残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

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四章

シルフの決心

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 翌朝、オスト公の屋敷を出る前に挨拶をしているところで、シルフが出現した。
 突然出て来たシルフにオスト公は跪いて首を垂れるも、シルフはそれを制止して言った。

「ショーンよ。これより我はオストと共に本来の役目を果たそうと思う」

 ははは。いきなりの決別宣言だ。ホントにいきなりなんだけど、僕にはなんとなく分かっていた。影の中で十分回復に努め、そろそろ本来の力を取り戻した頃だろう。それなのに、いつまでも僕の中にいる理由がない。

「貴様、そんな勝手を許すと思っているのか?」

 そこでノワールが怒りを露わにする。いつもと口調も違うし、眉も目尻も吊り上げて、本当に怒っている。

「不義を働いているのは承知の上だ。今までのやって来た事とショーンへの恩義を思えば、我も眷属となって尽くすのが正しいのかも知れぬ」

 そう言いながら、シルフが自らの魔力を僕に分け与えてくれた。何かこう、体内に含有されている風属性の魔力が増えた気がする。それに、風属性の魔法についての知識も頭の中に入ってきたようだ。

「風の加護か」
「すまぬな。今はそれで勘弁してもらえぬか。他の火、水、土が本気になって攻めてきた時、我の力なくば……」

 そうか。女王陛下の元にはデライラと光の眷属がいる。他の精霊王が相手でもそう簡単にはやられないだろうけど、オスト公はどうか。
 彼もかなりの魔法使いだけど、流石に精霊王を相手にして抗えるとは思えない。そこにユーイングさんあたりが介入してきても、彼が元々魔法使いである事を考えると、かなり不利だろうね。
 そこでシルフ自らもオスト公を守る為にここに留まりたいという訳だ。
 シルフとしても、長い間自分が加護を与えて守ってきた家だ。その当主をむざむざやらせたくはないという思いも強いんだろう。

「ああ、構わない。みんなを守ってやってくれ。あと、また洗脳とかされるんじゃないぞ?」

 シルフの表情は分からないけど、明らかに安堵した雰囲気が伝わってくる。

「良いのですか? ご主人様」
「ああ、僕にはノワールもアーテルもいる。それに風属性魔法も今まで以上に使えるようになったし」
「ご主人様がそう仰るのであれば」 

 僕が納得した上の事なので、ノワールもそれ以上シルフに対して何か言う事はなかった。

「すまぬ。この先何があろうと、風の精霊はお前の味方である事を誓おう」
「ああ。シルフ。そしてオスト公。みんなをよろしくお願いします」

 そう別れを告げて、僕達は王都に移動した。

「改めて考えると、凄い事だよね。精霊王を味方に付けるという事は、少なくとも風の魔法は全て無効化出来るという事だろう?」

 歩きながらヨシュア君が聞いてくる。

「どうかな? 眷属にしている訳じゃないから、完全に無効化まではいかない気がするけど」
「そうですね。ただ、加護を得ているご主人様に害を為そうとする相手に、力を貸す精霊は少ないと思います。ですので、放たれる魔法の威力は激減するでしょう」

 僕に補足して答えたノワールの言葉は、大体において予想通りのものだった。ただ、下級の精霊というのは中々現金なもので、大量の魔力を餌にすれば力を貸してくれたりもする。本当に『残滓』だった頃の僕が、無理矢理四大属性の魔法を発動させてた時みたいにね。

「むしろ厄介な事になるかも知れないのは君だぞ、ヨシュア君」

 そう言ったのはアーテルだ。視線はヨシュア君の腰の魔剣、ヒートブレイドへ。

「え?」
「もし火属性の精霊王が敵なら、その魔剣の効力な無くなるだろうなあ」
「あ……」

 アーテルに言われて気が付いたのか、ヨシュア君がハッとした顔だ。

「ふふ。魔剣の能力に頼らず、腕を磨いておけという事だ」

 ああ、これはアーテルの猛特訓が始まる予感がするぞ。

「なるほど。でもそれは望むところだ。元々この魔剣は兄上が継ぐべきものだしね」

 ヨシュア君も魔剣に頼る戦い方は良しとはしてないようだ。とは言っても、僕達と一緒に行動している限り、危険な目に遭う確率は高い。何か手を打っておかなきゃいけないかな。
 そんな事を言っている間に王城の正門が見えてきた。高い城壁に囲まれ、頑丈な門で王城を守るそこは、常時十人ほどの衛兵が詰めている。
 さて、デライラ達は元気かなっと。
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