残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO

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三章

僕達の命は金では買えないが、君達の命はクズ以下だ

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「もう一度だけ聞きますよ? あなた方を雇ったのはブンドルですか?」

 恐らくこの中では最強だったであろう、暴風のアナークが瞬殺された事、そして脱出不可能な結界に閉じ込められた事で、追跡者達の戦意は大きく削がれた。

「そ、そうだ! 俺達はブンドルの旦那の私兵だぞ! こんな事してタダで済むと――ゴフッ」

 ブンドルから金を貰って人を殺しに来る時点で、僕の心から慈悲の心は消え失せた。自分をブンドルの私兵だと宣う男を双戟の穂先で一突きにする。

(シルフ。結界を徐々に狭めてくれるかい?)
(ふふ、何とも性格の悪い男だな。承知した)

 結界のエリアを狭くしていく事で、逃げられない恐怖を与えると共に、手間も省いてしまおう。そして、こいつらがブンドルの配下だとハッキリした為、ノワール、アーテルがまるで遠慮のない蹂躙劇を始めた。
 まさに手当たり次第というヤツだね。魔力で強化した身体は敵に反応させる事すら許さず、次々に相手を屠っていく。
 そもそも、プラチナランクに昇格しようという僕を相手に、五十人や六十人の私兵を送り込んで来た所で、どうにかなるとでも思ったのだろうか?

「くそっ! あの女だ! 女剣士を狙え!」

 僕やノワール、アーテル相手では歯が立たないと悟ったのか、一気に四人がデライラに向かった。

「舐められたものね」

 デライラはそう言いながらため息をつく。そして中腰に構えた剣を逆水平に鋭く振り抜いた。
 まだ間合いの外。しかし向かって来た四人は上半身と下半身が生き別れになった。僕が『暴風』を倒した時と同じ、魔力を飛ばす技だね。もっとも、彼女が剣に込めたのは光属性の魔力なので、白く輝く斬撃が放たれたのが一瞬だけ見えた。

「我が主を見誤るとは愚かな」

 ルークスは手にした長めのワンドを振るった。すると、ワンドの先端から光の筋が伸びていき、やがてそれは鞭にように複雑に、そして不規則に動き始めた。
 襲撃者はその光の鞭の動きに対応出来ずに打ち据えられ、逃れようとする者があれば足を絡め取る。
 ルークスは手首を小さく動かしているだけだ。すごいな。あれも魔法の一種なのかな?

「儂は面倒が嫌いでな。貴様等は勝手に死ぬがいい」

 またグランツが大きな杖を天に向かって掲げると、いくつかの光の玉が杖に向かって集まって来た。

「うわあ! 何だ! 真っ暗だぞ!」
「見えない! 何も見えない!」

 数人の襲撃者は、突然視力を奪われたのか、パニックに陥って同士討ちを始めた。

「グランツ、今のは?」

 彼に近付きそう訊ねると、少年のような笑みを浮かべて言った。

「なに、奴らから『光』を奪ったのじゃよ。なにも暗闇にするのは闇属性の専売特許ではないぞい」

 ルークスもグランツも、今まで見せた事のないを見せる。彼等は戦闘の際、前衛で奮戦するデライラのフォローに回り、あまり目立った活躍をする事はない。彼女の安全を第一に行動しているように見える。でも大精霊に神獣なんだし、まともに戦えば途轍もなく強大な力を持っているんだろうね。
 それでも、闇に属するノワールやアーテルは何故か正面から力で粉砕するような戦い方を好むのに対し、光の二人は搦め手で戦うのを好むみたいだね。
 僕が抱いていた言葉のイメージは真逆だったんだけど。

「ご主人様。勿論我々闇の者は、人知れずにそっと、殺される本人すら気付かないうちに仕留めるのが得意なんですよ?」
「そうだとも。故に我はミスティウルフと呼ばれるようになったのだ。しかしそれでは我等の活躍を主人に見てもらえぬではないか!」
「そうですそうです」

 僕との会話の合間に敵を蹴り飛ばしながらノワールがそう言えば、アーテルも相手を殴り飛ばしておきながらいい笑顔でそう言う。
 確かに精霊の姿になれば見られる事なく暗殺するなんてお手のものだろうし、色んな証拠を影の中に収納すれば足も付かないだろうね。そしてミスティウルフとは、目ではっきりと認識する事が困難な事からそう呼ばれるようになった俗称に近い。
 どちらも他者に見られる事なく、という意味ではまさに闇に属する者なんだけど、それだと僕に褒めてもらえないというのが派手に戦っている理由らしい。

「そうだったんだ。大丈夫、二人共感謝しているからね」

 僕がそう言う頃には風の障壁もだいぶ狭くなり、残っている襲撃者ものこりは一人。

「さて、残りはあなただけです。最後にもう一度だけ聞きますね。ブンドルの差し金ですか?」
「そ、そうだ! な、もういいだろ? 助けてくれよ! な? な?」

 どれだけの金を握らされたのか知らないけど、僕達の命は金で買えるような安いものじゃないんだよね。だけど、はした金で他人の命を奪おうとするお前達の命はなんの価値もない。
 だから命乞いなんて聞き入れられないね。

「金でこんな仕事を引き受けるから、こういう事になるんですよ。さようなら」
「ひっ……」

 最後の一人を仕留めた時、何の感情も湧かなかったな。ただ、ブンドルに対する怒りだけは前以上に込み上げてきた。

「ブンドルを倒すまでこんな事が続くのかしらね」

 戦場となった公園から宿への帰り道、ボソリとデライラが零した。

「そうだね……ん?」

 そんな彼女に返事をした時だ。既に暗くなっている空がオレンジ色に染まっている所がある。

「なんだろう? 火事かな?」
「ね、あっちって、ケビンさんの工房の方角じゃない?」

 僕達は顔を見合わせた。なんだか猛烈にイヤな予感がする。全員が影の中に潜り、影泳ぎでケビンさんの工房へと急いだ。
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