53 / 160
二章 立志
シンディの先見
しおりを挟む
「私の今までの話は全て真実だよ。だが、君達に話していない事がある」
ジルはそう言って、四人の顔を順に見渡していく。二人の護衛は腕組みをし、目を伏せて黙って聞いている。
「カール君。君のエストック。それは私の商会が売ったものだ。そしてスージィ君。君のブーツも、マリアンヌ君のゴーグルもそうだね」
「「「!!」」」
余りにも予想外なジルのカミングアウトに、三人は驚きを隠せない。
「そしてチューヤ君。君の持つ『シンシア』は、私が昔シンディに与えたものだ」
「なっ!?」
「君がその『シンシア』を譲り受けたという事は、君も纏魔の使い手なのだろう?」
「……」
まるで狐か狸に化かされたかのような顔のチューヤに、ジルはふっと表情を和らげた。
「私のキャラバンがこのタイミングでスクーデリア王都にいたのは全くの偶然だ。だが、どこでその話を聞きつけたのか、一月ほど前のある夜、王都の定宿にアイツが訪ねて来たんだ」
一月ほど前と言えば、デヴィッドとの模擬戦を前に、シンディの家で特訓を始めた時期と重なる。
「その時、アイツが私に発注したのが、魔眼をカモフラージュ出来るゴーグルと、魔法発動媒体としても使えるエストック。これはどっちも中々レアな品物で、取り寄せるのに一月掛かっちまった」
その話を聞いて、カールとマリアンヌが顔を見合わせた。
国外に脱出せざるを得ない状況を見越してのものか、それとも模擬戦で使わせるつもりだったのかは定かではないが、二人はシンディの気遣いに感謝する。
「そしてつい二日前の夜だな。エストックとゴーグルが入荷したって連絡をしようと思ってた矢先に、アイツがやって来た。『脚力増強のブーツも追加してくれ、今すぐに!』ってな」
これはスージィの予想外の行動に、流石のシンディも焦ったという事だろう。同時に、王都に留まるのは危険であると判断したという事だ。
「まあ、筋力増強系のエンチャントが施された装備品ってのは結構タマはあるからどうにかなった。そして――」
ジルはここで一旦煙管から煙を吸い込み、ふぅっと天井に向けて吐き出した。そして言いかけた話の続きを口にする。
「出来るなら、ミナルディへの道中、君達の面倒を見てくれないかと頼まれた」
流石にここまで言われれば四人も理解する。ジルが現れたタイミング、気前が良すぎる申し出。それらは自分達を気遣ったシンディが手を回しての事だった。
そこで、ここまで腕組みをしながらじっとジルの話を聞いていたチューヤが、おもむろにジルをじっと見つめた。
「な、何かな? 私はまだ独身だが……?」
「そうか」
あまりにも真剣なチューヤの眼差しに、ジルも思わず狼狽え気味にボケて見せるが、それを何事も無かったかのようにサラリと流してチューヤは続ける。
「……師匠や、こいつらの家族は大丈夫なんスか?」
「へえ……師弟が共にお互いを心配し合うなんていいじゃないか。ま、アイツに関しちゃ心配いらないよ。アイツが守るって決めたんなら、何があっても、誰が相手でも守り抜く。そういうヤツさ」
ジルはそう答えると、懐かしそうな色を瞳に浮かべ、王都の方角を見つめた。
「しかし! いくら師匠でも、貴族や国の圧力に耐えられるとは……!」
カールは貴族の汚いやり口を嫌という程味わってきただけに、ジルの言葉を聞いただけでは安心できるものではない。
「それなら、何故君は逃げて来たんだい?」
「……」
カールはジルの鋭い問いに言葉を詰まらせる事しか出来ない。
自分達はスクーデリア王国に残ってはいけない。いては家族に迷惑がかかる。それしか考えていなかったのではないか?
「……君達を見てよく分かったよ。シンディが君達を逃がした訳を」
「「「「?」」」」
今までのやり取りで、ジルは何が分かったと言うのか。四人は不思議そうな表情を浮かべる。
「君達は……家族や師匠に危害が及ぶような事になれば、自分の身を顧みずに戦うだろう? アイツは、それを危ぶんだのだと思うがね」
否定できなかった。誰一人として。
「アイツは、君達の家族より、そして自分より、君達に生き延びて欲しかったんじゃないのかな?」
ジルの諭すような言葉に、皆が俯いてしまう。自分達の無力さに苛まれるように。
ジルはそう言って、四人の顔を順に見渡していく。二人の護衛は腕組みをし、目を伏せて黙って聞いている。
「カール君。君のエストック。それは私の商会が売ったものだ。そしてスージィ君。君のブーツも、マリアンヌ君のゴーグルもそうだね」
「「「!!」」」
余りにも予想外なジルのカミングアウトに、三人は驚きを隠せない。
「そしてチューヤ君。君の持つ『シンシア』は、私が昔シンディに与えたものだ」
「なっ!?」
「君がその『シンシア』を譲り受けたという事は、君も纏魔の使い手なのだろう?」
「……」
まるで狐か狸に化かされたかのような顔のチューヤに、ジルはふっと表情を和らげた。
「私のキャラバンがこのタイミングでスクーデリア王都にいたのは全くの偶然だ。だが、どこでその話を聞きつけたのか、一月ほど前のある夜、王都の定宿にアイツが訪ねて来たんだ」
一月ほど前と言えば、デヴィッドとの模擬戦を前に、シンディの家で特訓を始めた時期と重なる。
「その時、アイツが私に発注したのが、魔眼をカモフラージュ出来るゴーグルと、魔法発動媒体としても使えるエストック。これはどっちも中々レアな品物で、取り寄せるのに一月掛かっちまった」
その話を聞いて、カールとマリアンヌが顔を見合わせた。
国外に脱出せざるを得ない状況を見越してのものか、それとも模擬戦で使わせるつもりだったのかは定かではないが、二人はシンディの気遣いに感謝する。
「そしてつい二日前の夜だな。エストックとゴーグルが入荷したって連絡をしようと思ってた矢先に、アイツがやって来た。『脚力増強のブーツも追加してくれ、今すぐに!』ってな」
これはスージィの予想外の行動に、流石のシンディも焦ったという事だろう。同時に、王都に留まるのは危険であると判断したという事だ。
「まあ、筋力増強系のエンチャントが施された装備品ってのは結構タマはあるからどうにかなった。そして――」
ジルはここで一旦煙管から煙を吸い込み、ふぅっと天井に向けて吐き出した。そして言いかけた話の続きを口にする。
「出来るなら、ミナルディへの道中、君達の面倒を見てくれないかと頼まれた」
流石にここまで言われれば四人も理解する。ジルが現れたタイミング、気前が良すぎる申し出。それらは自分達を気遣ったシンディが手を回しての事だった。
そこで、ここまで腕組みをしながらじっとジルの話を聞いていたチューヤが、おもむろにジルをじっと見つめた。
「な、何かな? 私はまだ独身だが……?」
「そうか」
あまりにも真剣なチューヤの眼差しに、ジルも思わず狼狽え気味にボケて見せるが、それを何事も無かったかのようにサラリと流してチューヤは続ける。
「……師匠や、こいつらの家族は大丈夫なんスか?」
「へえ……師弟が共にお互いを心配し合うなんていいじゃないか。ま、アイツに関しちゃ心配いらないよ。アイツが守るって決めたんなら、何があっても、誰が相手でも守り抜く。そういうヤツさ」
ジルはそう答えると、懐かしそうな色を瞳に浮かべ、王都の方角を見つめた。
「しかし! いくら師匠でも、貴族や国の圧力に耐えられるとは……!」
カールは貴族の汚いやり口を嫌という程味わってきただけに、ジルの言葉を聞いただけでは安心できるものではない。
「それなら、何故君は逃げて来たんだい?」
「……」
カールはジルの鋭い問いに言葉を詰まらせる事しか出来ない。
自分達はスクーデリア王国に残ってはいけない。いては家族に迷惑がかかる。それしか考えていなかったのではないか?
「……君達を見てよく分かったよ。シンディが君達を逃がした訳を」
「「「「?」」」」
今までのやり取りで、ジルは何が分かったと言うのか。四人は不思議そうな表情を浮かべる。
「君達は……家族や師匠に危害が及ぶような事になれば、自分の身を顧みずに戦うだろう? アイツは、それを危ぶんだのだと思うがね」
否定できなかった。誰一人として。
「アイツは、君達の家族より、そして自分より、君達に生き延びて欲しかったんじゃないのかな?」
ジルの諭すような言葉に、皆が俯いてしまう。自分達の無力さに苛まれるように。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる