残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

文字の大きさ
101 / 206
二章

事後交渉①

しおりを挟む
 今回の戦いに敗れたシルフは影の中で眠りについた。かなり消耗してしまった為、暫くは行動できないらしい。どっちにしても、僕の影の中では自由に行動できないだろう。
 そして消滅してしまうと風属性の精霊達が乱れてしまうので、今回はこれで良かったのかもしれない。
 僕とノワールは影から出て、ヴィルベルヴィントを治療しているルークスとデライラの元へ向かった。

「どうだい? 彼は」
「瀕死でしたよ。まあ、生きてさえいれば何とでも出来ますがね」

 ルークスにそう言われ、倒れたままのヴィルベルヴィントを見る。すでに外傷は癒されたようだ。この暗がりでは顔色までは良くわからないね。
 ただ、シルフに憑依されている時に異常に発達した肉体は元に戻り……というより以前より萎んでしまったようにも見える。やはり外部の力によって強制的に自らの限界を超えさせられるとこうなっちゃうんだね。

「じきに目覚めるんだよね?」
「ええ、それは。ただし、暫くはまともに身体が動かせない程度に治しておきました」

 イケメンが悪戯っぽい笑顔を浮かべながらそう言った。殺すのはいつでもできるけど、一応オスト公にも事の顛末を話す必要があるし、四大公爵家の一つがブンドルの買収に乗った事は、王家にとっても結構なダメージなんじゃないかな?
 いや、王家そのものがブンドルに汚染されている可能性もあるけど。

「アーテル、グランツ。タッカーさんやオスト公を集めて欲しいんだ。こちらはもう危険はないからね」
「分かった。行くぞ、爺」
「あいたたた……腰が」
「梟に腰痛とかあるか。いいから来い!」
「年寄りはもっと大事に扱わんか――ああぁぁぁ……」

 急に仮病を決め込もうとするグランツがお茶目だったけど、結局は売られて行く子牛のようにアーテルに引き摺られて行った。

「ねえ、オスト公はどうすると思う?」

 ちらりとこっちを見たデライラが僕に訊ねてきた。

「良くも悪くも頑固な御仁だからね。多分ヴィルベルヴィントを自ら処断した上で、爵位の返上とかしそう」

 これは冗談や誇張じゃなくて、アノ人なら本当にそうすると思う。
 オスト公爵家が無くなっても、王家に連なる血縁者がこの領地を引き継げばいい話だもんね。それを分かってるんだろう。

「ふうん? でもそれは悪手よね?」
「へえ、どうしてさ」

 いつもはあまり深く物事を考えないデライラが、珍しく考察を述べようとしている。

「今回の事で、他の精霊王も敵に回る事が確実だって事が分かったでしょ? その守護を受けている他の四大公爵家も、やっぱり敵に回るんじゃないかしら?」

 うん、そうだろうね。

「あたし達にはグリペン侯爵、ポー伯爵もかな。一応味方と言っていい勢力が出来たけど、まだ弱いと思うの」

 うんうん、いいぞ。

「だから今回の事でオスト公には恩を売っておいた方がいいんじゃないかしら?」

 かなりいい線をいっているよ。だけどなぁ……

「あのさ、デライラは一体何をするつもりなのさ? 国を二分した内乱でも起こすつもり?」

 そもそも、僕は王都に行ってプラチナランカーになる為の試験を受けるだけなんだよね。今までは巻き込まれてこんな事になっちゃってるけど。

「あんた、忘れちゃったの? グリペン侯爵が鉱山を復活させたかった理由」
「あ!!」

 そうだ。グリペン侯爵は領内の武装強化のために鉱物資源を欲しがっていた。だからダンジョンと化していた鉱山を復活させたんだ。
 じゃあ戦力を整えるのはなぜかと言えば、国内にきな臭いものを感じていたからだ。侯爵の鼻は内乱の臭いを嗅ぎ取っていたのかも知れない。

「あたしが起こすんじゃなくて、多分起っちゃうのよ。出来ればそんな事は止めたいけど、それにしたって後ろ盾はいるんじゃないかしら」

 ああ。デライラの言う通りだ。ホントに正しいと思う。でも冒険者にすぎない僕達が、そこに責任を持たなきゃいけないの?
 そんな事を考えている所へ、オスト公やタッカーさん、ケルナーさん達がやって来た。

「随分と興味深い話をしておるようだが、どこに間諜の耳があるか分からん。中で話そう」

 オスト公はそう言うと、部下達に命じてヴィルベルヴィントを回収し、僕達を屋敷の中に招き入れた。
 幸いにも、壁に穴を開けた僕達の寝室以外は屋敷に大きな被害はなかったみたいだ。障壁を張ってくれていたグランツには感謝しておこう。
 
「この度は我が孫が迷惑を掛けた。この通り謝罪する」

 この屋敷に来た時、最初に面会した部屋。少しだけメンバーは変わっているけど、基本的にはタッカーさんとケルナーさん。その両隣に僕とデライラ。それにノワール、アーテル、ルークス、グランツが増えている。
 対してオスト公は一人。車椅子を押すためのメイドさんが一人いる。護衛の兵すら付けないあたり、謝罪が本物である事の現れだろうか。

「条件付きで謝罪は受け入れます」

 さっきデライラに言われた事や、タッカーさんにも突き付けた条件を思い出しながら僕はそう答えた。

「条件とは」

 平民に頭を下げる公爵ってだけでも評価に値する人物だと思うけど、さすがに条件まで付けられるとは思わなかったのか怪訝な表情で聞き返してきた。
 うーん、貴族相手の交渉って苦手なんだけどね。
しおりを挟む
感想 283

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

処理中です...