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番外編
52話 結婚式の招待状5(マーク視点)
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久々に来たグラフィカは、俺のかつての記憶よりももっと明るく華やいでいた。
露店の呼び込み、行きかう人々の表情は笑顔と活気に溢れていて、人通りも多い。
俺たちよりも、クインやスレイが街の活気にあてられて、きょろきょろと忙しなく辺りを見回している。
「わぁ、なんか前より賑やかだねぇ」
馬に乗っているというのに、好奇心丸出しで体を乗り出すクインを、俺は落ちないようにしっかり抱き寄せた。
「確かに、祭りみたいな活気だ」
クインの言葉に、同じようにロミに抱きしめられながら辺りを見回しているスレイが頷いた。
「閣下の結婚式の時もこんな感じだったが……、それにしても賑やかだな」
「なんだか、街全体が明るい気がする……?」
「明るい、というより、何かが軽くなっている気がする?」
気のせいではなく、物理的にというか……。
クインとスレイはわからないらしい。
違和感の正体は掴めないまま、街中を馬に乗って歩く。
領主邸に直接来てもいいと招待状には書かれていたけれど、クインたちの希望で真っ直ぐ錬金協会へ向かった。
見慣れた建物にたどり着くと、クインはさっさと馬を降りて中へ入って行ってしまう。
俺とロミは馬を置いて、続いて中へ入った。
「レジーさーん、久しぶりぃぃ!」
挨拶もそこそこに勝手知ったる足取りで中へ入っていき、丁度休憩していたらしい老人に飛びついた。
「おや、クインとスレイじゃないか。どうした?」
相変わらず不気味さを意識したローブスタイルの老人が、何の効果があるのかわからない、禍々しい杖を持っていた。
あの杖、ただの飾りで意味はないんだってクインが言ってたな。
……どこでそれ買って来たんだ? そんなの売ってる店、見たことないぞ?
「アッシュの赤ちゃん見に来た! もう見た?」
「まだじゃ、落ち着いたら協会に連れて来るらしいからワシらは待ちじゃな」
「そっかー。俺たち今から見て来る!」
「なんじゃと!?」
驚くレジー老に笑いかけた。
「なんと、コネがあるのです!」
誇らしそうに俺の腕にしがみ付くクイン。
本当に可愛いな。
俺がグラフィカの騎士だったと知っているレジー老はなるほどと頷いた。
「ああ、ナイア様の結婚式なんだって?」
「うん」
「身内だけでやるらしいからのぅ」
身内……。
確かに俺たちは同郷だし、同じ騎士団に所属してずっと共に戦ってきたから、信頼をしてくれているのは察していた。
けれどまさか、俺たちがあの人の「身内」に入るなんて思ってもいなかったから、なんだか込み上げてくるものがある。
そんなことを思いながらそっとロミを見たら同じ表情をしていた。
一瞬だけ目を合わせて、腑抜けた顔を互いに晒しそうになって、慌てて視線を反らした。
「屋敷に着いたら赤ちゃんを見せてもらえるみたいだから、終わったら自慢してあげるね!」
「おい! 自慢だけかよ!」
クインの言葉に突っ込んだレジー老に、協会にいた錬金術師たちが笑う。
そんな何気ないやり取りが、妙に懐かしく感じた。
けれど笑い声の数が、以前よりずっと多い気がした。
「それにしても、なんか人が多いね?」
クインも同じことを思ったようで、室内を見渡しながらレジーに尋ねる。
その間にも、あちこちの部屋から人が出てきては玄関ホールに集まってくる。
皆、錬金術師のローブをまとい、見覚えのある顔よりも知らない顔の方が多く見えた。
驚いた様子の俺たちに、レジー老がにやりと独特の笑みを浮かべる。
「入会希望者殺到じゃ。……ワシのスタイルも、きっとその一因じゃな」
「……嘘は駄目だよ? どう考えてもアッシュの影響じゃん」
クインが珍しく真面目な顔をしてレジー老を諭した。
レジー老は「かっちょいいのにのぅ」と腑に落ちない顔をしている。
うん、アンタ、オンリーワンだ。
見回しても怪しいスタイルの錬金術師など誰もいない。
どちらかといえば、アッシュ様がいつも着ていたローブに似せたものを纏う者が多い。
クインが言ったようにやはりアッシュ様の影響が大きいのは間違いない。
「みんな元気?」
「そういうのは最初に聞くもんじゃが、元気だ」
「うん、ヨシ! クロイツ側も元気だから、新しい物を開発したら連絡して!」
「そっちもな」
調合室から出てきた錬金術師たちとも言葉を交わして、外に出た。
「クイン、久しぶりに会ったのにこんなにあっさりした感じでいいのか?」
「うん! 俺たちは錬金物で会話するから!」
「なんだそれ、格好いいな」
「でっしょー!」
褒められたと思ったクインは誇らしげに笑う。
その顔は眩しいくらいに輝いていて、俺は思わず見惚れてしまった。
「んー! こっちはこっちで、家って感じする」
「わかる。なんだろうな、この落ち着く感じ……」
スレイもクインに同意して頷いている。
俺にとっては第二の故郷だからそう思ってもらえるのは嬉しい。
よく考えたら俺故郷三つも持ってんだな。
バーゼル子爵領、グラフィカ辺境領、そしてクロイツ子爵領。
なんだか不思議な気分だ。
クインと一緒に居ると、自分にはない発想に気付かされることが多い。
新しい視野をくれるクインを、俺はいつも尊敬している。
再び馬に乗って今度こそ領主邸へ向かった。
露店の呼び込み、行きかう人々の表情は笑顔と活気に溢れていて、人通りも多い。
俺たちよりも、クインやスレイが街の活気にあてられて、きょろきょろと忙しなく辺りを見回している。
「わぁ、なんか前より賑やかだねぇ」
馬に乗っているというのに、好奇心丸出しで体を乗り出すクインを、俺は落ちないようにしっかり抱き寄せた。
「確かに、祭りみたいな活気だ」
クインの言葉に、同じようにロミに抱きしめられながら辺りを見回しているスレイが頷いた。
「閣下の結婚式の時もこんな感じだったが……、それにしても賑やかだな」
「なんだか、街全体が明るい気がする……?」
「明るい、というより、何かが軽くなっている気がする?」
気のせいではなく、物理的にというか……。
クインとスレイはわからないらしい。
違和感の正体は掴めないまま、街中を馬に乗って歩く。
領主邸に直接来てもいいと招待状には書かれていたけれど、クインたちの希望で真っ直ぐ錬金協会へ向かった。
見慣れた建物にたどり着くと、クインはさっさと馬を降りて中へ入って行ってしまう。
俺とロミは馬を置いて、続いて中へ入った。
「レジーさーん、久しぶりぃぃ!」
挨拶もそこそこに勝手知ったる足取りで中へ入っていき、丁度休憩していたらしい老人に飛びついた。
「おや、クインとスレイじゃないか。どうした?」
相変わらず不気味さを意識したローブスタイルの老人が、何の効果があるのかわからない、禍々しい杖を持っていた。
あの杖、ただの飾りで意味はないんだってクインが言ってたな。
……どこでそれ買って来たんだ? そんなの売ってる店、見たことないぞ?
「アッシュの赤ちゃん見に来た! もう見た?」
「まだじゃ、落ち着いたら協会に連れて来るらしいからワシらは待ちじゃな」
「そっかー。俺たち今から見て来る!」
「なんじゃと!?」
驚くレジー老に笑いかけた。
「なんと、コネがあるのです!」
誇らしそうに俺の腕にしがみ付くクイン。
本当に可愛いな。
俺がグラフィカの騎士だったと知っているレジー老はなるほどと頷いた。
「ああ、ナイア様の結婚式なんだって?」
「うん」
「身内だけでやるらしいからのぅ」
身内……。
確かに俺たちは同郷だし、同じ騎士団に所属してずっと共に戦ってきたから、信頼をしてくれているのは察していた。
けれどまさか、俺たちがあの人の「身内」に入るなんて思ってもいなかったから、なんだか込み上げてくるものがある。
そんなことを思いながらそっとロミを見たら同じ表情をしていた。
一瞬だけ目を合わせて、腑抜けた顔を互いに晒しそうになって、慌てて視線を反らした。
「屋敷に着いたら赤ちゃんを見せてもらえるみたいだから、終わったら自慢してあげるね!」
「おい! 自慢だけかよ!」
クインの言葉に突っ込んだレジー老に、協会にいた錬金術師たちが笑う。
そんな何気ないやり取りが、妙に懐かしく感じた。
けれど笑い声の数が、以前よりずっと多い気がした。
「それにしても、なんか人が多いね?」
クインも同じことを思ったようで、室内を見渡しながらレジーに尋ねる。
その間にも、あちこちの部屋から人が出てきては玄関ホールに集まってくる。
皆、錬金術師のローブをまとい、見覚えのある顔よりも知らない顔の方が多く見えた。
驚いた様子の俺たちに、レジー老がにやりと独特の笑みを浮かべる。
「入会希望者殺到じゃ。……ワシのスタイルも、きっとその一因じゃな」
「……嘘は駄目だよ? どう考えてもアッシュの影響じゃん」
クインが珍しく真面目な顔をしてレジー老を諭した。
レジー老は「かっちょいいのにのぅ」と腑に落ちない顔をしている。
うん、アンタ、オンリーワンだ。
見回しても怪しいスタイルの錬金術師など誰もいない。
どちらかといえば、アッシュ様がいつも着ていたローブに似せたものを纏う者が多い。
クインが言ったようにやはりアッシュ様の影響が大きいのは間違いない。
「みんな元気?」
「そういうのは最初に聞くもんじゃが、元気だ」
「うん、ヨシ! クロイツ側も元気だから、新しい物を開発したら連絡して!」
「そっちもな」
調合室から出てきた錬金術師たちとも言葉を交わして、外に出た。
「クイン、久しぶりに会ったのにこんなにあっさりした感じでいいのか?」
「うん! 俺たちは錬金物で会話するから!」
「なんだそれ、格好いいな」
「でっしょー!」
褒められたと思ったクインは誇らしげに笑う。
その顔は眩しいくらいに輝いていて、俺は思わず見惚れてしまった。
「んー! こっちはこっちで、家って感じする」
「わかる。なんだろうな、この落ち着く感じ……」
スレイもクインに同意して頷いている。
俺にとっては第二の故郷だからそう思ってもらえるのは嬉しい。
よく考えたら俺故郷三つも持ってんだな。
バーゼル子爵領、グラフィカ辺境領、そしてクロイツ子爵領。
なんだか不思議な気分だ。
クインと一緒に居ると、自分にはない発想に気付かされることが多い。
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