【学園にいる間だけ】

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【学園にいる間だけ】

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「学園にいる間だけ自由に恋愛をさせてくれ」

入学したばかりの学園で、1年先に入学していた私の婚約者であるアルマン様に呼び出されて指定されたサロンに行ってみると、唐突にそう告げられた。

「小説などの真実の愛とかを語るつもりはない。ただ、俺はこの1年で彼女と出会ってしまった。そして、愛してしまったんだ!」

アルマン様はそう言って隣にいる女生徒の腰を引き寄せた。

引き寄せられた女生徒はニンマリと嗤ってアルマン様に擦り寄った。

「あぁ…申し訳ありません!私がアルマン様を好きになって「構いませんわ」…え?」

彼女の言葉を遮って私は了承する。

アルマン様と彼女の事は、二つ年上の従兄弟から聞いていたから驚きはしない。

「今…何て?」

逆にアルマン様が驚いている。

「構いませんと言いましたが?」

「「ほ、本当に!?」」

お二人とも息ぴったりですわね。

「ええ。勿論です。学園にいる間だけですものね?…そうですわね。その間のパーティーや夜会などの公の場でのパートナーはご辞退申し上げますわ。期間は短いですもの、思い出を沢山お作りになって?」

私はにっこりと笑って告げる。

「あ、ああ。すまないな」

「話が解るのね!ありがとう!」

アルマン様はやや困惑気味だけど、女生徒の方は乗り気だ。

「では、書面にしてサインをお願いします。あ、学園を卒業の際に一線を越えられていらっしゃるようでしたら、婚約は考えさせて頂きますが宜しいでしょうか?」

「そ、それは…」

そこで躊躇するアルマン様。

それでは一線を越える気満々だと言ってるようなものですわよ?

「当たり前でしょう?そこは弁えて頂かないといけませんわ。それから、何もなくても卒業後1年は婚約期間を頂きますわ。その間にお付き合いされていた方が万が一ご懐妊となりましたら、もちろん婚約は解消して頂きますわ。その場合は責任を取ってその方と婚姻して下さいませ。そちらの方もそれで宜しいかしら?」

「ええ!もちろんよ!」

「アルマン様も宜しいでしょうか?」

「…解った」

アルマン様は渋々ながら頷いた。

「では、サインを」

私の優秀な執事は、今言った事を綺麗に書面にしてアルマン様の前に2枚差し出した。

若干、女生徒が執事の端正な顔に釘付けになったが、アルマン様がサインの為に動くと、ハッとしてアルマン様に向き直った。

サインをするペンは魔力が関係しているとかの特殊な物で、どういう仕組みかは良く解らないけれど、偽造が出来ないように本人の名前以外を書くと消えてしまうようになっている。

そして、アルマン様は書面の要求者の欄にサインをした。

その下の了承者の欄に私もサインをする。

1枚は私が、もう1枚はアルマン様に渡す。

「これで公認で一緒にいられるのね!嬉しい!」

「ああ!」

アルマン様と女生徒は嬉々として手を取り合った。

「お喜びのところ申し訳ありませんが、こちらにもサインをお願いします」

「今度は何にだ?」

私は全く同じ文面の書面を2枚アルマン様に差し出した。

「わたくしからも同じ事を言わせて頂きますわ。学園にいる間だけ自由に恋愛をさせて頂きますので、サインをお願いします」

「は?どういう事だ?」

アルマン様はとても間抜けなお顔で聞き返してきた。

「ですから、わたくしも学園にいる間だけ自由に恋愛をさせて頂きます。条件は全く同じですわ」

にっこり笑って書面を差し出す。

「まさか、ご自分だけ学園生活を楽しもうなんて思っておりませんわよね?」

「…あ、ああ」

そして、アルマン様は今度は了承者の欄にサインをした。

私も同じように要求者の欄にサインをして、先程のように1枚をアルマン様に渡す。

「では、お互い楽しい学園生活を送りましょうね」

「ああ…」

「アルマン様!早速、デートしましょ!」

何だか腑に落ちないと言ったようなアルマン様だけれど、女生徒が立ち上がってアルマン様の腕を引っ張った。

「…そうだな!それじゃ、楽しい学園生活をな!」

そう言って2人はサロンから出て行った。

「…上手くいきましたね、お嬢様」

しばらくしてから執事がお茶を淹れてくれながら、にこやかにそう言った。

「そうね。まさか、あちらから言い出してくれるとは思わなかったわ」

私もにこやかにお茶を受け取る。

アルマン様は気が付いているんだろうか?

女生徒の方は気付いているみたいだけれど、何も言っては来なかった。

サロンを出る時に振り返ってウィンクしてきたという事は、私の意図は黙っていてくれると解釈しても良いのかもしれない。

あわよくばを狙っているのでしょう。

もちろん、私は邪魔はしないわ。

アルマン様は侯爵家の次男とはいえ、卒業したらご実家の伯爵位を貰って伯爵となる。

アルマン様との子供を身籠れば彼女は伯爵夫人になれる。

男爵家の彼女としては堅実な狙い目だろう。

アルマン様は私と婚姻を結んだとしても、我が家は伯爵家なので爵位は変わらないのだけれど、我が家は領地の特産品が貴重な宝石の為、公爵家ぐらいの収益がある。

そこに目を付けた侯爵家に、アルマン様との婚約を強要された。

一人娘だった私は、幼い頃からずっと大好きだった幼馴染みとの婚約を解消させられた。

彼の家も伯爵位なので、格下の我々に拒否する事は出来なかったのだ。

そこで、私達は考えた。

アルマン様から断らせる、もしくは断らざるを得ない状況を作る方法を。

私は側に置いてある書面を見る。

書面には先程言った事が書かれている。

《卒業後、1年の婚約期間中に懐妊の兆しがあるようなら婚約を解消する事。その場合は責任を取ってその方と婚姻する事》

中でも大事なのはこの二つの部分。

アルマン様。

貴方が誰かと一線を越えられてなくとも私は別に構わないんですよ?


<完>
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