私の療養中に、婚約者と幼馴染が駆け落ちしました──。

Nao*

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bそしてその日以降、私はジュリアス様を主治医にする事を決めた。

 それをエライザに報告したかったが……彼女は習い事を始め忙いらしく、見舞いに全くと言っていい程来れなくなってしまった。

 私付きの使用人の話では、彼女の家の使用人がいつもの見舞いの花は届けてくれると言う事だが──。



 ジュリアス様の診察で不調の原因が明らかになったおかげか、またはあの薬の効果が現れ始めたおかげか……私はこの所、発作も起きて居ない。

 だから、彼女とゆっくり話せる良い機会だと思ったのに……もっと元気になったら、直接私から彼女に会いに行こうかしら。


 
 それと彼女だけでなく、カイゼル様までも忙しいみたいだし……私が元気になった姿を、早く彼にも見せたいのにな。

 そうしたらカイゼル様も喜んでくれ、延期して居た結婚式もすぐに挙げようと言ってくれるかも知れない。



 そうなったら、私はその式にジュリアス様をお呼びしたい。
 
 これだけお世話になった人だもの……カイゼル様が良い顔をしなくても、私は彼を招待したいわ。

 勿論、ジュリアス様が出席しても良いと言ってくれたならばの話だが──。



 そう言えばジュリアス様、今日はやけにお見えになるのが遅いわね。

 私の前に、誰か別の患者さんでも看て居るのかしら──?



 お父様の話では、ジュリアス様はこの地に留まる中で医者としての腕を買われるようになったそうで……彼に看て貰いたいと言う患者さんが、何人か彼を訪ねて居るらしい。

 皆から腫物扱いされて居たジュリアス様が、今はそのように皆に慕われ頼りにされる事が私は何だかとても嬉しかった。



 ジュリアス様、早く来てくれないかしら──。

 ここ最近の私は、エライザよりも……そしてカイゼル様よりも、実はジュリアス様と過ごす時間を心待ちにして居た。

 

 以前エライザに、ジュリアス様とは特に仲良しでも無い何て言い方をしたけれど……今の私を見られたら、ただの言い訳だと思われてしまうわね──。



 すると部屋のドアが開き、雇ったばかりの使用人が慌てた様子で入って来た。

「お嬢様、只今カイゼル様付きの使用人がこれをお嬢様にと持って来たのですが……診察の前ですが、読まれますか?それと忘れない内に、エライザ様からのお花も飾らせて貰って宜しいでしょうか?」

「カイゼル様から、私に手紙?大丈夫よ、体調も悪くないし……それに、まだジュリアス様も見えないしね。お花もよろしくね、丁度今の花が枯れかけて居るから嬉しいわ。」



 そう使用人と話しながら、私は開封した手紙を読み始めたが……そこに書かれて居た内容を理解した途端、目の前が真っ暗になった。



 更に、何故か急に息苦しくなり……私を苦しめる謎の発作がまた始まったと思った時には、既に意識をほぼ失いかけて居た──。
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