151 / 206
四章
オスト領再び
しおりを挟む
体感で数時間。僕の体感では一時間くらいかな。ノワールの後を追って影から浮上する。相変わらずお尻の形がピッタリと出るボディスーツを後ろから見るのは目のやり場に困る。ちらっと振り向いて意味深な微笑みを浮かべるのは止めなさい。
ここは街道からやや外れた森の中。ぱっと見の風景はポーバーグ郊外の森とそんなに違いはないけれど、少し街道を歩けばオストバーグ独特の街並みが見えてくるはずだ。
「ふう……ここはホントにオストバーグ近郊なのかい? 私の体感では三、四時間しか経っていないんだが」
一番最後に影から浮上してきたヨシュア君が、森の木々を見渡してそう言う。そっか、ヨシュア君の体感では僕の三倍から四倍くらいは時間が経過しているのか。その辺の時間効率みたいなものは属性に対する親和性が関係しているのかもしれないね。そしてその分ヨシュア君の疲労度は大きい訳だね。
「街道に出て、少し歩けばわかりますよ」
僕達はてくてくと歩みを進め、森から出て街道へ出る。そして街道を進んでいくと……
「……驚いたな。この独特の街の景観はオストバーグじゃないか……」
そう、街の中心を突っ切るように街道が走っている独特の都市設計。王都に向かって軍勢を進める者は、このオストバーグの市街地で挟撃を受ける事になる。代々のオスト公爵は、自分の領地を犠牲にしてでも王都への損害を抑えるためにこの街を発展させてきたと言っていい。
「本来なら馬車でも数日かかる距離を僅か数時間で……とんでもない人物だね、君は」
ヨシュア君にしては珍しく、表情に余裕がない。冷や汗すら流している。
「そうですか?」
「そうだろう? この力があれば、離れた場所にいる敵の親玉に一瞬で接近し、首を取る事も可能じゃないのかい?」
「ええ、可能ですね」
「そんなあっさりと……」
ヨシュア君は、どうやら私はとんでもない恐ろしい男と友誼を結んでしまったようだ、なんて口走りながら頭を振っている。
失礼な。僕は僕の敵にしかそういう事はしないよ?
そんな事を言いながらオストバーグへの入場を待つ行列へと並ぶ。流石に公爵領の領都ともなると、人の数も凄い。ポーバーグや辺境にあるグリフォバーグとは比べ物にならないね。以前来た時はタッカーさんの馬車で来たので、貴族専用の通用門から入ったので、これほどの行列が出来ているとは気付かなかった。
「私達も貴族専用の門から入ろうか」
ヨシュア君がそう言ってツカツカと歩いていってしまう。
「いいのですか?」
「構わないよ。使えるものは使った方がいいだろ? どうせオスト公にも会いに行くんだし」
てっきりヨシュア君はお忍びの旅を楽しむものだと思っていたんだけど。僕が効率を重視して影泳ぎを使った事から、自分も貴族特権を使って時間を有効に使おうと思ったのかな?
「それに君だってプラチナランカーなんだ。私の身分などアテにしなくても優先で門を通過する事くらい出来るだろう?」
「そうなんですか?」
確かに貴族も強く口出しできない程の社会的身分を得るとは聞いていたけど、そういう事も出来るんだ?
「特に何が出来るとか、決まっている訳じゃないよ。プラチナランカーが必要と感じた時にその特権を振るえばいい。そもそも、君という人間をプラチナに推薦した時点で、特権を理不尽に行使しない人格者と信じた訳だしね。父上の顔に泥を塗るような真似はしないでくれよ?」
ヨシュア君がウインクしながらそう告げた。なるほど。僕がプラチナランカーになった時点でグリペン侯爵の看板も背負ってしまっている訳か。
「それなら、侯爵の顔を潰さない為にも、ここはヨシュア君にお願いします」
「ははは。それでいいのさ」
△▼△
ヨシュア君の貴族特権でオストバーグに入った僕達は、そのままオスト公爵の居城に向かった。街での情報収集はノワールに任せているので、城に同行するのはヨシュア君とアーテルだ。
城門の番兵は僕の顔を覚えていたらしく、猛ダッシュで上役に知らせに行った。そしてその上役にヨシュア君の身分を伝えると、彼も猛ダッシュで城に戻って行った。
僕等が唖然として待っていると、現れたのは侍女が押す車椅子に乗った若い男。グレーの髪にグリーンの瞳のイケメン。ヴィルベルヴィント様だね。どうやら僕達と戦った時のダメージがまだ癒えていないらしい。
それにしても、突然の来訪にもかかわらず公子自ら出迎えとは。
「やあ、突然の事で碌なもてなしも出来ないが、取り敢えず中で話そう。君には色々と話さねばならない事がある」
彼に悪意は感じられない。企みがあるとは思えないけど、どうかな? 今も僕達に無警戒に背を向けて城に向かって行くけど。
(なに、私がいればオストの一族は何も出来ない。今はお前の味方ゆえな。安心してよかろう)
影の中からシルフの声が頭の中に響く。シルフがそう言うなら安心かな。ヴィルベルヴィント様が何かしようとしても、風の精霊王が全てを止めてくれるという事だ。
ここは街道からやや外れた森の中。ぱっと見の風景はポーバーグ郊外の森とそんなに違いはないけれど、少し街道を歩けばオストバーグ独特の街並みが見えてくるはずだ。
「ふう……ここはホントにオストバーグ近郊なのかい? 私の体感では三、四時間しか経っていないんだが」
一番最後に影から浮上してきたヨシュア君が、森の木々を見渡してそう言う。そっか、ヨシュア君の体感では僕の三倍から四倍くらいは時間が経過しているのか。その辺の時間効率みたいなものは属性に対する親和性が関係しているのかもしれないね。そしてその分ヨシュア君の疲労度は大きい訳だね。
「街道に出て、少し歩けばわかりますよ」
僕達はてくてくと歩みを進め、森から出て街道へ出る。そして街道を進んでいくと……
「……驚いたな。この独特の街の景観はオストバーグじゃないか……」
そう、街の中心を突っ切るように街道が走っている独特の都市設計。王都に向かって軍勢を進める者は、このオストバーグの市街地で挟撃を受ける事になる。代々のオスト公爵は、自分の領地を犠牲にしてでも王都への損害を抑えるためにこの街を発展させてきたと言っていい。
「本来なら馬車でも数日かかる距離を僅か数時間で……とんでもない人物だね、君は」
ヨシュア君にしては珍しく、表情に余裕がない。冷や汗すら流している。
「そうですか?」
「そうだろう? この力があれば、離れた場所にいる敵の親玉に一瞬で接近し、首を取る事も可能じゃないのかい?」
「ええ、可能ですね」
「そんなあっさりと……」
ヨシュア君は、どうやら私はとんでもない恐ろしい男と友誼を結んでしまったようだ、なんて口走りながら頭を振っている。
失礼な。僕は僕の敵にしかそういう事はしないよ?
そんな事を言いながらオストバーグへの入場を待つ行列へと並ぶ。流石に公爵領の領都ともなると、人の数も凄い。ポーバーグや辺境にあるグリフォバーグとは比べ物にならないね。以前来た時はタッカーさんの馬車で来たので、貴族専用の通用門から入ったので、これほどの行列が出来ているとは気付かなかった。
「私達も貴族専用の門から入ろうか」
ヨシュア君がそう言ってツカツカと歩いていってしまう。
「いいのですか?」
「構わないよ。使えるものは使った方がいいだろ? どうせオスト公にも会いに行くんだし」
てっきりヨシュア君はお忍びの旅を楽しむものだと思っていたんだけど。僕が効率を重視して影泳ぎを使った事から、自分も貴族特権を使って時間を有効に使おうと思ったのかな?
「それに君だってプラチナランカーなんだ。私の身分などアテにしなくても優先で門を通過する事くらい出来るだろう?」
「そうなんですか?」
確かに貴族も強く口出しできない程の社会的身分を得るとは聞いていたけど、そういう事も出来るんだ?
「特に何が出来るとか、決まっている訳じゃないよ。プラチナランカーが必要と感じた時にその特権を振るえばいい。そもそも、君という人間をプラチナに推薦した時点で、特権を理不尽に行使しない人格者と信じた訳だしね。父上の顔に泥を塗るような真似はしないでくれよ?」
ヨシュア君がウインクしながらそう告げた。なるほど。僕がプラチナランカーになった時点でグリペン侯爵の看板も背負ってしまっている訳か。
「それなら、侯爵の顔を潰さない為にも、ここはヨシュア君にお願いします」
「ははは。それでいいのさ」
△▼△
ヨシュア君の貴族特権でオストバーグに入った僕達は、そのままオスト公爵の居城に向かった。街での情報収集はノワールに任せているので、城に同行するのはヨシュア君とアーテルだ。
城門の番兵は僕の顔を覚えていたらしく、猛ダッシュで上役に知らせに行った。そしてその上役にヨシュア君の身分を伝えると、彼も猛ダッシュで城に戻って行った。
僕等が唖然として待っていると、現れたのは侍女が押す車椅子に乗った若い男。グレーの髪にグリーンの瞳のイケメン。ヴィルベルヴィント様だね。どうやら僕達と戦った時のダメージがまだ癒えていないらしい。
それにしても、突然の来訪にもかかわらず公子自ら出迎えとは。
「やあ、突然の事で碌なもてなしも出来ないが、取り敢えず中で話そう。君には色々と話さねばならない事がある」
彼に悪意は感じられない。企みがあるとは思えないけど、どうかな? 今も僕達に無警戒に背を向けて城に向かって行くけど。
(なに、私がいればオストの一族は何も出来ない。今はお前の味方ゆえな。安心してよかろう)
影の中からシルフの声が頭の中に響く。シルフがそう言うなら安心かな。ヴィルベルヴィント様が何かしようとしても、風の精霊王が全てを止めてくれるという事だ。
0
あなたにおすすめの小説
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる