初めての異世界転生。

はんまる

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第一話

異世界転生しました。

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 私の名前は古龍 里音りね
 夢は歌手で、今日は歌のオーディション。
 あぁぁ緊張するぅ。
 私は項垂れながら住宅街を歩いていると、車が走ってきた。そして私から50メートルくらい離れていたので、少し駆け足で渡ろうとすると、車はギュゥゥゥンと音を立て急発進してきた。
 私は思わず立ち止まってしまった。
 ガンッと鈍い音を立てた。
 説明のしようのない痛み。何かが壊れるような、焼けるような、そんな痛み。
 瞳を開いて最後に私の瞳に映ったものは、真っ逆さまになった住宅地。
 そして私の体は宙に浮いていた。

 早く、オーディションに行かなきゃ。早くしないと、遅れちゃう。早く、早く、、、。
「早く。」
 私はポツリと呟いた。
 私の手に何か柔らかい物が触れた。
 これは、羽布団だな。うちには羽布団はなかったと思うんだけどなぁ。
 私は眠たくてゆっくりと瞼を閉じた。
 そして横になりながら考えた。
 あ、オーディションに遅れちゃう。早く起きないと、、、。今日まで頑張って練習したもんね、、、。いや、私会場に向かってたよな。それで車に撥ねられてふわっと、、、。
 私はガバッと起き上がった。
 私にかかっていた羽布団は可愛らしいチェック柄。右側には柔らかい光の入る木の縁の窓があって、外には山が連なっている。左側にはクローゼットやドレッサーなどが置いてある。どうやら誰かの部屋のようだ。
 そして目の前には大きな鏡が。そこには驚くべき物が写っていた。
 私はthe日本人顔で黒髪で(サラサラでもなく)目も黒くて身長体重も普通で家も普通。どちらかというと地味で、友達もそれなりにいる。
 だったよね?
 鏡に写っているのは、サラサラの金髪ロングヘア。目は真っ青で、耳はピコピコと動くエルフ耳。服もなんか御伽話の村むすめ~って感じ。そしてめちゃくちゃ美少女。おう、なにこれ。超ドタイプ。
 これはまさか、、、。
 私は眉を顰めながら考えると、かちゃっと扉が開く音がした。
 そこには老婆が立っていた。タバコをフゥッとふかしながら私にめんどくさそうに言った。
「よーこそ異世界転生トラベルセンターへ。」
 いせかいてんせいとらべるせんたー????
 私が困惑していると、はぁっとタバコくさいため息をつき、老婆は説明した。
「ここは、異世界転生した人がくるところ。ま、異世界といっても魔界なんだけどね。魔界の都市はもうちょっと都会なんだけど、ここは魔界のはしだからのどかな場所さ。あんたはエルフに転生したから、寿命はだいたい八百年くらいかな。」
 とのこと。
 つまり、私は異世界転生した。
 私は親が旅行好きだからいろんなところに連れまわされてきた。
 でも、異世界は始めてです、、、。
 あぁ。し、思考が追いつかない。
 た、確かに私は車に轢かれて、死んだの?
 私は肩を落とした。
 そっか、私、死んじゃったのか。
 これじゃあ、オーディションもなにもなくなっちゃった。
 私は目を伏せて絶望した。
 それを察したのか、老婆は私にいった。
「一つだけ、元の世界に戻り、時間もその時に戻れる方法がある。」
「本当!?」
 私はガバッとベッドから飛び降りて血相を変えて叫んだ。
「あぁ、本当さ。これは魔界にいる人たちが人間界に行きたい時に使うのだよ。でも、値段が値段なんだよねぇ。」
「い、いくら??」
「、、、100万円。」
 なんだ、100万円かぁ。
 、、、。
 ん?100万円?
「え、100万円って、100万円??」
「あぁ、そうさ。理由は異世界転送魔法は結構魔力消費が酷いし、向こうに行った時の人間界のお金やホテルなんかの手配(5日分)とかもあるからねぇ。」
 ヒャ、百万円、、、。
 で、でも、異世界転生ってことはなにかしらのチート能力があるはず、だよねぇ!?
「あのぉ、ちなみに私のチート能力って、、、。」
「あぁ、言い忘れてた。ちょっと待ってな。」
 ガチャリと扉を閉め奥に行った。
 本当に異世界転生したんだなぁ。
 そう考えていると老婆は分厚いいかにもファンタジ~って感じの本を持ってすぐに戻ってきた。
「ふむ、あーそういうこと。」
 部屋の中で壁に寄っかかりながらふむふむと本を読みながら1人で勝手に納得した後、私に話した。
「あんたは、歌うことで攻撃も、治癒も、防御もできるってタイプだね。」
「歌うこと、、、。」
 老婆に言われたことを繰り返しいった。
「さ、説明は終わり。さっさと自立しな。」
 するとポイっと玄関から投げ出されてしまった。
 急すぎる発言に反発する余裕もなく。
 じ、自立しろって言われても。
 私は座り込んでポカンと追い出された扉を見つめた。
 土の香りがして、肌に瑞々しい草の感触があった。
 こういうとこ、結構前にキャンプしに行った時以来だな。
 私はスクリと立ち上がった。
 こういう時は「なるようになぁれが」一番だから、とりま人がいっぱいいる方に行けば何とかなるはず!

 と意気込んだものの。
 どっちがどっちかわからない。
 地図もない、看板もない、異世界転生したというのに右も左もわからなく孤独死しそう、、、。
 私は100メートル後ろにある異世界転生トラベルセンターを振り返った。
 なんか地図とか食料とかくれてもいいのでは?
 あぁ、誰か通りかかってくれれば道を聞けるのに、、、。
 とか考えながら呆然と立ち尽くす私。
「あんたそこで何やってんの。」
 いきなり声をかけられてビクッと肩を震わせた私。
 声のした方を見ると、年は私たちと同じくらいの青年。
 薄い緑色のショートヘア。
 白色の雲のような瞳は私の方をまっすぐに見つめた。
 おお、なかなかのイケメン。
「あ、えっとさっきそこの異世界転生トラベルセンターで人間界から異世界転生してきました。で、右も左もわからない状況でして、、、。」
 そう説明すると、
「俺も!」
 パッと表情が明るくなった青年。
 ていうか俺も??
「俺もそこの異世界転生トラベルセンターで一年前に異世界転生したんだよ!同じ人見たことねぇからめっちゃびっくりした!」
 あぁ!じゃあ仲間だ!
「んじゃ道とかわかんなくて大変だろ。俺の住んでる街まで連れてってやる。あと金ないだろうから俺の家居候していいぞ。」
「ありがとうございます!!」
 私は目をキラキラと輝かせて即答した。
 なんだこの面倒見のいい優しい人!めちゃくちゃラッキー!
 すると青年は、手綱をひっぱた。
 その先には荷車を引っ張っている白い馬が。
 すごい!馬なんて牧場ぐらいでしか見たことないから道にいるとは。さすが魔界。
 青年に言われて荷車の椅子っぽくなっているところに座らせてもらった。
 私は青年に聞いた。
「あの、お兄さんはお名前って、、、。」
「あぁ、俺?俺はキュマラー。あんたは?」
 キュマラー、、、。外国人だったのかな?いやそれを言ってしまえば私もキュマラーさんからしたら外国人だ。
「私は古龍 里音です。」
「こりゅーりね?へー、中国とかそっちらへん?」
「はぁ、日本人です。」
 確かに、日本は中国っぽい名前だなぁ。
「あと敬語じゃなくていいよ。俺たち同年代ぐらいだろ?」
 キュマラーさん、、、。キュマラーに言われ、確かになと感じ、
「ありがとう、キュマラーさん、、、。キュマラー!」
 ニコッと微笑んでいうと、キュマラーは少し固まったあとそっけなくふいっと馬が進んでいく方向を見つめた。
「ほ、ほら、あれだよ。俺が住んでいる街。」
 動揺した様子で言われてそっちを向くと、いかにもファンタジーな街が広がっていた。
「おお!すごーい!!」
 私は目を輝かせて、馬車から身を乗り出した。
「ほらほら危ないだろ?」
 ぐいっと私の服の後ろの方の首あたりを掴んで、馬車の椅子に座らせた。
 面倒見いいなぁ。妹とか弟とかいるのかも。
 そしてもう一度今度は座って街の方を見た。
 私、本当に異世界転生したんだぁ。
 私は静かにフッと笑って、目を閉じた。
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