残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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三章

結論。やっぱり悪いのはアレ。

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 翌朝、宿の食堂にて。

「なんか久しぶりに熟睡出来たわ!」

 テーブルに並ぶ朝食の前で、やけにスッキリした笑顔を浮かべているのはデライラ。

「そっか、それは良かったね……」

 対する僕は非常に寝不足だ。
 そうだね、理由は、部屋割りがあまり意味がなかった事にある。
 男子と女子に部屋を分けたはいいんだけど――

「眷属が主から離れる訳にはいかん!」
「私とご主人様は一心同体です」

 アーテルとノワールはそういう理論武装で僕達の部屋へ侵入してきた。影泳ぎで来られては物理的な壁や扉なんて意味を成さないからね。
 そして見女麗しい少女姿のノワールと、大人の色香を発散させている美女姿のアーテルが同じ部屋の中にいるとあっては、好色なグランツがじっとしていられる訳がない。
 三人用の部屋に五人いるだけでも窮屈なのに、ノワールは僕から離れないし、隙を狙ってアーテルの尻に手を伸ばすグランツと、尻を死守するアーテルのバトルが勃発する。こんな状況で熟睡なんかできるもんか。
 尚、ルークスは我関せずといった感じで、一番端のベッドでスヤスヤと眠っていた。
 結果、デライラだけが広い部屋を一人で占有し、惰眠を貪ったという訳なんだけど、ノワールにくっつかれていた僕とバトルを繰り広げていたアーテル、グランツの眷属コンビは著しい寝不足って状態。

「今日からまた部屋割りを変えてもらおう……」

 僕はモソモソとパンを齧りながらそう呟いた。

「ところで、今日はどうするの?」
「そうだね、一か月の滞在といろんなものを買い揃えるとなると、先立つものが必要だ。第二区画の冒険者ギルドルーバー支部へ行って、素材を売ったり依頼を探してみようかと思うんだ」

 パンを千切って口に運びながら聞いて来るデライラに、今日の方針を伝えた。別に金銭的に困ってる事はないんだけどね。グリペン領にいる時に稼いだお金はまだまだあるし。
 僕達の方針に関しては、大精霊や眷属達は何か事情がない限り口出しする事はない。今も僕とデライラ以外は話を聞いているだけで静かに食事をしている。ああ、アーテルは三度目のお代わりに手を付けたところだ。

「ああ、あんたが溜め込んでる素材も相当な量なんでしょ?」
「うん。王都のギルドなら大量に売却してもあんまり騒ぎにならないと思ってさ」

 ノワールが覚醒した直後に、二人で森の中で魔物を狩り尽くしたやつや、ダンジョン内で倒した魔物の素材がそれこそ掃いて捨てる程ある。全部流通させたら市場に影響が出るかも知れないけど、王都以外では捌けないと思うんだよね、量が多すぎて。
 流石に公衆の面前で影収納を使う訳にはいかないから、デライラがグリペン侯爵から下賜されたマジックバッグを上手く使おうと思っている。

「そうかもね。じゃあ今日は第二区画へ行きましょう!」

 デライラがそう言うと、もりもりと朝食を食べ始めた。そしてアーテルは四度目のお代わりだ。見た目は人間だけど胃袋は神狼のままなのかな。
 外観の立派さに負けず劣らず、食事の方も大変美味しく大満足の僕達は、第二区画へと向かう。王城を中心に、第一防壁、第二防壁、第三防壁があり、それぞれの防壁の内側が第一区画、第二区画、第三区画となっている。僕達はその第一防壁を抜けて第二区画へと向かう訳だね。
 外から中に入るには厳しいチェックがあるが、中から外へ出る分には簡単な手続きで済む。名簿に名前を書くだけ。これが逆の場合は身分やら目的やら滞在日数やら、細かくチェックされるんだけどね。
 それでも僕達はゴールドランク冒険者のパーティという事で身分がハッキリしているし、良くも悪くもブンドルに目を付けられているって事で有名らしいから、入出門を管理する役人さんも苦笑いしながら通してくれる。

「あんたらの事は聞いているが、あまり騒ぎを起こさんでくれよ?」
「それはブンドルに言って下さい」
「アレが絡んだ事件は黒も白にされちまうからよ。大変なんだよ俺達下のモンは」

 門の守衛さんとのやり取りでこんな会話があった。やっぱりブンドルの影響が及んでいるのは公然の事実で、しかも甘い汁を吸っているのはある程度の権力を持つ者に限られている事が分かる。一般の人達はその影で苦い思いをしているんだなあ。

「民がこのような思いをしているというのに、今の王とやらは暗君なのですね」

 第一防壁から第二区画へと抜けて、街並みを眺めながら歩いていると、不意にノワールがそう漏らした。
 僕達がブンドルに関わってからロクな事がないので、そういう印象になっちゃうんだろうね。

「確かにヤツに苦しめられている人間はいる。僕みたいにヤツの思い通りにいかない人とかね。でも大多数の人達はどうだろう?」

 そう言うと、ノワールは考え込んでしまった。
 もちろんブンドルに不満を抱いている者は大勢いると思う。でも、日々の暮らしはどうだろう。平和で安定した暮らしをしている人は、王の施政にそれほど不満って訳じゃないと僕は思っている。

「そうね。商売とは縁が薄い生活を送っていたあたし達は、コイツがブンドルを張り倒すまでは特に不満はなかったものね」

 いや、僕は張り倒してなんかいないぞ。
 そんな事を言っているうちに、ギルドの前に到着した。
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