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「……ど、どうしてそうなってしまうのよ!?あの人、私を一生大事に、愛すると言ってくれたのに……だから私は、ここまでの事をやってのけたんじゃないの──!」
カイゼル様の心変わりと、自分がここから出る事は到底叶わないと知ったエライザは半狂乱になって泣き叫び……私は、そんな彼女を酷く冷めた目で見つめた。
「あなたが今回しでかした事で、あなたの家の事業は一気に傾き……ご両親も昨夜夜逃げしたと言うから、あなたを救ってくれる人はもう居ないわ。だから、あなたはここでしっかりと自分の罪に向き合う事になる。それであなたがそうして居る間に、私は今度こそ幸せになってみせるわ。」
「こ、こんなの嫌──!」
その後……エライザとの面会が終わった私を、外で待って居たジュリアス様は優しく迎えてくれた。
「この牢獄は、この国の中でも最も劣悪な環境だと言うし……故に、生きて刑期を終える者は少ないと聞く。君が彼女と会うのも、今回きりかも知らないね。」
「そうですか……。でも、それも仕方ない事。それより、お父上とのお話は無事済みました?」
「あぁ。跡継ぎの件はやはり無理だとはっきり断った。父にはまだ隠し子が居るし……その子はかなり優秀だそうだし、次期領主としてきちんと教育すれば何とかなるよ。俺に領主は向かない性分だし、何より医者として一生を捧げると決めて居るしね。」
「そうですか。でしたら、私の父もそんなあなたの力になってくれるでしょう。所有する鉱山に自生する植物達を、医学の発展の為に是非役立てて欲しいと願って居るはず──。」
実はジュリアス様がこの地に戻られたのは、私の父の所有する鉱山に自生する植物達を採取する為だった。
彼が過去に、そして今回私に飲ませてくれた花の蜜や、処方してくれた薬に入って居るある成分も……全てその鉱山か、ある一定の条件の場所でしか育たない希少な植物達から集められたものだった。
その植物達が育つには、ある土の成分が必要だそうで……ジュリアス様は今後その植物達を育て増やす事で、それらを利用した治療法の確立……様々な病気に効果のある薬作りが出来たらと考えて居らっしゃるのだった。
「今回は、あなたに本当に助けられました。ですから、今度は私があなたに力をお貸ししたいです。鉱山に入る際は、私が道案内を致しますから……是非お声をかけて下さい。山道を歩ける程に、私はもう回復して居ますので!」
そう言って微笑む私に、ジュリアス様はありがとうと言って笑い返してくれた。
「君を助ける事が出来て本当に良かった……。医者としても、一人の男としても嬉しいよ。」
「え……?」
「だって君は、俺の初恋の人だから──。俺の事を気に掛けてくれたのは、亡き母以外に君しか居なかった。君から俺に声をかけてくれて、どれ程嬉しかったか……。俺はいずれこの地で自分の診療所を開き、ここで生きて行こうと思って居るけれど……その時は、君も隣に居て欲しい。」
「ジュリアス様……!」
彼の私への想いを知り驚いたけれど……でも、私はその気持ちが全く嫌では無かった。
むしろ、彼が昔から私をそこまで想ってくれて居た事が嬉しいと感じた。
「ジュリアス様……私で良ければ、是非あなたのお傍に置いて下さい。医者として頑張るあなたを私はこの先ずっとお支えし、そして私の事を愛してくれる殿方としてのあなたを私もずっと愛して行こうと思います。」
そう言って、彼の手に自身の手を重ねれば……ジュリアス様は思わず見惚れるようなとても幸せそうな笑顔を浮かべ、そのまま私を引き寄せるとその胸にしっかりと抱きし締めてくれるのだった──。
カイゼル様の心変わりと、自分がここから出る事は到底叶わないと知ったエライザは半狂乱になって泣き叫び……私は、そんな彼女を酷く冷めた目で見つめた。
「あなたが今回しでかした事で、あなたの家の事業は一気に傾き……ご両親も昨夜夜逃げしたと言うから、あなたを救ってくれる人はもう居ないわ。だから、あなたはここでしっかりと自分の罪に向き合う事になる。それであなたがそうして居る間に、私は今度こそ幸せになってみせるわ。」
「こ、こんなの嫌──!」
その後……エライザとの面会が終わった私を、外で待って居たジュリアス様は優しく迎えてくれた。
「この牢獄は、この国の中でも最も劣悪な環境だと言うし……故に、生きて刑期を終える者は少ないと聞く。君が彼女と会うのも、今回きりかも知らないね。」
「そうですか……。でも、それも仕方ない事。それより、お父上とのお話は無事済みました?」
「あぁ。跡継ぎの件はやはり無理だとはっきり断った。父にはまだ隠し子が居るし……その子はかなり優秀だそうだし、次期領主としてきちんと教育すれば何とかなるよ。俺に領主は向かない性分だし、何より医者として一生を捧げると決めて居るしね。」
「そうですか。でしたら、私の父もそんなあなたの力になってくれるでしょう。所有する鉱山に自生する植物達を、医学の発展の為に是非役立てて欲しいと願って居るはず──。」
実はジュリアス様がこの地に戻られたのは、私の父の所有する鉱山に自生する植物達を採取する為だった。
彼が過去に、そして今回私に飲ませてくれた花の蜜や、処方してくれた薬に入って居るある成分も……全てその鉱山か、ある一定の条件の場所でしか育たない希少な植物達から集められたものだった。
その植物達が育つには、ある土の成分が必要だそうで……ジュリアス様は今後その植物達を育て増やす事で、それらを利用した治療法の確立……様々な病気に効果のある薬作りが出来たらと考えて居らっしゃるのだった。
「今回は、あなたに本当に助けられました。ですから、今度は私があなたに力をお貸ししたいです。鉱山に入る際は、私が道案内を致しますから……是非お声をかけて下さい。山道を歩ける程に、私はもう回復して居ますので!」
そう言って微笑む私に、ジュリアス様はありがとうと言って笑い返してくれた。
「君を助ける事が出来て本当に良かった……。医者としても、一人の男としても嬉しいよ。」
「え……?」
「だって君は、俺の初恋の人だから──。俺の事を気に掛けてくれたのは、亡き母以外に君しか居なかった。君から俺に声をかけてくれて、どれ程嬉しかったか……。俺はいずれこの地で自分の診療所を開き、ここで生きて行こうと思って居るけれど……その時は、君も隣に居て欲しい。」
「ジュリアス様……!」
彼の私への想いを知り驚いたけれど……でも、私はその気持ちが全く嫌では無かった。
むしろ、彼が昔から私をそこまで想ってくれて居た事が嬉しいと感じた。
「ジュリアス様……私で良ければ、是非あなたのお傍に置いて下さい。医者として頑張るあなたを私はこの先ずっとお支えし、そして私の事を愛してくれる殿方としてのあなたを私もずっと愛して行こうと思います。」
そう言って、彼の手に自身の手を重ねれば……ジュリアス様は思わず見惚れるようなとても幸せそうな笑顔を浮かべ、そのまま私を引き寄せるとその胸にしっかりと抱きし締めてくれるのだった──。
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