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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い
「じゃあ一緒に旅に出よう」
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そして朝がやってきた。
「ロット、よく頑張ったね」
勇者の声が響くと、ロットは嬉しそうな、でもちょっと困ったような顔をする。
「え?これでソイルは助かったんですか!?」
ロットの声には、妹が助かった嬉しさ半分、死ぬかもしれないと覚悟を決めていた自分が生きているという事実に拍子抜けが混ざっていた。
それもそのはず。ロットが看病してきた疲労感は今までで一番軽かったのだ。
きっと、この眼の前にいる勇者が俺の覚悟を見るために厳しいことを言ったんだ。
でも最終的には勇者の強い力でカバーしてくれたんだろう、さすが勇者だ。そんなふうに考えていた。
それは次第に尊敬に変わり
「こんな風に立派な人になりたい」
と憧れを抱くようになった。
村長も、歳のせいか途中で眠ってしまったものの、ロットが疲れを見せる様子はあまりなく、ただひたすら「がんばれ」と病人に対して励ます姿を見ていた。
勇者の優しさに喜ぶ二人。
しかし、その裏で、表情こそ柔らかい笑みを浮かべている勇者は穏やかではなかった。
目の前の少女ソイルは確かに魔力種、それもかなり厄介な部類に取り憑かれていて、普通なら生まれた赤ん坊の時点で死んでしまうほどの存在だった。
それが奇跡的にもここまで生きてきた。
そんな魔力種が吸い取る魔力は計り知れない。
勇者自身も少しは魔力を渡したし、ロットが無駄なく魔力譲渡できるようにはしてあげた。
それにしても、成人男性が十人は死ぬほどの魔力が吸い取られたことが予測される。
なのに目の前の少年は疲れを見せるどころか、勇者がなんとかしてくれたのだと勘違いするほど余裕を持っていたのだから。
「勇者様、本当にありがとうございました!」
厳しい戦いをくぐり抜けてきた勇者は、それを悟られることなくロットの礼を受け止めた。
そして心の中で不敵に微笑む。
(レアな魔力種を持った少女を手に入れるつもりだったが、まさか少年も規格外だったとは。しかもこの子、この僕でもまだ底が見えない魔力量だなんて、面白い拾い物をしたかな)
内心そんな算段がつけられているとはつゆ知らず、ロットは村長と喜びあう。
ソイルは、そんな騒がしい中でも静かに寝息を立てて眠っていた。
「あー、ロット。ソイルちゃんのことなんだけど、話さなきゃならないことがあるんだ」
喜びと徹夜のせいか村長と腕を組んで踊りだしているロットに向かって言った。
「はい?」
「実は、ソイルちゃんの魔力種はまだ身体に残っていて、今も魔力を吸い続けている」
喜びから一転、眠る妹を見て、あんなに苦しんでいたのがなくなったのにどうして?と困惑する。
「誕生日の節目特有の魔力吸いは収まったけど、完全に消えたわけじゃないんだ。
ただ、今までと同じで今日この日を乗り越えただけなのさ」
「そんな……」
あれ程喜んでいた二人の顔は一気に曇る。村長が勇者に問いかける。
「勇者様、この魔力種はこうやって毎年付き合っていくしかないのでしょうか?」
魔力贈与。処置さえわかれば対処の仕様もあるかもしれない。
そんな思いから出た言葉は勇者の一言で崩される。
「それはないよ。このままじゃソイルちゃんは来年、十歳の誕生日に必ず死ぬ」
ソイルが一年後に死ぬと聞かされた瞬間、ロットの心臓は凍りついた。
目の前が真っ暗になり、膝が震えた。
愛しい妹が、その小さな命が、残りわずかしかないという現実を受け入れることができなかった。
絶望感が胸を締め付けて、涙がこみ上げてくるのを必死にこらえながら、ロットは勇者に懇願するように視線を向けた。
「しぬ?そんな、わけない。
今日だってほら、乗り越えられたし……
俺、何でもする、だから妹を助けてください!」
「……魔力種は十年で開花するんだ。
例外なく十年目で開花し、その種の正体があらわになる。
そして宿主はその種の正体の最初の糧となり殺されてしまうんだ」
ソイルは昨日九歳の誕生日を迎えていた。
つまり、残り一年ということだった。
ロットは「そんな」と膝から崩れ落ちる。
あと一年で妹が死んでしまうと考えるだけで目が潤み、身体から力が抜けていくようだった。
「それに僕も一年間君たちだけに構うわけにもいかないからね」
それもそうで、勇者となれば戦う力も人望も、そして権力だってあるだろう。
そんな勇者が村にいるたった一人を救うために一年無駄にするわけにはいかない。
ロット自身も頭でわかっていても、絶望するしかなかった。
今回の魔力贈与も、勇者がやってくれて、自分では本当に応援しかしていないと思っているのだから無理もない。
「一つだけ、方法がある」
そんなロットを見かねたように勇者はつぶやいた。
「そ、それは一体?」
ロットは恐る恐る顔を上げてその続きを聞こうとする。
「ふふっ。先に行っておくけど、僕が助けてやるわけにはいかない、君の問題だからね。
でも一年後の今日、ソイルちゃんを助けるために君が何でもするというのなら、僕は援助を惜しまないよ。
もちろん、多忙の僕に付き添う形になるから一緒に旅することになるけどね」
妹を残して一年勇者とともに行動する。
それもこれも妹を助けるためと思えば、妹から離れる不安があるものの、ロットの覚悟はすぐに固まった。
そして
「わかりました、何でもやります!」
即答のロットはこうして、勇者の元、旅が始まろうとしていた。。
「ロット、よく頑張ったね」
勇者の声が響くと、ロットは嬉しそうな、でもちょっと困ったような顔をする。
「え?これでソイルは助かったんですか!?」
ロットの声には、妹が助かった嬉しさ半分、死ぬかもしれないと覚悟を決めていた自分が生きているという事実に拍子抜けが混ざっていた。
それもそのはず。ロットが看病してきた疲労感は今までで一番軽かったのだ。
きっと、この眼の前にいる勇者が俺の覚悟を見るために厳しいことを言ったんだ。
でも最終的には勇者の強い力でカバーしてくれたんだろう、さすが勇者だ。そんなふうに考えていた。
それは次第に尊敬に変わり
「こんな風に立派な人になりたい」
と憧れを抱くようになった。
村長も、歳のせいか途中で眠ってしまったものの、ロットが疲れを見せる様子はあまりなく、ただひたすら「がんばれ」と病人に対して励ます姿を見ていた。
勇者の優しさに喜ぶ二人。
しかし、その裏で、表情こそ柔らかい笑みを浮かべている勇者は穏やかではなかった。
目の前の少女ソイルは確かに魔力種、それもかなり厄介な部類に取り憑かれていて、普通なら生まれた赤ん坊の時点で死んでしまうほどの存在だった。
それが奇跡的にもここまで生きてきた。
そんな魔力種が吸い取る魔力は計り知れない。
勇者自身も少しは魔力を渡したし、ロットが無駄なく魔力譲渡できるようにはしてあげた。
それにしても、成人男性が十人は死ぬほどの魔力が吸い取られたことが予測される。
なのに目の前の少年は疲れを見せるどころか、勇者がなんとかしてくれたのだと勘違いするほど余裕を持っていたのだから。
「勇者様、本当にありがとうございました!」
厳しい戦いをくぐり抜けてきた勇者は、それを悟られることなくロットの礼を受け止めた。
そして心の中で不敵に微笑む。
(レアな魔力種を持った少女を手に入れるつもりだったが、まさか少年も規格外だったとは。しかもこの子、この僕でもまだ底が見えない魔力量だなんて、面白い拾い物をしたかな)
内心そんな算段がつけられているとはつゆ知らず、ロットは村長と喜びあう。
ソイルは、そんな騒がしい中でも静かに寝息を立てて眠っていた。
「あー、ロット。ソイルちゃんのことなんだけど、話さなきゃならないことがあるんだ」
喜びと徹夜のせいか村長と腕を組んで踊りだしているロットに向かって言った。
「はい?」
「実は、ソイルちゃんの魔力種はまだ身体に残っていて、今も魔力を吸い続けている」
喜びから一転、眠る妹を見て、あんなに苦しんでいたのがなくなったのにどうして?と困惑する。
「誕生日の節目特有の魔力吸いは収まったけど、完全に消えたわけじゃないんだ。
ただ、今までと同じで今日この日を乗り越えただけなのさ」
「そんな……」
あれ程喜んでいた二人の顔は一気に曇る。村長が勇者に問いかける。
「勇者様、この魔力種はこうやって毎年付き合っていくしかないのでしょうか?」
魔力贈与。処置さえわかれば対処の仕様もあるかもしれない。
そんな思いから出た言葉は勇者の一言で崩される。
「それはないよ。このままじゃソイルちゃんは来年、十歳の誕生日に必ず死ぬ」
ソイルが一年後に死ぬと聞かされた瞬間、ロットの心臓は凍りついた。
目の前が真っ暗になり、膝が震えた。
愛しい妹が、その小さな命が、残りわずかしかないという現実を受け入れることができなかった。
絶望感が胸を締め付けて、涙がこみ上げてくるのを必死にこらえながら、ロットは勇者に懇願するように視線を向けた。
「しぬ?そんな、わけない。
今日だってほら、乗り越えられたし……
俺、何でもする、だから妹を助けてください!」
「……魔力種は十年で開花するんだ。
例外なく十年目で開花し、その種の正体があらわになる。
そして宿主はその種の正体の最初の糧となり殺されてしまうんだ」
ソイルは昨日九歳の誕生日を迎えていた。
つまり、残り一年ということだった。
ロットは「そんな」と膝から崩れ落ちる。
あと一年で妹が死んでしまうと考えるだけで目が潤み、身体から力が抜けていくようだった。
「それに僕も一年間君たちだけに構うわけにもいかないからね」
それもそうで、勇者となれば戦う力も人望も、そして権力だってあるだろう。
そんな勇者が村にいるたった一人を救うために一年無駄にするわけにはいかない。
ロット自身も頭でわかっていても、絶望するしかなかった。
今回の魔力贈与も、勇者がやってくれて、自分では本当に応援しかしていないと思っているのだから無理もない。
「一つだけ、方法がある」
そんなロットを見かねたように勇者はつぶやいた。
「そ、それは一体?」
ロットは恐る恐る顔を上げてその続きを聞こうとする。
「ふふっ。先に行っておくけど、僕が助けてやるわけにはいかない、君の問題だからね。
でも一年後の今日、ソイルちゃんを助けるために君が何でもするというのなら、僕は援助を惜しまないよ。
もちろん、多忙の僕に付き添う形になるから一緒に旅することになるけどね」
妹を残して一年勇者とともに行動する。
それもこれも妹を助けるためと思えば、妹から離れる不安があるものの、ロットの覚悟はすぐに固まった。
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「わかりました、何でもやります!」
即答のロットはこうして、勇者の元、旅が始まろうとしていた。。
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