神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

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139話 本当になんなんだ?

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 高笑いを止められたルシフェルが、表情を険しくして三戸を睨みつけた。

「なぜ『天使の咆哮』が効かないのかな?」
「知るか。お前のブチ切れた絶叫なんぞ、耳障りなだけだったがな」

 『天使の咆哮』とは、ルシフェルのスキルのようなものか。そう三戸は見当を付けた。恐らく聞いた者を恐慌状態に陥れる類のものだろうとは思うが、三戸とアンジーにのみ効果がなかったのは、他ならぬ三戸にも分からない。

「下等な人間風情に、天使の咆哮を防げる訳が……」
「何が天使だ、真っ黒な翼しやがって!」

 ルシフェルが全て言い終わる前に、両肩のランチャーからナパーム弾を乱射しながら、サムライブレードを構えて急襲する三戸と、それを援護するようにミサイルをばら撒き、20mm機関砲をルシフェルの頭部目掛けて発射するアンジー。
 また、ルシフェルの黒羽陣も三戸を迎撃すべく、無数の刃となって三戸に襲い掛かるが、サムライブレードの雷の刃は自在にその姿を変え、殺到してくる黒い羽根を一振りで焼き尽くしていく。

「く、その雷の刃は確かに厄介だけど、これならどうかな!」

 ルシフェルのその言葉の直後、黒羽陣が動いた。
 今までは防御と迎撃に特化していた黒羽陣が、三戸を全方向から包み込むように移動を始める。

「マスター!」

 その様子を見ていたアンジーが、黒羽陣の動きを止めるべく、ルシフェルに襲いかかろうとした。しかし、その瞬間アンジーは三戸の視線を感じた。
 それはまるで心配するなというかのように、いつも自分の頭を撫でてくれる、優しい眼差しだった。

「……マスター?」

 アンジーのルシフェルへの特攻を、すんでの所で思いとどまらせた三戸に一体どのような手筈があるのか分からないが、アンジーには三戸に対する絶対の信頼感がある。
 自分のマスターがあんな優しい目を向けてくれたのならば、絶対に大丈夫だ。自分は自分の出来る最善を尽くそう。幸いルシフェルは、自分の咆哮が効かなかった三戸を全力で潰しにかかっている。ならば、仲間を奮い立たせるのは今を置いて他はない。アンジーはまず、ナイチンゲールの下へ急行した。


「ふははははは! いくらその剣が自在に形を変えられても、剣である以上全方向からの同時攻撃は防げないだろう?」

 ルシフェルは愉悦に歪んだ笑顔を浮かべながら、黒羽陣を形成していた羽根を全て三戸に向けて投入した。ひとつひとつが鋼にも勝る刃となり、三戸の全周を黒い羽根がすっぽりと覆う。それは空中に浮かんだ巨大な黒い卵のようであり、ざわざわと細かく蠢いているひとつひとつの羽根のおかげで意思をを宿しているようにも見える。

「下等な人間なんか! 下等な人間なんか! 肉片になっちゃえ! アハハハハ!」

 少しの間、まるで少年のようにはしゃぎながら三戸を攻撃していたルシフェルだが、やがて異変に気付く。
 三戸を包んでいた漆黒の卵が徐々に膨張し――
 やがて黒羽陣は全て焼き尽くされた。

「なんなんだ……なんなんだよ君は! 反則だぞ、そんな武器!」

 今度は驚きと恐怖が入り混じった表情で、ルシフェルが三戸を見る。
 その三戸は、サムライブレードの柄の部分を頭上に掲げ、その全身を雷のバリアで覆っていた。

「もう終わりか? 残りの二枚の翼も同じように消費するか?」
「くっ……」
「それとも、こっちから仕掛けていいのか?」

 三戸は雷のバリアを解き、再び雷を刃の形に保持した。

 ――ヴゥゥゥン

 サムライブレードを一薙ぎ。それはルシフェルの胸板に薄っすらと赤い筋を残した。

「無言は肯定と見なす」

 三戸がそう言い放つと、アーマーのスラスターノズルに火が入り、ルシフェルへと肉薄する。
 そのまま三戸は雷の刃で斬撃を加える。ルシフェルも咄嗟にトライデントを手にして受けようとするが、受けたトライデントの柄諸共右肩から先を斬り落とされた。

「ぐあああっ!? ち、治癒と再生を!」

 ルシフェルは切り口が赤熱化しているトライデントを投げ捨て、左手で右肩を押さえながら、残った二枚の黒翼にくるまれようとする。

「させるか!」

 三戸はサムライブレードを天に向かって掲げ、一気に振り下ろす。
 そして雲一つない青空からの落雷が、ルシフェルを直撃した。
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