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【1話】
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私が池に落ちてから7年が経った。
カクタス様とはあれ以来会っていない。
あの後目が覚めた私は、両親からカクタス様との婚約話を薦められたが、絶対に嫌だと言って、引き付けを起こす程泣き叫んだ。
事故とはいえ殺されかけたという記憶が、私の恋心を少しも残すところ無く消し去った。
代わりに、前世という記憶が甦った。
前世の私は人見知りで引っ込み思案、引き籠りで録に学校にも行かず、家でラノベ小説を読んだり、乙女ゲームばかりしている、異世界転生を夢見るような子供だった。
そして、私は念願の異世界転生をしている事に……全く喜べなかった。
何故なら、前世の記憶によるとこの世界は“カラーソリューション~交わる君を探して~”という、ヒロインが攻略者達の出生の秘密を解き明かしながら愛を育む乙女ゲームとそっくりだったから。
ただ、私はそのゲームをやった事はあっても、ハマる程のめり込んだ訳でもなかったので、ある程度のゲームの流れと、主要キャラの名前と背景、悪役令嬢と呼ばれる少女達の末路、それぐらいしか覚えてなかった。
ヒロインの名前はランダム設定だったから、この世界でどんな名前なのか解らない。
もし隠しキャラが居たとしても誰なのか解らない。
公式サイトとか見ればヒロインの固定の名前があったかもしれないし、隠しキャラのチラ見せとかあったかもだけど、全く見て無かったから全然解らない。
解っているのは、悪役令嬢達は全員攻略対象者の婚約者。
それぞれのルートで、婚約者がヒロインを助ける事が気に入らなくて、邪魔をしまくった挙げ句、ヒロインや婚約対象者がやんごとなき血筋の子供だと発覚すると断罪される。
大体が婚約破棄をされてから処刑されるのだが、その悪役令嬢の一人が、ミモザ・ローズミスト。
そう、私。
そして、婚約者の名前がカクタス・フォッグ。
私が泣いて嫌がった為に婚約は結ばれ無かったけれど、今後どうなるか解らない。
ゲームは学園に入学すると始まる。
学園は15歳で貴族なら誰でも入学しなければならない。
様々なイベントでヒロインと攻略対象者が出会って行くのだけれど、ここで問題なのは攻略対象者の婚約者達。
私もそうだけど、全員が高位貴族の一人娘なのだ。
攻略対象者の出自が関係しているからこその婚約者なのだけれど。
本当にゲームと同じ事が起こるとしたら、実際問題として高位貴族の令嬢を蔑ろになんて出来ない筈。
まぁ、ヒロインがゲームのように見目麗しい攻略対象者を侍らせて虐められようが、略奪愛を繰り広げようが今の私には全く関係の無い話なので、勝手にやってちょうだいと思っている。
記憶が戻った私は前世の性格に強烈に引っ張られてしまったらしく、見事に人見知りで引き籠りな上、カクタス様に言われた“ブス”という言葉がトラウマとなり、超が付く程ネガティブに育った。
一時期は簑虫のようにシーツにくるまり、何ヵ月も顔を出す事すらしなかったぐらいだ。
…今も時々やるけど。
両親もあんな事があったからか、私を咎める事もなく好きにさせてくれていた。
私以外の子が望めなかったのも原因だろう。
一人娘の私は、蝶よ花よと甘やかされ放題で引き籠り生活に拍車が掛かり、子供同士の交流会であるお茶会にも一度も出掛る事は無かった。
月に1回の割合で、フォッグ伯爵夫妻からカクタス様との婚約の話が来ているが、絶対に嫌だと拒否している。
まぁ、私と婚姻が結ばれなければ、カクタス様の王子としての立場は脆弱のままだから、フォッグ伯爵夫妻も必死なのだろう。
本当は領地に帰って引き籠りたいのだけど、両親が居ない状態でフォッグ伯爵夫妻が突撃してきたら私だけでは対処出来ないし、王都の屋敷でも十分引き籠れる程大きいから領地に行くのは諦めた。
両親は私の意見を尊重して毎回断ってくれているけど、もしかしたら強制力とかがあって、私は入学前にカクタス様と婚約させられるのかしら?
いやいやいや!
絶対にいやっ!!
そして、私は自分の考えに震えながら、相変わらずシーツの中に引き籠っていた。
カクタス様とはあれ以来会っていない。
あの後目が覚めた私は、両親からカクタス様との婚約話を薦められたが、絶対に嫌だと言って、引き付けを起こす程泣き叫んだ。
事故とはいえ殺されかけたという記憶が、私の恋心を少しも残すところ無く消し去った。
代わりに、前世という記憶が甦った。
前世の私は人見知りで引っ込み思案、引き籠りで録に学校にも行かず、家でラノベ小説を読んだり、乙女ゲームばかりしている、異世界転生を夢見るような子供だった。
そして、私は念願の異世界転生をしている事に……全く喜べなかった。
何故なら、前世の記憶によるとこの世界は“カラーソリューション~交わる君を探して~”という、ヒロインが攻略者達の出生の秘密を解き明かしながら愛を育む乙女ゲームとそっくりだったから。
ただ、私はそのゲームをやった事はあっても、ハマる程のめり込んだ訳でもなかったので、ある程度のゲームの流れと、主要キャラの名前と背景、悪役令嬢と呼ばれる少女達の末路、それぐらいしか覚えてなかった。
ヒロインの名前はランダム設定だったから、この世界でどんな名前なのか解らない。
もし隠しキャラが居たとしても誰なのか解らない。
公式サイトとか見ればヒロインの固定の名前があったかもしれないし、隠しキャラのチラ見せとかあったかもだけど、全く見て無かったから全然解らない。
解っているのは、悪役令嬢達は全員攻略対象者の婚約者。
それぞれのルートで、婚約者がヒロインを助ける事が気に入らなくて、邪魔をしまくった挙げ句、ヒロインや婚約対象者がやんごとなき血筋の子供だと発覚すると断罪される。
大体が婚約破棄をされてから処刑されるのだが、その悪役令嬢の一人が、ミモザ・ローズミスト。
そう、私。
そして、婚約者の名前がカクタス・フォッグ。
私が泣いて嫌がった為に婚約は結ばれ無かったけれど、今後どうなるか解らない。
ゲームは学園に入学すると始まる。
学園は15歳で貴族なら誰でも入学しなければならない。
様々なイベントでヒロインと攻略対象者が出会って行くのだけれど、ここで問題なのは攻略対象者の婚約者達。
私もそうだけど、全員が高位貴族の一人娘なのだ。
攻略対象者の出自が関係しているからこその婚約者なのだけれど。
本当にゲームと同じ事が起こるとしたら、実際問題として高位貴族の令嬢を蔑ろになんて出来ない筈。
まぁ、ヒロインがゲームのように見目麗しい攻略対象者を侍らせて虐められようが、略奪愛を繰り広げようが今の私には全く関係の無い話なので、勝手にやってちょうだいと思っている。
記憶が戻った私は前世の性格に強烈に引っ張られてしまったらしく、見事に人見知りで引き籠りな上、カクタス様に言われた“ブス”という言葉がトラウマとなり、超が付く程ネガティブに育った。
一時期は簑虫のようにシーツにくるまり、何ヵ月も顔を出す事すらしなかったぐらいだ。
…今も時々やるけど。
両親もあんな事があったからか、私を咎める事もなく好きにさせてくれていた。
私以外の子が望めなかったのも原因だろう。
一人娘の私は、蝶よ花よと甘やかされ放題で引き籠り生活に拍車が掛かり、子供同士の交流会であるお茶会にも一度も出掛る事は無かった。
月に1回の割合で、フォッグ伯爵夫妻からカクタス様との婚約の話が来ているが、絶対に嫌だと拒否している。
まぁ、私と婚姻が結ばれなければ、カクタス様の王子としての立場は脆弱のままだから、フォッグ伯爵夫妻も必死なのだろう。
本当は領地に帰って引き籠りたいのだけど、両親が居ない状態でフォッグ伯爵夫妻が突撃してきたら私だけでは対処出来ないし、王都の屋敷でも十分引き籠れる程大きいから領地に行くのは諦めた。
両親は私の意見を尊重して毎回断ってくれているけど、もしかしたら強制力とかがあって、私は入学前にカクタス様と婚約させられるのかしら?
いやいやいや!
絶対にいやっ!!
そして、私は自分の考えに震えながら、相変わらずシーツの中に引き籠っていた。
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