんなに難しい事じゃない。ただ、ヤツを地面に叩きつけるだけだ。ただ、叩きつけた先には剣山のように無数の槍が待ち受けている。勿論、闇魔法による魔力の槍だ。

「ガハッ」

 本来の力の殆どを失い、抵抗も出来ないシルフは串刺しにされながら苦しんでいる。この世界の強者は簡単に死ぬことすら出来ない。哀れだね。
 僕はそれを何度も繰り返す。何度も、何度も。
 人間に例えるならばもう虫の息と言っていい状態にまで痛めつけた僕は、影から姿を現し、シルフにも見える場所に立って見下ろした。

「僕の仲間に手を上げたあなたを許しはしません……が、なぜか教えてもらえますか?」
「ぐふっ……な、ぜ、とは?」
「何故太古の昔、光と闇の精霊を封印したのか。なぜヴィルベルヴィントに憑依して僕達を襲ってきたのか。いつからヴィルベルヴィントに憑依していたのか、です」
「いいのか。このシルフを消せば、世界の風精霊が纏まりを無くす。空気は濁り、風は暴れ、人間が暮らすには過酷な環境になるぞ」

 シルフは僕に答える事なく、そんな世界のことわりを説いた。だけどそんな事。
 
「や、やめ――うわあああ!」

 闇魔法、『紫影しえい・斬』。闇の魔法を短双戟に纏わせ、そこから振るって衝撃波を飛ばす技だ。イメージ次第では刃のように鋭くも出来るし、ハンマーのように打撃に特化した使い方もできる。その場合は『紫影・撃』になるのかな。
 ちなみに、さっき魔力の糸で拘束したのは『磔影たくえい』。そして影から槍を生やしたのが『影槍突出えいそうとっしゅつ』。いずれもノワールが復活した当初、森の中で訓練して会得した魔法だ。

「闇と光の精霊を封印し、この世界から無かったものにした張本人が、理を語るとは片腹痛いと思うんですけどね」

 シルフを切り刻みながら、僕は責める。怒りが収まるまで、痛めつけた。人間から善の心が薄れ、悪の心が芽生えたのは、全て貴様等のせいじゃないか。

「世界を歪めたのはお前達の方じゃないか!」

 僕は渾身の力込めた一撃を放った――が、それがシルフに届く事は無かった。

「ふう、間に合った」

 僕の一撃を止めたのは、デライラの白く輝く魔剣だった。
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