『恋愛短編集②』婚約破棄の後には、幸せが待って居ました!

Nao*

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婚約者を失い悲しみに暮れる私の目に飛び込んで来たのは、親友と浮気する彼の姿でした。

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 私の婚約者は、今仕事で隣国に滞在して居た。

 私は、彼の帰りを心待ちにして居たが…そんな中、隣国で恐ろしい病が流行した。

 婚約者の身を案じた私は、すぐに彼に手紙を送ったが…その返事が届く事は無かった。


 
 その数週間後、彼の従者から手紙が届き…そこには、彼は流行り病に罹り隣国で命を落とした…遺体はその場で埋葬されたと書かれて居た。

 病を広げない為とは言え…彼が見知らぬ地で命を落とした上にそこに眠る事となったのを、私は大いに嘆き悲しんだ。



 それから数ヶ月、塞ぎ込んで居た私だが…彼の魂を弔う為、何とか立ち直る事に─。
 
 今すぐ隣国に渡る事は出来ないが…二人の思い出の地で、彼の死を偲ぶ事にしよう─。

 そう思った私は、彼と初めてデートした別荘地を訪ねた。



 辿り着いた別荘地は、かつてとほとんど変わっておらず…人もまばらで、とても静かな所だった。

 私は早速、彼と一緒に回った散歩道を辿る事に─。



 そんな私と一緒に歩くのは、私の幼馴染だった。
 
 彼は婚約者の死を嘆き悲しむ私を心配し、今までずっと慰めてくれて居た。

 そして今回の旅も、一人旅は危険だ…それに、もし私の気が変わって彼の後を追うような事があってはならないと心配し付いて来てくれたのだ。



 すると…私達の少し前を、腕を組んで仲良さげに歩く男女の姿が─。

 その姿を目にした時…私は思わずその場に立ち尽くしてしまった。



「どうしたんだ?」

「前を歩く男が来て居る上着…あれは私が婚約者の彼に贈った特注品で、他にはない物なのです。それに、あの珍しい髪色は…間違いなく彼です。そして、その隣に居る女は…暫く別荘地で静養して来ると言って居た私の親友─。」

「彼は病で死に埋葬されたと言うのに…一体どういう事だ?」



 すると、大荷物を抱え二人の跡を必死に追いかける男の姿が─。

 それは、婚約者の死を手紙で知らせて来た従者だった。


 
 幼馴染は、咄嗟に従者を追いかけ…彼を捕まえると茂みの中に連れ込み、これは一体どういう事なのか説明しろと詰め寄った。

 そしてその迫力に負け、従者は事の次第を語り始めたのだった。



 実は、婚約者と私の親友は以前から浮気の関係にあり…二人は、どうにかして自分達が結ばれる方法は無いかと常日頃から考えて居たと言う。

 そんな時、偶然にも彼が訪れた隣国で流行り病が発生─。

 すると彼は、その混乱に乗じ自分が死んだ事にし…すぐに隣国を脱出すると、浮気相手である私の親友とこの地で落ち合う事にしたのだった。

 そしてほとぼりが冷めた頃…二人は、晴れて結婚しようと話を進めて居るのだと言う。



「もし婚約者であったあなたに知られたとしても、混乱の中従者の私が間違えて手紙を出したと…そう言う事にすればいいと仰って─。そもそも女と言うものは心変わりするのが早い、死んだ俺の事などあいつはすぐ忘れるから問題ないとも仰って居ました。」

 そして従者は…いくら主人の命とは言え馬鹿な事をしでかしたとその行いを悔い、嘘の死亡届を提出した等の罪を償う為、自ら憲兵の元へ向かうのだった─。



 そんな中、私の怒りの矛先は…自分達の行いが全てバレて居るとも知らず、呑気にデートを楽しむ元婚約者と親友に向けられた。

 私はあなたを想い、この地にわざわざやって来たと言うのに…。

 それに彼女も彼女よ。

 婚約者を失った私を慰めておきながら、彼とそんな関係にあった何て─。



 私は、二人の事をすぐにこの地の憲兵に知らせた。

 と言うのも…隣国を出るにはまず検査を受け、病では無いと言う証明書を発行して貰わなければならないし…そもそも緊急の用事で無ければ、自国にすら返して貰えない事になって居たのだ。

 でも彼は死んだ事になって居た為、従者と違いそれをしておらず…規則を破った彼と、そして一緒に居た親友は罰として共に投獄される事になった。



 すると彼は、後に牢の中で流行り病を発症…遂には命を落とす事に─。

 また、そんな彼と一緒に居た親友も同じく病を発症し…彼と同時期に命を落としたのだった。

 そして二人の遺体は、しっかり埋葬される事は無く…誰も来ない深い谷底へ捨てられてしまった。

 そのおかげか、我が国ではそれ以上その病は広がらず…やがて隣国も落ち着きを取り戻したのだった。



 まさか、あの二人がそんな惨めな最期を迎えるとはね…。
 
 獄死した上に、我が国に病を広めようとした罪人として打ち捨てられる羽目になろうとは思っても居なかったわ。

 でもそれもこれも、あんな愚かな事を企んだあなたたちが悪いのよ─。



 その後、別荘地から戻った私だが…幼馴染から、愛の告白を受ける事に─。

 彼は、以前から私が好きだったようで…今回の事もあり、一番傍で私を守りたい…それが出来るのは、誰よりも私を愛して居る自分だけだと言ってくれたのだった。

 

 従者を取り押さえる姿や、その後の憲兵とのやり取り…そしてこの地まで無事に私を連れ帰ってくれた彼にすっかり心惹かれて居た私は、喜んでその気持ちに応える事に─。

 そして今は彼と婚約し、幸せな日々を送って居る─。
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