アストレイズ~傭兵二人、世界を震撼さす~

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第四章 スクーデリア争乱

エウロペでの再会

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 マリアンヌは魔道具であるゴグルを装着し、高台からエウロペの街を眺めていた。もちろん、魔眼つくもを発動させている。

「どんな様子なんだ?」

 魔力による視覚強化自体はマリアンヌ以外のメンバーも出来る。しかし魔眼を発動させた状態の彼女しか視認できない距離からの遠望であるため、カールが訊ねた。

「う~ん、これは酷いね。もう街の残骸というか、遺跡って言った方がいいかも。街に少人数はいるけど、その他には魔物や魔族が発する魔力は見えないね」
「住人がいないなら、この街に寄る必要はないんじゃないかしら?」

 激戦によって破壊しつくされた街の様子をマリアンヌが伝えると、スージィがそう述べる。

「そうだな。街の調査もすでに軍が粗方やり尽くしているだろうし、我々が今から行っても得られるものはないと思う」
「そりゃあどうだろうな? マリが魔眼で探したらなんかあるかも知れねえぞ?」
「ふむ……」

 スージィに同意するカール、チューヤがそんな横槍を入れるが、カールもそれはもっともだと思ったのか、特に反論する事はなかった。皆、それだけマリアンヌの魔眼には信頼を置いている。

「あはは……これは寄っていった方がいいみたいだよ! 行こう、みんな!」

 何かを見つけたらしいマリアンヌが笑顔でそう言うと、エウロペを見下ろす丘から商隊の列へと駆け下って行った。それに他のメンバーも従っていく。
 何があったのか、などとは聞かない。彼女の笑顔を見れば、悪しきものではない事が分かる。四人はジルが待つ馬車へと急いだ。

△▼△

「今日はエウロペで野営しよう」

 マリアンヌがエウロペに寄っていく事をジルに告げたところ、ジルは野営を即決した。どの道次の宿を取る街までは距離がある。しかも壊滅したとは言え街を囲む防壁はところどころ残っているし、まだまだ雨露を凌げる廃屋も多数存在する。街の外で野営するより遥かに安全だ。
 商隊はエウロペの市街地跡へと入り、手ごろな場所を探して散開していく。そんな彼等の護衛は傭兵達に任せ、アストレイズの四人とジル、マンセルは、マリアンヌの先導でとある場所へと向かっていた。
 街を囲む防壁以外に、街の中央部にある領主の館を守る為の防壁がある。その防壁の上に一人のシルエットが浮かぶ。ちょうど夕陽の方向に立っており、アストレイズのメンバーから逆光で詳しい姿は分からない。しかしその人物は彼等を待っているように見えた。

 ――ブォン!

 突如空気が軋むような音をさせながら、その人物から魔法が放たれた。それほど強力という訳ではないが、人をひとり死傷させるには十分な威力の炎弾だった。

「へっ!」

 瞬時に反応したのはチューヤだった。魔力を身体全体に纏わせるレアスキル纏魔てんまを発動させ、さらに魔剣シンシアを抜いてその炎弾を
 炎弾を迎撃したチューヤの目の前には、ついさっきまで防壁の上に立っていた人物が腕を組み見つめている。

「よう、少しは強くなったみたいだねぇ」
「……随分手荒い歓迎っすね」
「はっはっは」

 柔らかい笑みを浮かべたその人物は、ゆっくりとチューヤに近付き、慈愛を込めて彼の頭を胸に抱く。

「師匠」
「本当に強くなった。そして、よく生きててくれた」

 その光景を見ていた他のメンバーもそれを温かく見守る。そして、マリアンヌがそこに駆け寄った。

「師匠~!」

 それを切っ掛けに、カールもスージィも駆け出した。

「みんなも元気そうで何よりだ。それから先輩。面倒事を引き受けてもらって、ありがとうございます」
「いや、おかげで退屈しなくて済んでいるさ。シンシアも相変わらずだねえ」

 それぞれが再会の挨拶を交わした相手。それはスクーデリア最強の戦士にしてアストレイズの師匠であるシンディだった。

「今日は領主館にみんな集まりな。無人だから寝る場所くらいは問題ない。それからアンタらには久々に手料理でも振舞ってやるさ。ああ、食材はジル先輩、お願いしますよ?」

 シンディの提案に、一同は目を輝かせる。マンセルを除いては、彼女の料理の味を知っているからだ。

「マンセル、悪いけどみんなをここに集めてくれるかい? 今夜は高級ホテルに宿泊できそうだ」
「承知いたしました」

 ジルの指示を受けたマンセルが、隙のない身のこなしで去っていく。

(へえ……あのナイスミドルも中々の手練れだねえ)

 彼の背中を見送るシンディがそんな感想を抱く。しかしそれよりも。

「チューヤ。その剣、使いこなしてるみたいだねえ?」

 先程自分が放った魔法に、見事に対処してみせた愛弟子の成長に目を細めるシンディ。しかしその愛弟子の表情はどこか悔し気だった。

「へっ? いや、まだまだっすよ。俺一人じゃ魔人に勝てなかったし」
「そうかい。ならアタシが少し揉んでやろう」
「あ……お手柔らかにお願いしまっす」

 まだひな鳥のまま巣立たせた弟子達に、もっとしっかりと教え込んでおきたかったという気持ちはあった。今回その弟子の成長を見極められる機会を得た事に感謝するシンディだった。

 
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