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二章 立志
路銀どうしよ?
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シンディと別れた四人は、途中で学校の寮に寄ってスージィの手荷物だけを回収し、ミナルディ王国との国境へと向かい街道を進んでいた。王都から国境まではおおよそ二週間前後の道程である。
幾何かの路銀はシンディから餞別代わりに貰っているとは言え、なんだかそれに手を付けるのは躊躇してしまう。
シンディがどれだけ裕福かは分からないが、かなり高価であろう『餞別』を別に貰っているのだ。自分達を守ろうとしてくれた彼女に対する引け目とでも言おうか。
チューヤは魔法剣の発動を可能とする、希少な『魔剣』を。
カールはそれそのものが魔法発動媒体となるエストックを。
マリアンヌは魔眼・白を発動していても、周囲にバレない特殊なフィルターが装備されているゴーグルを。
スージィは強制的に脚力が強化されるニーハイ・ブーツを。
魔法付与を施された魔法具というのは相当値が張る。特にチューヤは、戦士の魂とも言える剣を譲り受けた。それは、彼等の師匠であるシンディからの絶対に死ぬな、というメッセージだと受け取っている。
それ故、路銀に出来るだけ手を付けずに自分達で賄おうと提案したのは、他ならぬチューヤだ。
「でも、どうやって路銀を稼ぐんだい?」
「変異種を狩りながら、素材売っぱらって路銀にすりゃあいいじゃねえか」
マリアンヌの素朴な疑問に、チューヤが事もなげに答えた。むしろ、『それ以外に何がある?』とでも言いたげな顔で。
「ああ! なるほど!」
「ふむ。火事頭にしてはいい案だな」
「ああン!?」
チューヤの提案に、マリアンヌとカールはすぐに納得したようだ。
しかし一人だけ。
「そうは言っても、そう都合よく変異種が見つかるかしら?」
スージィは頭にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げた。よく整った容姿の彼女がそうすると恐ろしく可憐なのだが、他の三人はどことなく残念そうな表情でスージィを見る。
「え? え? 何?」
なぜ私がそんな目で見られるの? 私なにかおかしい事言った?
スージィがそんな表情で三人に訴えかける。
「はぁ、マリアンヌ。君は眼の事を言っていないのか……」
「あ……そう言えば」
カールが深いため息をついてからそう訊ねると、マリアンヌがコツンと自分の頭を小突きながらてへぺろする。
「どういう事?」
「君は彼女と戦って気付かなかったか? 彼女の眼は特別なんだ」
尚も不思議そうな顔のスージィに、カールがヒントを出した。
そしてスージィは思い出す。自分の攻撃が悉く、まるで予測されているかのように避けられてしまった事に。
「まさか……予知眼!?」
予知眼とは、ほんの少し先の未来が見える、そう言い伝えられている魔眼の一種だ。しかし、現在に於いてはその魔眼の保有者は確認されていない為、文字通り伝説のモノとして認識されている。
しかし、そんなスージィにマリアンヌが笑いながら答えた。
「あははは! まさか! ボクのは人よりかなり視力がいい程度のものだよ。ただ……」
そこまで言ってマリアンヌは言葉を切った。そして魔眼・白を発動させる。
「いた! 九時の方向! 大きいのがいるよ!」
そう言って街道脇の森の方向を指差した。
しかし、マリアンヌ以外の三人には何も見えない。それでも、チューヤとカールは戦闘態勢に入った。身体強化の為に体内の魔力を循環させ始めたのがその証拠。
「マリ、先導頼む! スージィ、遅れんなよ?」
チューヤがそう言うと、スージィ以外の三人が森に向かって駆け出した。
「あ、ちょっと待って!」
スージィは脚力上昇のブーツに魔力流し込み、慌てて三人を追いかけた。
幾何かの路銀はシンディから餞別代わりに貰っているとは言え、なんだかそれに手を付けるのは躊躇してしまう。
シンディがどれだけ裕福かは分からないが、かなり高価であろう『餞別』を別に貰っているのだ。自分達を守ろうとしてくれた彼女に対する引け目とでも言おうか。
チューヤは魔法剣の発動を可能とする、希少な『魔剣』を。
カールはそれそのものが魔法発動媒体となるエストックを。
マリアンヌは魔眼・白を発動していても、周囲にバレない特殊なフィルターが装備されているゴーグルを。
スージィは強制的に脚力が強化されるニーハイ・ブーツを。
魔法付与を施された魔法具というのは相当値が張る。特にチューヤは、戦士の魂とも言える剣を譲り受けた。それは、彼等の師匠であるシンディからの絶対に死ぬな、というメッセージだと受け取っている。
それ故、路銀に出来るだけ手を付けずに自分達で賄おうと提案したのは、他ならぬチューヤだ。
「でも、どうやって路銀を稼ぐんだい?」
「変異種を狩りながら、素材売っぱらって路銀にすりゃあいいじゃねえか」
マリアンヌの素朴な疑問に、チューヤが事もなげに答えた。むしろ、『それ以外に何がある?』とでも言いたげな顔で。
「ああ! なるほど!」
「ふむ。火事頭にしてはいい案だな」
「ああン!?」
チューヤの提案に、マリアンヌとカールはすぐに納得したようだ。
しかし一人だけ。
「そうは言っても、そう都合よく変異種が見つかるかしら?」
スージィは頭にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げた。よく整った容姿の彼女がそうすると恐ろしく可憐なのだが、他の三人はどことなく残念そうな表情でスージィを見る。
「え? え? 何?」
なぜ私がそんな目で見られるの? 私なにかおかしい事言った?
スージィがそんな表情で三人に訴えかける。
「はぁ、マリアンヌ。君は眼の事を言っていないのか……」
「あ……そう言えば」
カールが深いため息をついてからそう訊ねると、マリアンヌがコツンと自分の頭を小突きながらてへぺろする。
「どういう事?」
「君は彼女と戦って気付かなかったか? 彼女の眼は特別なんだ」
尚も不思議そうな顔のスージィに、カールがヒントを出した。
そしてスージィは思い出す。自分の攻撃が悉く、まるで予測されているかのように避けられてしまった事に。
「まさか……予知眼!?」
予知眼とは、ほんの少し先の未来が見える、そう言い伝えられている魔眼の一種だ。しかし、現在に於いてはその魔眼の保有者は確認されていない為、文字通り伝説のモノとして認識されている。
しかし、そんなスージィにマリアンヌが笑いながら答えた。
「あははは! まさか! ボクのは人よりかなり視力がいい程度のものだよ。ただ……」
そこまで言ってマリアンヌは言葉を切った。そして魔眼・白を発動させる。
「いた! 九時の方向! 大きいのがいるよ!」
そう言って街道脇の森の方向を指差した。
しかし、マリアンヌ以外の三人には何も見えない。それでも、チューヤとカールは戦闘態勢に入った。身体強化の為に体内の魔力を循環させ始めたのがその証拠。
「マリ、先導頼む! スージィ、遅れんなよ?」
チューヤがそう言うと、スージィ以外の三人が森に向かって駆け出した。
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