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二章
シルフ、鶴の一声
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オスト公の中では過去から現在に至るまでの歴史、そして王国の成り立ち。そして人間の数々の愚行、極めつけのヴィルベルヴィントの凶行。これらを考えているんだろう。暫く無言になって考えている。
もちろん政治的にも高度な判断が求められるだろうしね。答えを急くつもりはないよ。
「今すぐに返答する事は難しい。が、我々の掴んだ情報と照らし合わせると、グリペン侯の思惑は恐らく私個人の考えと相反するものではない」
だがな、と前置きしてオスト公は続けた。
「その成り立ちから、四公家と二候四伯家は互いを牽制するものである。どちらかが力を持ちすぎて暴走しない為にな」
なるほど。勢力の一極化を避けるためか。だけど実際はどうだろう?
少なくとも今のグリペン侯爵家は光の加護を失われているはずだ。だから光の聖剣とも言うべき侯爵家の始祖が使っていたという宝剣は力を発揮できずに王家に献上されているし、侯爵自身もそれに固執している様子もない。
「ルークス、君はこの事について何か?」
僕はノワールではなくルークスに訊ねた。もしかしたら彼が直接侯爵家に加護を与えていた者かもしれないからね。
「光と闇の精霊は私達だけではありません。数は少ないですが他にもいます。そのうちの誰かが加護を与えていたかも知れませんが、私ではありませんね」
そうか、残念。
「それに私の加護はデライラ様のものです。望まれればデライラ様に国の一つも献上致しますが」
「ふぉっふぉっふぉ。それはいいのう!」
ちょっと今デリケートな話をしてるんだからそういうのやめて!
ルークスも調子に乗らない!
「な、なあ? 光とか闇とか一体何の話だ?」
ああ、そう言えばタッカーさんは知らないのか。封印された光と闇の話は貴族だから知ってるって訳じゃないんだね。
「タッカー卿、これは国内でも一部の人間しか知らぬ極秘事項なのだ。時が来るまでは他言無用」
「は」
オスト公の妙にプレッシャーを掛けるような一言に、タッカーさんが大人しく頷く。
「閣下、これを知っているのは?」
「現国王陛下、そして陛下がタイミングを見て王家を継ぐ者に口伝する。あとは四公家と二候家の当主だけだ」
さらに、その四公家、二候家の当主には、新たに当主なった際に王城に赴いた時、国王陛下より口伝されるのだそうだ。一切書面に残さず、口伝のみというのが興味深い。
ただ、光と闇という属性に関しては、ある日突然精霊が姿を消したため、その属性そのものが世界から消失した事になっているらしい。四大精霊王の仕業だという事は隠されているみたいだ。
(ショーンよ。少しオストの者と話がしたい)
その時、意識の中にシルフが話しかけてきた。どうやら聞いていたらしい。ノワール、頼むよ。
「畏まりました」
ノワールがそう答えると、影の中から薄緑色の球形の霊体が現れた。アレが今の弱体化した風の精霊王シルフだ。
「オストの者よ。私は風の精霊王シルフだ。このような姿だがな」
「はっ!? ははっ!」
シルフと聞いてオスト公が畏まる。シルフ自身もノワールから何かしらの制約を受けているのか、暴れる心配は無さそうだ。
「聞くがよい。われら精霊王は太古の昔、とある者に唆され光と闇の全ての精霊を封印した。その時には既に洗脳されていたのだろう。その二つの属性の者を感じれば、抗えぬ憎悪を抱く」
「なんと……」
口伝で代々伝えられた事に隠されていた真実に、オスト公が驚愕している。
「幸い此度の戦いで私の洗脳は解かれたが、おかげで思い出した事もある」
「は」
「私以外の精霊王の洗脳も解かねばならぬ。よって、私も回復を待ちながらこやつらと行動を共にし、手助けをするつもりだ。オストよ。貴様もそのようにせよ」
「は」
シルフの言い分にオスト公が頭を垂れるが、僕達にとっては『はあ!?』だ。でも僕等のその反応にシルフは。
「当然だろう? 私を洗脳した者にはきっちりと報復せねばならん」
あ、そうですか。
「それからあの若造は、洗脳されていた私が憑依して動かした。ヤツの本意ではない。しかし、憑依される時点で心が弱く汚れている。しっかりと更生させよ。魔法の才はある」
「ははっ」
またしてもシルフの言葉にオスト公がテーブルに額を擦り付けるようにした。
「ちょっとあなた。何を勝手に話を進めているのですか?」
「ひぇっ」
そこで今まで黙って見ていたノワールから、シルフに向けて強烈な殺気が放たれた。
「ま、待て! 何も悪い話ではあるまい!」
単なる丸い霊体のシルフが、冷や汗をかきながら震えているように見えて面白い。
「ほ、ほら! 風の精霊達が貴様の主に協力的になっているだろう?」
そんなシルフの一言で、ノワールや他の皆が僕を見て驚いていた。そして僕も驚いた。風の精霊が僕の周囲に集まって、燐光を振りまいていたんだ。
「ご主人様が強くなるのならよろしい。では、これから仲良くしましょうね」
極上の笑顔でそう宣うノワールが可愛い。シルフはノワールの変わり身の早さに呆れていたけどね。
もちろん政治的にも高度な判断が求められるだろうしね。答えを急くつもりはないよ。
「今すぐに返答する事は難しい。が、我々の掴んだ情報と照らし合わせると、グリペン侯の思惑は恐らく私個人の考えと相反するものではない」
だがな、と前置きしてオスト公は続けた。
「その成り立ちから、四公家と二候四伯家は互いを牽制するものである。どちらかが力を持ちすぎて暴走しない為にな」
なるほど。勢力の一極化を避けるためか。だけど実際はどうだろう?
少なくとも今のグリペン侯爵家は光の加護を失われているはずだ。だから光の聖剣とも言うべき侯爵家の始祖が使っていたという宝剣は力を発揮できずに王家に献上されているし、侯爵自身もそれに固執している様子もない。
「ルークス、君はこの事について何か?」
僕はノワールではなくルークスに訊ねた。もしかしたら彼が直接侯爵家に加護を与えていた者かもしれないからね。
「光と闇の精霊は私達だけではありません。数は少ないですが他にもいます。そのうちの誰かが加護を与えていたかも知れませんが、私ではありませんね」
そうか、残念。
「それに私の加護はデライラ様のものです。望まれればデライラ様に国の一つも献上致しますが」
「ふぉっふぉっふぉ。それはいいのう!」
ちょっと今デリケートな話をしてるんだからそういうのやめて!
ルークスも調子に乗らない!
「な、なあ? 光とか闇とか一体何の話だ?」
ああ、そう言えばタッカーさんは知らないのか。封印された光と闇の話は貴族だから知ってるって訳じゃないんだね。
「タッカー卿、これは国内でも一部の人間しか知らぬ極秘事項なのだ。時が来るまでは他言無用」
「は」
オスト公の妙にプレッシャーを掛けるような一言に、タッカーさんが大人しく頷く。
「閣下、これを知っているのは?」
「現国王陛下、そして陛下がタイミングを見て王家を継ぐ者に口伝する。あとは四公家と二候家の当主だけだ」
さらに、その四公家、二候家の当主には、新たに当主なった際に王城に赴いた時、国王陛下より口伝されるのだそうだ。一切書面に残さず、口伝のみというのが興味深い。
ただ、光と闇という属性に関しては、ある日突然精霊が姿を消したため、その属性そのものが世界から消失した事になっているらしい。四大精霊王の仕業だという事は隠されているみたいだ。
(ショーンよ。少しオストの者と話がしたい)
その時、意識の中にシルフが話しかけてきた。どうやら聞いていたらしい。ノワール、頼むよ。
「畏まりました」
ノワールがそう答えると、影の中から薄緑色の球形の霊体が現れた。アレが今の弱体化した風の精霊王シルフだ。
「オストの者よ。私は風の精霊王シルフだ。このような姿だがな」
「はっ!? ははっ!」
シルフと聞いてオスト公が畏まる。シルフ自身もノワールから何かしらの制約を受けているのか、暴れる心配は無さそうだ。
「聞くがよい。われら精霊王は太古の昔、とある者に唆され光と闇の全ての精霊を封印した。その時には既に洗脳されていたのだろう。その二つの属性の者を感じれば、抗えぬ憎悪を抱く」
「なんと……」
口伝で代々伝えられた事に隠されていた真実に、オスト公が驚愕している。
「幸い此度の戦いで私の洗脳は解かれたが、おかげで思い出した事もある」
「は」
「私以外の精霊王の洗脳も解かねばならぬ。よって、私も回復を待ちながらこやつらと行動を共にし、手助けをするつもりだ。オストよ。貴様もそのようにせよ」
「は」
シルフの言い分にオスト公が頭を垂れるが、僕達にとっては『はあ!?』だ。でも僕等のその反応にシルフは。
「当然だろう? 私を洗脳した者にはきっちりと報復せねばならん」
あ、そうですか。
「それからあの若造は、洗脳されていた私が憑依して動かした。ヤツの本意ではない。しかし、憑依される時点で心が弱く汚れている。しっかりと更生させよ。魔法の才はある」
「ははっ」
またしてもシルフの言葉にオスト公がテーブルに額を擦り付けるようにした。
「ちょっとあなた。何を勝手に話を進めているのですか?」
「ひぇっ」
そこで今まで黙って見ていたノワールから、シルフに向けて強烈な殺気が放たれた。
「ま、待て! 何も悪い話ではあるまい!」
単なる丸い霊体のシルフが、冷や汗をかきながら震えているように見えて面白い。
「ほ、ほら! 風の精霊達が貴様の主に協力的になっているだろう?」
そんなシルフの一言で、ノワールや他の皆が僕を見て驚いていた。そして僕も驚いた。風の精霊が僕の周囲に集まって、燐光を振りまいていたんだ。
「ご主人様が強くなるのならよろしい。では、これから仲良くしましょうね」
極上の笑顔でそう宣うノワールが可愛い。シルフはノワールの変わり身の早さに呆れていたけどね。
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