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四章
オスト領再び
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体感で数時間。僕の体感では一時間くらいかな。ノワールの後を追って影から浮上する。相変わらずお尻の形がピッタリと出るボディスーツを後ろから見るのは目のやり場に困る。ちらっと振り向いて意味深な微笑みを浮かべるのは止めなさい。
ここは街道からやや外れた森の中。ぱっと見の風景はポーバーグ郊外の森とそんなに違いはないけれど、少し街道を歩けばオストバーグ独特の街並みが見えてくるはずだ。
「ふう……ここはホントにオストバーグ近郊なのかい? 私の体感では三、四時間しか経っていないんだが」
一番最後に影から浮上してきたヨシュア君が、森の木々を見渡してそう言う。そっか、ヨシュア君の体感では僕の三倍から四倍くらいは時間が経過しているのか。その辺の時間効率みたいなものは属性に対する親和性が関係しているのかもしれないね。そしてその分ヨシュア君の疲労度は大きい訳だね。
「街道に出て、少し歩けばわかりますよ」
僕達はてくてくと歩みを進め、森から出て街道へ出る。そして街道を進んでいくと……
「……驚いたな。この独特の街の景観はオストバーグじゃないか……」
そう、街の中心を突っ切るように街道が走っている独特の都市設計。王都に向かって軍勢を進める者は、このオストバーグの市街地で挟撃を受ける事になる。代々のオスト公爵は、自分の領地を犠牲にしてでも王都への損害を抑えるためにこの街を発展させてきたと言っていい。
「本来なら馬車でも数日かかる距離を僅か数時間で……とんでもない人物だね、君は」
ヨシュア君にしては珍しく、表情に余裕がない。冷や汗すら流している。
「そうですか?」
「そうだろう? この力があれば、離れた場所にいる敵の親玉に一瞬で接近し、首を取る事も可能じゃないのかい?」
「ええ、可能ですね」
「そんなあっさりと……」
ヨシュア君は、どうやら私はとんでもない恐ろしい男と友誼を結んでしまったようだ、なんて口走りながら頭を振っている。
失礼な。僕は僕の敵にしかそういう事はしないよ?
そんな事を言いながらオストバーグへの入場を待つ行列へと並ぶ。流石に公爵領の領都ともなると、人の数も凄い。ポーバーグや辺境にあるグリフォバーグとは比べ物にならないね。以前来た時はタッカーさんの馬車で来たので、貴族専用の通用門から入ったので、これほどの行列が出来ているとは気付かなかった。
「私達も貴族専用の門から入ろうか」
ヨシュア君がそう言ってツカツカと歩いていってしまう。
「いいのですか?」
「構わないよ。使えるものは使った方がいいだろ? どうせオスト公にも会いに行くんだし」
てっきりヨシュア君はお忍びの旅を楽しむものだと思っていたんだけど。僕が効率を重視して影泳ぎを使った事から、自分も貴族特権を使って時間を有効に使おうと思ったのかな?
「それに君だってプラチナランカーなんだ。私の身分などアテにしなくても優先で門を通過する事くらい出来るだろう?」
「そうなんですか?」
確かに貴族も強く口出しできない程の社会的身分を得るとは聞いていたけど、そういう事も出来るんだ?
「特に何が出来るとか、決まっている訳じゃないよ。プラチナランカーが必要と感じた時にその特権を振るえばいい。そもそも、君という人間をプラチナに推薦した時点で、特権を理不尽に行使しない人格者と信じた訳だしね。父上の顔に泥を塗るような真似はしないでくれよ?」
ヨシュア君がウインクしながらそう告げた。なるほど。僕がプラチナランカーになった時点でグリペン侯爵の看板も背負ってしまっている訳か。
「それなら、侯爵の顔を潰さない為にも、ここはヨシュア君にお願いします」
「ははは。それでいいのさ」
△▼△
ヨシュア君の貴族特権でオストバーグに入った僕達は、そのままオスト公爵の居城に向かった。街での情報収集はノワールに任せているので、城に同行するのはヨシュア君とアーテルだ。
城門の番兵は僕の顔を覚えていたらしく、猛ダッシュで上役に知らせに行った。そしてその上役にヨシュア君の身分を伝えると、彼も猛ダッシュで城に戻って行った。
僕等が唖然として待っていると、現れたのは侍女が押す車椅子に乗った若い男。グレーの髪にグリーンの瞳のイケメン。ヴィルベルヴィント様だね。どうやら僕達と戦った時のダメージがまだ癒えていないらしい。
それにしても、突然の来訪にもかかわらず公子自ら出迎えとは。
「やあ、突然の事で碌なもてなしも出来ないが、取り敢えず中で話そう。君には色々と話さねばならない事がある」
彼に悪意は感じられない。企みがあるとは思えないけど、どうかな? 今も僕達に無警戒に背を向けて城に向かって行くけど。
(なに、私がいればオストの一族は何も出来ない。今はお前の味方ゆえな。安心してよかろう)
影の中からシルフの声が頭の中に響く。シルフがそう言うなら安心かな。ヴィルベルヴィント様が何かしようとしても、風の精霊王が全てを止めてくれるという事だ。
ここは街道からやや外れた森の中。ぱっと見の風景はポーバーグ郊外の森とそんなに違いはないけれど、少し街道を歩けばオストバーグ独特の街並みが見えてくるはずだ。
「ふう……ここはホントにオストバーグ近郊なのかい? 私の体感では三、四時間しか経っていないんだが」
一番最後に影から浮上してきたヨシュア君が、森の木々を見渡してそう言う。そっか、ヨシュア君の体感では僕の三倍から四倍くらいは時間が経過しているのか。その辺の時間効率みたいなものは属性に対する親和性が関係しているのかもしれないね。そしてその分ヨシュア君の疲労度は大きい訳だね。
「街道に出て、少し歩けばわかりますよ」
僕達はてくてくと歩みを進め、森から出て街道へ出る。そして街道を進んでいくと……
「……驚いたな。この独特の街の景観はオストバーグじゃないか……」
そう、街の中心を突っ切るように街道が走っている独特の都市設計。王都に向かって軍勢を進める者は、このオストバーグの市街地で挟撃を受ける事になる。代々のオスト公爵は、自分の領地を犠牲にしてでも王都への損害を抑えるためにこの街を発展させてきたと言っていい。
「本来なら馬車でも数日かかる距離を僅か数時間で……とんでもない人物だね、君は」
ヨシュア君にしては珍しく、表情に余裕がない。冷や汗すら流している。
「そうですか?」
「そうだろう? この力があれば、離れた場所にいる敵の親玉に一瞬で接近し、首を取る事も可能じゃないのかい?」
「ええ、可能ですね」
「そんなあっさりと……」
ヨシュア君は、どうやら私はとんでもない恐ろしい男と友誼を結んでしまったようだ、なんて口走りながら頭を振っている。
失礼な。僕は僕の敵にしかそういう事はしないよ?
そんな事を言いながらオストバーグへの入場を待つ行列へと並ぶ。流石に公爵領の領都ともなると、人の数も凄い。ポーバーグや辺境にあるグリフォバーグとは比べ物にならないね。以前来た時はタッカーさんの馬車で来たので、貴族専用の通用門から入ったので、これほどの行列が出来ているとは気付かなかった。
「私達も貴族専用の門から入ろうか」
ヨシュア君がそう言ってツカツカと歩いていってしまう。
「いいのですか?」
「構わないよ。使えるものは使った方がいいだろ? どうせオスト公にも会いに行くんだし」
てっきりヨシュア君はお忍びの旅を楽しむものだと思っていたんだけど。僕が効率を重視して影泳ぎを使った事から、自分も貴族特権を使って時間を有効に使おうと思ったのかな?
「それに君だってプラチナランカーなんだ。私の身分などアテにしなくても優先で門を通過する事くらい出来るだろう?」
「そうなんですか?」
確かに貴族も強く口出しできない程の社会的身分を得るとは聞いていたけど、そういう事も出来るんだ?
「特に何が出来るとか、決まっている訳じゃないよ。プラチナランカーが必要と感じた時にその特権を振るえばいい。そもそも、君という人間をプラチナに推薦した時点で、特権を理不尽に行使しない人格者と信じた訳だしね。父上の顔に泥を塗るような真似はしないでくれよ?」
ヨシュア君がウインクしながらそう告げた。なるほど。僕がプラチナランカーになった時点でグリペン侯爵の看板も背負ってしまっている訳か。
「それなら、侯爵の顔を潰さない為にも、ここはヨシュア君にお願いします」
「ははは。それでいいのさ」
△▼△
ヨシュア君の貴族特権でオストバーグに入った僕達は、そのままオスト公爵の居城に向かった。街での情報収集はノワールに任せているので、城に同行するのはヨシュア君とアーテルだ。
城門の番兵は僕の顔を覚えていたらしく、猛ダッシュで上役に知らせに行った。そしてその上役にヨシュア君の身分を伝えると、彼も猛ダッシュで城に戻って行った。
僕等が唖然として待っていると、現れたのは侍女が押す車椅子に乗った若い男。グレーの髪にグリーンの瞳のイケメン。ヴィルベルヴィント様だね。どうやら僕達と戦った時のダメージがまだ癒えていないらしい。
それにしても、突然の来訪にもかかわらず公子自ら出迎えとは。
「やあ、突然の事で碌なもてなしも出来ないが、取り敢えず中で話そう。君には色々と話さねばならない事がある」
彼に悪意は感じられない。企みがあるとは思えないけど、どうかな? 今も僕達に無警戒に背を向けて城に向かって行くけど。
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