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一章 魔法戦士養成学校編
チューヤ、沸騰
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敵だ。
敵は殺す。
チューヤは滾っていた。
開始直後に放ったデヴィッドの火炎系の魔法は、明らかに三人纏めて消し炭にする威力があった。
「へっ、あの野郎、殺す気できやがった!」
チューヤは舌なめずりしてデヴィッドへと走る。相手が生徒だろうが教官だろうが関係ない。殺意を持って攻撃してきた者は全て敵。単純でいいじゃないかとチューヤは思う。
彼の両親が命を落としたのは隣国との戦争のせいだが、直接の死因は敵の少年兵にトドメを刺すのを躊躇し、その隙を突かれた際に深手を負ったせいだと聞かされていた。
「敵に情けをかけようなんて真似すっから!」
幼い時に自分を残して戦死した両親を誇りに思うと同時に、その甘さを呪う心が同居する。味方を逃がす為に身体張って殿を務め、敵ですら弱者であれば情けを掛けようとする精神は崇高だろう。
「けど、そのために自分が死んじまったらバカみてえじゃねえかよ! 味方の兵を守って自分が死んで、てめえらの息子を一人残しちまったらよォ!」
その声は怒りの叫びか、悲しみの咆哮か。水蒸気の中から燃えるような緋色の髪の男が木剣を手に猛スピードで飛び出して来る。
「……まさかあの火球を防ぎきるとはね。まあいい。所詮は接近戦しか出来ない落ちこぼれが、僕に触れる事なんて出来やしない」
チューヤが飛び出してきた事に対して若干の驚きはあったものの、デヴィッドは冷静さを欠く事なく前髪をかき上げながら杖を横に振るう。直線的な百八十センチ程の杖は、既に先端に魔法陣が展開されていた。
「爆炎よ、敵の接近を許すな」
デヴィッドがそう詠唱すると、その先端に展開された魔法陣から、ゴウッと唸り上げながら火炎が放射される。そしてその炎がそのままデヴィッドを守る壁となり、チューヤの突進を阻む。
「フン……」
その炎の壁の前で停止するチューヤを嘲るように、デヴィッドの声が響いた。
「君達『戦士』の限界はそこさ。こうなると何も出来まい? だが、『魔法戦士』はこういう芸当も出来るのさ!」
デヴィッドは上空に魔法陣を展開させた。赤く光る魔法陣は火系統の魔法の証。チューヤはそれを見て、すぐさま回避できるよう全身をリラックスさせた。
「炎よ、我が敵に燃える雨を降らせよ」
デヴィッドの詠唱が終わると、上空の魔法陣から火の玉が落ちてくる。それは広範囲にランダムに降り注ぐが、厳密にチューヤを狙っているものではなさそうだ。
どうやら面制圧に使用する魔法だろうと判断したチューヤは、自分に向かってくる火の玉だけを避けながら、足下の小石を数個拾い集めていた。
「どうだね? 壁があると何も出来ない戦士に対して、壁があろうと多彩な攻撃を放てる魔法戦士は優秀だろう?」
「狙って来ねえ魔法なんざ怖くもなんともねえ」
「フッ、口だけは達者だな! だが、貴様からは何も出来まい?」
「そうでもねえ……よっ!」
チューヤが拾っておいた小石を一つ右手に握り、野球のオーバースローのモーションでデヴィッドの声のする方向へ全力で投げた。身体強化されたチューヤの腕力で放られた小石は、砲弾のような威力を伴って炎の壁を突き抜け、デヴィッドの頬を掠めていった。
「なにっ!?」
全く予想だにしていなかったチューヤの反撃に、デヴィッドは避ける事も防ぐ事も出来ず。そして炎の壁の向こうから次々と小石が飛んで来る。しかも、飛んでくる方向が毎回違う。どうやらチューヤは移動しながら投石しているらしいが、炎の向こう側とあってはどこにいるのかなど確認のしようもない。
そして、投石が止むと同時にチューヤの声が聞こえてきた。
「大体、質量がない『壁』なんて、『壁』とは言えねえだろうが。これならアイツの薄い水の膜の方が余程『壁』だぜ」
カールの水に比べて、炎は質量持たないため、途中で通過するものを溶解、あるいは蒸発させる程の高温でなければ貫通させるのは容易い。
そして、チューヤがその言葉を証明するように、身体を丸めて飛び込んできた。
「うわっちぃっ!」
多少装備が焦げたようだが、大したダメージを受ける事もなく、彼はデヴィッドの前で立ち上がった。
「へっ、こんなモンだ」
燃えるような緋色の髪と瞳を持った少年はデヴィッドに剣を向け、獰猛に嗤った。
「アンタ、さっきから詠唱の度に『敵』って言ってたな? ならアンタは教官じゃねえ。敵だ。敵はぶっ殺す!」
その時デヴィッドには、チューヤの全身が赤い魔力に包まれたように見えた。
敵は殺す。
チューヤは滾っていた。
開始直後に放ったデヴィッドの火炎系の魔法は、明らかに三人纏めて消し炭にする威力があった。
「へっ、あの野郎、殺す気できやがった!」
チューヤは舌なめずりしてデヴィッドへと走る。相手が生徒だろうが教官だろうが関係ない。殺意を持って攻撃してきた者は全て敵。単純でいいじゃないかとチューヤは思う。
彼の両親が命を落としたのは隣国との戦争のせいだが、直接の死因は敵の少年兵にトドメを刺すのを躊躇し、その隙を突かれた際に深手を負ったせいだと聞かされていた。
「敵に情けをかけようなんて真似すっから!」
幼い時に自分を残して戦死した両親を誇りに思うと同時に、その甘さを呪う心が同居する。味方を逃がす為に身体張って殿を務め、敵ですら弱者であれば情けを掛けようとする精神は崇高だろう。
「けど、そのために自分が死んじまったらバカみてえじゃねえかよ! 味方の兵を守って自分が死んで、てめえらの息子を一人残しちまったらよォ!」
その声は怒りの叫びか、悲しみの咆哮か。水蒸気の中から燃えるような緋色の髪の男が木剣を手に猛スピードで飛び出して来る。
「……まさかあの火球を防ぎきるとはね。まあいい。所詮は接近戦しか出来ない落ちこぼれが、僕に触れる事なんて出来やしない」
チューヤが飛び出してきた事に対して若干の驚きはあったものの、デヴィッドは冷静さを欠く事なく前髪をかき上げながら杖を横に振るう。直線的な百八十センチ程の杖は、既に先端に魔法陣が展開されていた。
「爆炎よ、敵の接近を許すな」
デヴィッドがそう詠唱すると、その先端に展開された魔法陣から、ゴウッと唸り上げながら火炎が放射される。そしてその炎がそのままデヴィッドを守る壁となり、チューヤの突進を阻む。
「フン……」
その炎の壁の前で停止するチューヤを嘲るように、デヴィッドの声が響いた。
「君達『戦士』の限界はそこさ。こうなると何も出来まい? だが、『魔法戦士』はこういう芸当も出来るのさ!」
デヴィッドは上空に魔法陣を展開させた。赤く光る魔法陣は火系統の魔法の証。チューヤはそれを見て、すぐさま回避できるよう全身をリラックスさせた。
「炎よ、我が敵に燃える雨を降らせよ」
デヴィッドの詠唱が終わると、上空の魔法陣から火の玉が落ちてくる。それは広範囲にランダムに降り注ぐが、厳密にチューヤを狙っているものではなさそうだ。
どうやら面制圧に使用する魔法だろうと判断したチューヤは、自分に向かってくる火の玉だけを避けながら、足下の小石を数個拾い集めていた。
「どうだね? 壁があると何も出来ない戦士に対して、壁があろうと多彩な攻撃を放てる魔法戦士は優秀だろう?」
「狙って来ねえ魔法なんざ怖くもなんともねえ」
「フッ、口だけは達者だな! だが、貴様からは何も出来まい?」
「そうでもねえ……よっ!」
チューヤが拾っておいた小石を一つ右手に握り、野球のオーバースローのモーションでデヴィッドの声のする方向へ全力で投げた。身体強化されたチューヤの腕力で放られた小石は、砲弾のような威力を伴って炎の壁を突き抜け、デヴィッドの頬を掠めていった。
「なにっ!?」
全く予想だにしていなかったチューヤの反撃に、デヴィッドは避ける事も防ぐ事も出来ず。そして炎の壁の向こうから次々と小石が飛んで来る。しかも、飛んでくる方向が毎回違う。どうやらチューヤは移動しながら投石しているらしいが、炎の向こう側とあってはどこにいるのかなど確認のしようもない。
そして、投石が止むと同時にチューヤの声が聞こえてきた。
「大体、質量がない『壁』なんて、『壁』とは言えねえだろうが。これならアイツの薄い水の膜の方が余程『壁』だぜ」
カールの水に比べて、炎は質量持たないため、途中で通過するものを溶解、あるいは蒸発させる程の高温でなければ貫通させるのは容易い。
そして、チューヤがその言葉を証明するように、身体を丸めて飛び込んできた。
「うわっちぃっ!」
多少装備が焦げたようだが、大したダメージを受ける事もなく、彼はデヴィッドの前で立ち上がった。
「へっ、こんなモンだ」
燃えるような緋色の髪と瞳を持った少年はデヴィッドに剣を向け、獰猛に嗤った。
「アンタ、さっきから詠唱の度に『敵』って言ってたな? ならアンタは教官じゃねえ。敵だ。敵はぶっ殺す!」
その時デヴィッドには、チューヤの全身が赤い魔力に包まれたように見えた。
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