異世界召喚されたらハズレだと舌打ちされて捨てられました。死にたくないから全力で生きる!

中洲める

文字の大きさ
52 / 56
番外編

52話 結婚式の招待状5(マーク視点)

しおりを挟む
 久々に来たグラフィカは、俺のかつての記憶よりももっと明るく華やいでいた。
 露店の呼び込み、行きかう人々の表情は笑顔と活気に溢れていて、人通りも多い。

 俺たちよりも、クインやスレイが街の活気にあてられて、きょろきょろと忙しなく辺りを見回している。

「わぁ、なんか前より賑やかだねぇ」
 馬に乗っているというのに、好奇心丸出しで体を乗り出すクインを、俺は落ちないようにしっかり抱き寄せた。
「確かに、祭りみたいな活気だ」
 クインの言葉に、同じようにロミに抱きしめられながら辺りを見回しているスレイが頷いた。
「閣下の結婚式の時もこんな感じだったが……、それにしても賑やかだな」
「なんだか、街全体が明るい気がする……?」
「明るい、というより、何かが軽くなっている気がする?」
 気のせいではなく、物理的にというか……。
 クインとスレイはわからないらしい。
 違和感の正体は掴めないまま、街中を馬に乗って歩く。

 領主邸に直接来てもいいと招待状には書かれていたけれど、クインたちの希望で真っ直ぐ錬金協会へ向かった。

 見慣れた建物にたどり着くと、クインはさっさと馬を降りて中へ入って行ってしまう。
 俺とロミは馬を置いて、続いて中へ入った。

「レジーさーん、久しぶりぃぃ!」

 挨拶もそこそこに勝手知ったる足取りで中へ入っていき、丁度休憩していたらしい老人に飛びついた。
「おや、クインとスレイじゃないか。どうした?」
 相変わらず不気味さを意識したローブスタイルの老人が、何の効果があるのかわからない、禍々しい杖を持っていた。
 あの杖、ただの飾りで意味はないんだってクインが言ってたな。
 ……どこでそれ買って来たんだ? そんなの売ってる店、見たことないぞ?


「アッシュの赤ちゃん見に来た! もう見た?」
「まだじゃ、落ち着いたら協会に連れて来るらしいからワシらは待ちじゃな」
「そっかー。俺たち今から見て来る!」
「なんじゃと!?」
 驚くレジー老に笑いかけた。

「なんと、コネがあるのです!」
 誇らしそうに俺の腕にしがみ付くクイン。
 本当に可愛いな。

 俺がグラフィカの騎士だったと知っているレジー老はなるほどと頷いた。
「ああ、ナイア様の結婚式なんだって?」
「うん」
「身内だけでやるらしいからのぅ」

 身内……。
 確かに俺たちは同郷だし、同じ騎士団に所属してずっと共に戦ってきたから、信頼をしてくれているのは察していた。
 けれどまさか、俺たちがあの人の「身内」に入るなんて思ってもいなかったから、なんだか込み上げてくるものがある。

 そんなことを思いながらそっとロミを見たら同じ表情をしていた。
 一瞬だけ目を合わせて、腑抜けた顔を互いに晒しそうになって、慌てて視線を反らした。

「屋敷に着いたら赤ちゃんを見せてもらえるみたいだから、終わったら自慢してあげるね!」
「おい! 自慢だけかよ!」
 クインの言葉に突っ込んだレジー老に、協会にいた錬金術師たちが笑う。
 そんな何気ないやり取りが、妙に懐かしく感じた。
 けれど笑い声の数が、以前よりずっと多い気がした。

「それにしても、なんか人が多いね?」
 クインも同じことを思ったようで、室内を見渡しながらレジーに尋ねる。
 その間にも、あちこちの部屋から人が出てきては玄関ホールに集まってくる。
 皆、錬金術師のローブをまとい、見覚えのある顔よりも知らない顔の方が多く見えた。

 驚いた様子の俺たちに、レジー老がにやりと独特の笑みを浮かべる。
 
「入会希望者殺到じゃ。……ワシのスタイルも、きっとその一因じゃな」
「……嘘は駄目だよ? どう考えてもアッシュの影響じゃん」
 クインが珍しく真面目な顔をしてレジー老を諭した。
 レジー老は「かっちょいいのにのぅ」と腑に落ちない顔をしている。

 うん、アンタ、オンリーワンだ。
 見回しても怪しいスタイルの錬金術師など誰もいない。



 どちらかといえば、アッシュ様がいつも着ていたローブに似せたものを纏う者が多い。
 クインが言ったようにやはりアッシュ様の影響が大きいのは間違いない。

「みんな元気?」
「そういうのは最初に聞くもんじゃが、元気だ」
「うん、ヨシ! クロイツ側も元気だから、新しい物を開発したら連絡して!」
「そっちもな」
 調合室から出てきた錬金術師たちとも言葉を交わして、外に出た。

「クイン、久しぶりに会ったのにこんなにあっさりした感じでいいのか?」
「うん! 俺たちは錬金物で会話するから!」
「なんだそれ、格好いいな」
「でっしょー!」
 褒められたと思ったクインは誇らしげに笑う。

 その顔は眩しいくらいに輝いていて、俺は思わず見惚れてしまった。


「んー! こっちはこっちで、家って感じする」
「わかる。なんだろうな、この落ち着く感じ……」
 スレイもクインに同意して頷いている。

 俺にとっては第二の故郷だからそう思ってもらえるのは嬉しい。
 よく考えたら俺故郷三つも持ってんだな。
 バーゼル子爵領、グラフィカ辺境領、そしてクロイツ子爵領。
 なんだか不思議な気分だ。

 クインと一緒に居ると、自分にはない発想に気付かされることが多い。
 新しい視野をくれるクインを、俺はいつも尊敬している。



 再び馬に乗って今度こそ領主邸へ向かった。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

処理中です...