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AD1855
33話 難民キャンプ
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三戸はアンジーに指示を出し、ナイチンゲールにレーションを食べさせた。教会の提供する質素な食事では明らかに栄養不足だ。それに睡眠不足も相まって体力は限界に近付いている。今後も怪我人の治療を続けるのであればここらでリフレッシュする必要がある。
そして食事を済ませて一段落ついたところを見計らい、三戸はナイチンゲールを連れて人通りの多い市街地へと繰り出した。
「何をするつもりなのですか?」
ナイチンゲールが訝しむ。
「そうなだぁ。あなたにはプロパガンダになってもらおうかと思いまして。得体の知れない俺達よりは、あなたの言葉の方が信憑性がある」
「は? プロパガンダですか?」
ここで三戸はナイチンゲールに趣旨を説明した。
街に溢れる難民達は食料事情も衛生状態も良くない上に、民家の軒下や物置小屋を借りて夜を明かす日々。それが長期間続けば心も体も病んでしまう。
その難民を集めて生活させる拠点を造ったのだが、果たして難民達が三戸達の呼びかけに応えて集まるだろうか。いきなりヘリコプターやら自動車やら、見た事もないような乗り物から降りてきた珍妙な格好をした者達よりも、神の使いが降臨したとまで言われているナイチンゲールの言葉に従うのは自明の理だ。
「なるほど。自惚れる訳ではありませんが、一定の説得力はありますね。シスター達にも手伝ってもらいましょう」
それならば、と、三戸は高機動車で教会へと戻りシスター達を何人か呼びに行く。その間、リチャードとサラディン、ナイチンゲールは難民達に声を掛けて集めて回った。ちなみにアンジーは当然のように三戸と行動を共にしている。
「おお、随分集まったな。こりゃ、テント増設だな。頼りにしてるぞ、アンジー?」
「はいっ! また頑張りますよー!」
三戸達が戻ってみると、すでにかなりの人数が集まっていた。二百人程度なら収容できる数のテントを用意したのだが、それでも不足かもしれない。
三戸に頼られて、むふん! と力こぶを作るポーズを見せるアンジー。全く力こぶは出来ていなかったが。
「おお、戻ったか、ミトよ! これでこの地区の難民はほぼ全員だそうだ!」
「うむ。教会の近くに固まっておったようでな、集めるのに然程手間はかからんかったわい」
リチャードとサラディンが手を振りながら三戸に近付いてくる。確かに数百人を集めた割には時間は掛かっていない。難民達も固まってコミュニティを作っていたのだろう。それに教会の近くであれば施しを受けるのにも便利だ。
「ご苦労さん。俺達はこの人達を運ぶから、悪いがもう少しここに残って護衛やってもらえるかい?」
「うむ! 余に任せておけ!」
「そうじゃな。難民達から事情も聞いておこう」
バトルマニアで脳筋でバトルマニアでバトルマニアな二人だが、基本的には気のいい男達だ。しかも、有能でもある。無為に時間を潰すつもりもないようで、それを聞いた三戸はにっこり笑う。
「さて、ピストン輸送しなくちゃな。アンジー7t二台出してくれ。俺とお前で動かそう」
「はい!」
三戸に言われて、アンジーは二台の大型トラックを出現させた。
「コイツの荷台に順番に乗れるだけ乗ってくれ! シスターさんも同乗してくれるか? その方が難民も安心するだろ」
「そうですね。では失礼します」
先に荷台に乗っていた三戸がシスターを引っ張り上げると、難民達も順番に乗り込んできた。もう一台の方でもアンジーが同じようにしている。
こうして、三戸とアンジーがそれぞれ運転する7tトラックで、難民達をキャンプへとピストン輸送するのだった。
*****
三戸達が難民を集めている頃、ジャンヌと関羽は難民キャンプの周辺を警戒していたり、テント群のレイアウトを変更したりと、適当に時間を潰していた。
その時、二人の耳が遠くからの悲鳴を拾う。
「関羽殿!」
「うむ! 南か!」
このキャンプ地から南の方向は、小規模な街や集落があるが、その先は海になっている。だからこそ、三戸は海に面したこの地をキャンプ地に選んだ。海からの魔物の侵攻は考えにくいからだ。
ジャンヌと関羽は、海岸線を見通せる場所まで走り、様子を探る。
「なんと……!」
「あんな所に!?」
二人が見たのは、海岸と集落の丁度間の陸地にぽっかりと口を開けた、瘴気の穴だった。
「やはり、あの魔物の巣は意志を持って動いているかのようだな!」
「そうですね! エルサレムの時もそうでしたが、人間の動きの裏をかくような動きです!」
斜面を駆け下りながら、忌々し気に二人は声を掛け合う。
「まずはそれがしが魔物を足止めしよう! ジャンヌ殿は人々の先導を!」
「分かりました! お気を付けて!」
関羽は魔物から逃げ惑う人々に目もくれず、一気に駆け下りて魔物の前に仁王立ちだ。一方ジャンヌは逃げる人達に必死に声をかける。
「丘の上に逃げなさい! 私達が食い止めます! 急いで!」
ジャンヌの声に多少落ち着きを取り戻した人達は、バラバラではなく纏まって避難するようになった。避難する方向がバラバラでは、いかに二人が強くても守り切れるものではない。
しかしその代償として、矢面に立った関羽が魔物の大群を一手に引き受ける事になる。
「ぬぅん!」
しかし関羽は落ち着き払っていた。青龍偃月刀を縦横無尽に振り回し、ドスンと石附を地面に突き立てて叫んだ。
「この青龍の刃の錆になりたい者からかかって参れ!」
不敵に髭を撫でつける関羽に、魔物の群れが殺到する。
そして食事を済ませて一段落ついたところを見計らい、三戸はナイチンゲールを連れて人通りの多い市街地へと繰り出した。
「何をするつもりなのですか?」
ナイチンゲールが訝しむ。
「そうなだぁ。あなたにはプロパガンダになってもらおうかと思いまして。得体の知れない俺達よりは、あなたの言葉の方が信憑性がある」
「は? プロパガンダですか?」
ここで三戸はナイチンゲールに趣旨を説明した。
街に溢れる難民達は食料事情も衛生状態も良くない上に、民家の軒下や物置小屋を借りて夜を明かす日々。それが長期間続けば心も体も病んでしまう。
その難民を集めて生活させる拠点を造ったのだが、果たして難民達が三戸達の呼びかけに応えて集まるだろうか。いきなりヘリコプターやら自動車やら、見た事もないような乗り物から降りてきた珍妙な格好をした者達よりも、神の使いが降臨したとまで言われているナイチンゲールの言葉に従うのは自明の理だ。
「なるほど。自惚れる訳ではありませんが、一定の説得力はありますね。シスター達にも手伝ってもらいましょう」
それならば、と、三戸は高機動車で教会へと戻りシスター達を何人か呼びに行く。その間、リチャードとサラディン、ナイチンゲールは難民達に声を掛けて集めて回った。ちなみにアンジーは当然のように三戸と行動を共にしている。
「おお、随分集まったな。こりゃ、テント増設だな。頼りにしてるぞ、アンジー?」
「はいっ! また頑張りますよー!」
三戸達が戻ってみると、すでにかなりの人数が集まっていた。二百人程度なら収容できる数のテントを用意したのだが、それでも不足かもしれない。
三戸に頼られて、むふん! と力こぶを作るポーズを見せるアンジー。全く力こぶは出来ていなかったが。
「おお、戻ったか、ミトよ! これでこの地区の難民はほぼ全員だそうだ!」
「うむ。教会の近くに固まっておったようでな、集めるのに然程手間はかからんかったわい」
リチャードとサラディンが手を振りながら三戸に近付いてくる。確かに数百人を集めた割には時間は掛かっていない。難民達も固まってコミュニティを作っていたのだろう。それに教会の近くであれば施しを受けるのにも便利だ。
「ご苦労さん。俺達はこの人達を運ぶから、悪いがもう少しここに残って護衛やってもらえるかい?」
「うむ! 余に任せておけ!」
「そうじゃな。難民達から事情も聞いておこう」
バトルマニアで脳筋でバトルマニアでバトルマニアな二人だが、基本的には気のいい男達だ。しかも、有能でもある。無為に時間を潰すつもりもないようで、それを聞いた三戸はにっこり笑う。
「さて、ピストン輸送しなくちゃな。アンジー7t二台出してくれ。俺とお前で動かそう」
「はい!」
三戸に言われて、アンジーは二台の大型トラックを出現させた。
「コイツの荷台に順番に乗れるだけ乗ってくれ! シスターさんも同乗してくれるか? その方が難民も安心するだろ」
「そうですね。では失礼します」
先に荷台に乗っていた三戸がシスターを引っ張り上げると、難民達も順番に乗り込んできた。もう一台の方でもアンジーが同じようにしている。
こうして、三戸とアンジーがそれぞれ運転する7tトラックで、難民達をキャンプへとピストン輸送するのだった。
*****
三戸達が難民を集めている頃、ジャンヌと関羽は難民キャンプの周辺を警戒していたり、テント群のレイアウトを変更したりと、適当に時間を潰していた。
その時、二人の耳が遠くからの悲鳴を拾う。
「関羽殿!」
「うむ! 南か!」
このキャンプ地から南の方向は、小規模な街や集落があるが、その先は海になっている。だからこそ、三戸は海に面したこの地をキャンプ地に選んだ。海からの魔物の侵攻は考えにくいからだ。
ジャンヌと関羽は、海岸線を見通せる場所まで走り、様子を探る。
「なんと……!」
「あんな所に!?」
二人が見たのは、海岸と集落の丁度間の陸地にぽっかりと口を開けた、瘴気の穴だった。
「やはり、あの魔物の巣は意志を持って動いているかのようだな!」
「そうですね! エルサレムの時もそうでしたが、人間の動きの裏をかくような動きです!」
斜面を駆け下りながら、忌々し気に二人は声を掛け合う。
「まずはそれがしが魔物を足止めしよう! ジャンヌ殿は人々の先導を!」
「分かりました! お気を付けて!」
関羽は魔物から逃げ惑う人々に目もくれず、一気に駆け下りて魔物の前に仁王立ちだ。一方ジャンヌは逃げる人達に必死に声をかける。
「丘の上に逃げなさい! 私達が食い止めます! 急いで!」
ジャンヌの声に多少落ち着きを取り戻した人達は、バラバラではなく纏まって避難するようになった。避難する方向がバラバラでは、いかに二人が強くても守り切れるものではない。
しかしその代償として、矢面に立った関羽が魔物の大群を一手に引き受ける事になる。
「ぬぅん!」
しかし関羽は落ち着き払っていた。青龍偃月刀を縦横無尽に振り回し、ドスンと石附を地面に突き立てて叫んだ。
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