アストレイズ~傭兵二人、世界を震撼さす~

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一章 魔法戦士養成学校編

開戦!

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 脳筋クラスチームの寸劇が終わったところで、学校長の声がフィールドに響き渡った。風系統による拡声魔法だ。

「はじめに断っておくが、これは決闘ではなく、生徒諸君の力量を測る為の模擬戦である。その事を努々ゆめゆめ忘れる事のないように! でははじめ!」

 ――ゴゥッ!

 学校長の開始の合図と同時に魔法が放たれた。
 特大の火球が三人が立っている場所に向けて飛んでいく。デヴィッドが放った火系統の大規模魔法だ。

「なっ!? あのバカ、生徒を殺す気か!」

 校舎の屋上から観戦していたシンディが叫ぶ。しかし、他の教官はニタニタとしているだけで、誰もデヴィッドの行為を咎めようとする者はいない。僅かに学校長が顔を顰めた程度か。

「ふん。あの教官が得意なのは火系統だからな」

 しかしカールは慌てず騒がず、泰然とワンドを振るう。地面に大きな魔法陣が展開され、水色に輝き出す。その色から、得意とする水系統の魔法だろう。
 殆ど詠唱もせずに魔法を展開した事から、予めデヴィッドの攻撃を予測していた事は明らかだ。その魔法陣から湧き上がるように水が噴き出し、三人の前面に水のカーテンを作りだす。

「フッ、中々に早い魔法発動だが、あんな薄い水の膜で、僕の火球を止められるものか。こちらも君が水系統の魔法が得意な事を承知の上で放ったのだぞ?」

 デヴィッドが気障ったらしく前髪をかき上げながら余裕の笑みを浮かべた。
 それに遅れる事数秒、スージィが構築した黄色く輝く魔法陣から拳大の石礫いしつぶてが放たれる。迷いなく発射した事から、チューヤ達三人の座標はすでに把握しており魔法陣の中に織り込んでいたのだろう。デヴィッドやカールにこそ発動スピードは劣ったが、彼女もまた魔法行使に関しては非凡なものを持っている事は明らかだ。
 観戦していた生徒達や教官達もその様子を見て感心している者が殆どだったが、直後に驚きにより騒めく事になった。

 火球がカールが作り出した水のカーテンに衝突すると同時に、轟音と共に辺りに衝撃が伝播する。そして三人の姿は爆発の際に発生した水蒸気が覆い隠した。
 そこへ、そんな事は関係ないとばかりにスージィが放った石礫が着弾する。しかし、着弾音が不自然すぎた。

 ――ビシャ! 

 まるで水面を打つような音が三度。

「……?」

 魔法を放ったスージィ本人も、おかしな手応えに怪訝な表情で水蒸気に包まれた三人の方向を見る。

「――なに!?」

 水蒸気の中から黒い影が飛び出してくるのを確認したスージィは杖を構える。つい先程三発もの石礫を同時発射したばかりの彼女は、再び魔法を構築するのには時間がかかる。
 攻撃をした直後の魔法使いは無防備にして無力。
 その事を彼女は思い知る。
 距離を取る暇も魔力を練り上げる暇も与えられずに、スージィは黒い影――マリアンヌの接近を許してしまった。

「キミの相手はボクがする!」

 猛スピードで接近したマリアンヌは、三つ編みの髪を靡かせながらスージィの身長を遥かに超える高さへと跳躍し、そのまま短めの双剣を振り下ろしてきた。

「くっ!」

 スージィは辛うじてそれを両手で翳した杖で受け止めるが、マリアンヌは止められた反動を利用しそのままバック宙して着地、そこから間髪入れずに間合いを詰める。
 正面から真っ直ぐに蹴りを放つマリアンヌの攻撃に、スージィは全く反応出来なかった。

「速い!?」
「遅いよ!」

 マリアンヌから見たスージィの動きはまるでスローモーション。先程の攻撃を受けたまま体勢を崩しているスージィの腹部に飛び蹴りが炸裂した。

「げほっ!?」

 身体をくの字に曲げて吹き飛んだスージィがそのまま地面に叩きつけられ、肺の中の空気を強引に吐き出される。
 数回咳き込んだ後、見上げた先には普段一緒にいるチューヤやカールですら見た事のないようなマリアンヌが、鋭い表情でスージィを見下ろしていた。

「……これが、キミが見下していた、落ちこぼれクラスのの力さ」

 スージィは脳筋クラスを見下していた訳でも、落ちこぼれと軽蔑していた訳でもない。それどころか、思想的にはカールに近いものを持っており、身体強化のみで戦う戦士達の重要性や強さというものも理解していたつもりだった。
 しかし、自分が目指すところはチューヤ、そしてカールを超える存在になる事であり、その他の生徒に関しては自分を脅かす存在とは認識していなかった。

「見下してなんてっ!」
「いや、見下しているよ。その証拠に、キミはボクの存在を知らなかった」
「……」

 マリアンヌの指摘に、スージィは言い返す事が出来ずに唇を噛む。そこへさらにマリアンヌが畳みかけるように続けた。

「チューヤは違ったよ。彼は、クラス全員の事を見ている。引っ込み思案で目立たない存在だったボクの事をもちゃんと見ていてくれた。そして、大した取り柄もないと思っていたボクの長所を見つけてくれた! 戦場で輝ける道を指し示してくれた!」
「……」
「今からその事をキミに見せてあげるよ。ボクと、チューヤの力をね!」

 そう言ってマリアンヌは模擬戦用の双剣を構える。
 このままトドメを刺す事も出来たのに、敢えて剣を構える。それは一片の言い訳も出来ないように、徹底的に叩き潰すというマリアンヌの意志表示だった。

「……受けて立つわ」

 ふらつきながらも立ち上がり、杖を構えたスージィも、戦意は衰えていなかった。
 
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